3 企業誘致助成制度について
1 IT、バイオ関連など重点産業分野の企業誘致を促進
2 政策的拠点施設への進出企業を支援
3 関内・山下地区をIT関連小規模事業者の拠点に再生
横浜関内地区への新たな産業集積を図ることを目的とした、IT小規模事業者立地促進助成制度について紹介しますが、この制度は横浜市が企業誘致について支援する制度の一部を成すものであることから、制度全体の位置づけがわかるよう説明します。
横浜市では、昨今の成長産業の動向や進出企業のニーズなどを踏まえ、平成13年度から企業誘致助成制度を体系的に整備しました。
この新しい制度では、戦略的に企業誘致を促進することを狙いとし、成長産業や重点地区などを基準に対象を絞った点に特徴があり、以下の三種類の助成金からなっています。
企業誘致助成制度は、横浜経済の中枢を強化し、産業集積の高度化を図ることを目的とし、以下の三つの制度から成り立っています。 まず、横浜市が進める戦略的企業誘致の概念を図で示すと次のとおりとなります。
(1)「重点産業立地促進助成」は、IT、バイオ、環境、福祉、先端技術、デザインの6つの産業分野に限定し、一定規模以上(従業員5名以上、面積30坪以上)の市外からの転入企業が対象になります。補助金額は、賃貸型で1ヶ月分の賃料、所有型の場合は建設費を含むビル取得費用の1%相当額です。 賃貸型、所有型ともに限度額は3百万円です。
(2)「重点施設立地促進助成」は、英国産業センター(BIC)やワールドポーターズなど、国内、海外企業等を横浜市へ誘致するための助役を筆頭とする庁内組織である横浜市企業等誘致推進本部が指定した11の施設拠点への入居企業が対象となります。 産業分野、企業規模には制限はありませんが、進出企業の業務等がそれぞれの施設拠点の設置目的に合致していることが条件です。補助金額は、1ヶ月分の賃料とし限度額は百万円です。
11の施設拠点とは
横浜ワールドポーターズ、横浜情報文化センター、ハウススクエア横浜、ゆめおおおかオフィスタワー、舞岡リサーチパーク、横浜ベイサイドマリーナ、横浜金沢ハイテクセンター、横浜港流通センター(Y−CC)、英国産業センター(BIC)、米国産業センター(TVP)、カナダ産業センター(CITC)
(3)「IT小規模事業者立地促進助成」は、関内・山下地区に進出するインターネット、マルチメディア関連など都市型IT産業の担い手を対象に、これらの事業者が通信インフラなど一定の機能を備えた情報化ビルに入居する際に開業資金の一部として、坪当たり4千円を12か月分一括支援します。 限度額は50万円です。なお、この制度は集積の呼び水となることを目的としているため、3年間だけのサンセット方式としています。
○具体的な助成の進め方
まず、関内・山下地区のビル事業者(オーナー、サブリース事業者)に対して、通信インフラの整備などを促し、ビル事業者の申請に基づき審査を行い、一定の規格を備えたビルを情報化ビル(仮称)として市が指定します。
入居希望者に対して、市はこれらの指定ビルのリストを提示し、一定の基準を満たすIT事業者がテナントとして入居する場合に、テナントの申請に基づき審査を行い、適格な事業者に対し支援を行います。
○都心部の再生と都市型IT事業者との関係
一旦は衰退した都心部に新しい産業が集積する現象は世界的に見られ、ニューヨークのシリコンアレーやサンフランシスコの倉庫街でも同様の傾向があります。これらの新しい産業の担い手は、インターネットなどマルチメディア・コンテンツの制作やソフトウエアー開発など、技術者よりはアーティストやクリエーターとしての性格が強く、都市の文化的な環境の中で仕事をすることを好む傾向があります。
国内でも渋谷ビットバレーの集積は、こうした都市型IT事業者に支えられており、盛り場や学生時代の行き付けの店が彼らの溜まり場になり、新しい産業が生まれ、街が変わっています。
関内・山下地区は港をはじめ、近代建築や銀杏並木、中華街、モトマチなどヨコハマならでは魅力に溢れた一帯であり、こうした歴史のある都市ならではの快適さは、「SOHO横浜」など既に一部の事業者を引き付け、自然な集積が生まれています。
○事業展開における行政の役割
横浜市の役割は、関内・山下地区の事業者に一体感を持たせ、地区を売り込んでいくことにあり、IT関連のテナントだけではなく、民間事業者、ビル事業者、不動産仲介業者など様々な事業者と一体になって、本事業を市の姿勢を示す象徴的事業として展開しています。
関内・山下地区ではSOHO横浜インキュベーションセンターの「SOHOクラブ」、 ISO横浜の「ISO倶楽部」など施設を主体にした民間のネットワークが展開され、「横浜コンテンツネットワーク」などクリエーターの交流組織も生まれています。
横浜市は、交流イベントなどIT事業者間のネットワーク化を進め、同地区を横浜市を代表するクリエイティブな地域として再生していきます。
3 IT小規模事業者立地促進助成制度の具体的手続きについて
IT小規模事業者立地促進助成制度では、関内地区で入居と同時に高速でインターネット接続ができるなど、一定の条件を備えたビルを「情報化ビル」に認定することを、制度の最初のステップとしています。
同地区にインターネットやソフトウエアーの開発事業者などの集積を促すため、地区内のビルの情報化を促進するため、ビル事業者の申請を順次受け付け、インターネットのホームページなどでテナントに公開するため、次のような条件で情報化ビルの認定を行います。
[1]「情報化ビル」の具体的な条件
ア 1.5Mbps以上の常時接続通信インフラを備えていること。
イ 機械警備等で個々の事務室に24時間出入りが可能であること。
ウ 個別空調或いは事務室ごとの空調・温度調節が可能であること。
(補足説明)
・通信インフラは、光ファイバー、xDSL、無線などビルによって異なります。
・接続方法は二次側まで用意されているもの、テナントが通信事業者を選べるものなど様々なタイプがあります。
・設備はフリーアクセスから、露出配線までビルによって異なります。情報化ビルヘの認定により、民間ビル事業者の負担でビルの高付加価値化をイメージすると次ページのとおりとなります。
次に、テナントヘの助成金の受付・交付ですが、対象となるテナントは次の条件を満たす事業者です。
[2]対象となるIT関連事業
ア マルチメディア・コンテンツの制作やコーディネートを行う事業
イ e−コマース、e−トレードなどインターネットをビジネスに利用する事業
ウ ソフトウエアー開発、システム開発事業
申請の受付は先着順で行い、出来る限り早期に交付できるようベンチャー等小規模事業者の資金繰りにも配慮し交付決定を行います。なお、この制度は集積の呼び水とすることを目的としているため、3年間時限のサンセット方式で実施します。助成金交付までの手続きを示すと次のとおりとなります。
〈ビルの情報化のイメージ図〉
●展開イメージ:ビルの情報化を誘導し、マーケッティングを展開
[3]助成金交付までのステップ
STEP1:申請に基づき地区内の民間ビルを市が「情報化ビル」として認定します。
STEP2:市は「情報化ビル」のリストを、ホームページなどを通じて公開します。
STEP3:テナントは、物件を選定し、ビル事業者や不動産会社と交渉を行います。
STEP4:テナントのうちIT関連事業者は、助成金の交付を申請できます。
STEP5:市はテナントの事業内容を審査し、基準に合った申請者に助成金を交付します。
情報化ビルの認定は、平成13年12月までに18件行いました。いづれもJR関内駅から徒歩圏にあるビルで、ビルの竣工年が最も古いものは1959年の竣工であり、一番新しいビルは1995年の竣工となっています。
貸室の面積は最小1.4坪のものから最大171坪まであり、いづれも光ケーブルやxDSLなどの高速通信インフラと個別空調設備を設置しています。
また、「情報化ビル」に入居するIT事業者への助成金の交付は、これまでに10社に対して行いました。
[1]リナックスベースの起動システムを開発中のクールグリーンコンピュータ(有)
[2]ホテル向け予約、会計、顧客管理システムをASPで提供する(株)アシェット
[3]ECの店舗運営バックヤードシステムを開発中の(株)グローバルファクトリー
[4]制御系・ファームウエア系ソフト開発の(株)フェリッジシステム
[5]大規模データの超高速処理ソフトを開発する(株)ターボデータラボラトリー
[6]データの解析・予測システムをASPで提供する(株)複雑系応用技術研究所
[7]汎用コンピュータ向けシステム開発の(株)テクノアクセスコミュニケーション
[8]自然科学関連商品をe−コマースで販売する(有)カタリスト
[9]e−メールシステム開発の(有)エージェント
[10]POSシステム開発の(有)ソフトワークス
ソフトウエアやシステム開発関連企業に加え、e−コマースやe−メールなどインターネットを活用する企業が含まれています。