3 東京経済のリードが期待されるIT関連産業
(1)ネットワーク社会の進展とIT関連産業
東京都の産業は、事業所数、従業者数ともに第3次産業のウエイトが年々高まっている。都内の産業別の総生産の対前年増加率をみると、平成10年度以降、運輸・通信業及びサービス業が、都内総生産の増加率を上回っており、東京の経済活動全体を引き上げている(図6)。平成11年の「事業所・企業統計調査報告」によれば、平成8年と11年で比較し、サービス業全体でも減少した業種が多いなか、情報サービス・調査業は大きく伸びており、サービス業全体を牽引している。
現在、アメリカにおける爆発的であったITブームが終焉し、半導体デバイス不況が拡大している。しかしITを活用して経営体制を強化していくという基本認識には変化がなく、民間シンクタンクによれば在庫調整が進んだ平成15年頃には再び需要が回復すると予測されている。
図6 主な経済活動別都内総生産の対前年度増加率 出典:東京都
(単位%)
経済活動 |
平成7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13年度 |
製造業 |
1.6 |
-0.6 |
0.0 |
-4.7 |
-2.8 |
-4.2 |
-5.0 |
建設業 |
-7.8 |
1.6 |
-5.4 |
-6.0 |
-0.8 |
4.3 |
-1.9 |
卸売・小売業 |
0.1 |
1.3 |
0.4 |
-5.5 |
-2.4 |
-2.3 |
-2.0 |
金融・保険業 |
4.3 |
-1.4 |
-2.2 |
-4.1 |
0.7 |
2.3 |
1.9 |
運輸・通信業 |
3.1 |
3.5 |
0.7 |
-1.1 |
-0.2 |
0.2 |
0.1 |
サービス業 |
-0.4 |
3.5 |
2.4 |
0.4 |
0.4 |
0.4 |
-0.1 |
都内総生産 |
1.2 |
1.5 |
0.8 |
-2.3 |
-1.0 |
-0.4 |
-1.2 |
我が国では平成13年1月に政府が「e-Japan戦略」を策定し、5年以内に世界最先端のIT国家を目指すとし、IT革命の推進に新たな一歩を踏み出した。e-Japan2002プログラムによれば、我が国のインターネット利用者数は平成12年末で約4700万人、対前年比74%増を記録し、インターネット普及率は平成11年末の21%から37%へと大幅に拡大する等、IT化の急速な進展には目覚しいものがある。IT革命は世界的潮流であることから考えると、今後も中長期的には情報サービス業の需要が見込まれる。
情報サービス業にあっては、このようなインターネット利用者の急速な増加にみられるように、今後ネットワーク社会の進展に伴い、コンテンツ製作の需要が増加することが見込まれる。ビデオゲームやアニメーションのコンテンツにおいて、日本は世界市場における中心的な供給源となっている。このうち東京には全国の80%以上のアニメーション関連企業が集まっており、今後1兆円以上の需要が予測されている。
情報サービス産業に加え、アニメなどのコンテンツ産業を含むIT関連産業は東京のリーディング産業となることが期待できる。
(2)中小企業の経営革新を支援するIT関連産業
経済のグローバル化や情報技術の革新、市場ニーズの多様化など企業を取り巻く環境は大きく変化し、都内の中小企業は、コスト、スピード面において、厳しい競争にさらされている。
この環境変化に機敏に対応し、企業の競争力をつけるため、経営トップに対する調査によればITへの期待は高い。しかし、IT導入の重要性は認識していても、その対応は進んでいないことが伺える(図7)。その原因として最も多いのは、「活用方法の開拓」でこれに「ノウハウの蓄積」を加えると25.6%に達する。次は「設備投資金」と「ランニングコスト」の15.2%であり、さらに「人材の確保」と「従業員教育」で14.4%である(図8)。
中小企業が期待するITが活用できる分野は、顧客管理、販売促進、情報検索等であるが、この分野における新しいIT技術の利用方法としてASP(Application Service Provider)が注目されている。ASPは、ネットワークを介してコンピュータのアプリケーションソフトやコンテンツを利用する技術で、IT投資・運用コストの低減と、システム管理の人材不足をカバーできるのが特徴である。非製造業だけでなく、製造業の経営革新のツールとしても有望なIT技術である。
中小企業の競争力強化の観点からも、ASPなどの技術を活用したIT関連産業の育成は重要である。
図7 経営トップのITに関する認識・反応 出典:東京都
図8 IT活用上の問題点 出典:東京都