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第2章 各論
まちづくりと連携した産業の活性化―――秋葉原地区における新たなまちづくり―――
東京都知事本部企画調整部
調整担当課長 齋藤 裕
1 厳しさを増す東京の産業
(1)はじめに
 東京都は、平成13年3月「秋葉原地区まちづくりガイドライン」を発表した。これは東京の都心部に残された秋葉原地区の貴重な財産・空間を活用し、東京のみならず我が国の国際競争力の向上や産業経済活動の活性化を図ろうとするものである。そしてひいては、魅力と活力にあふれる東京の創造に積極的に取り組んでいこうとするものである。 
(2)東京に先鋭的に現れている経済の低迷
 我が国では、バブル崩壊後の経済の低迷が予想以上に長引いている。今日では国際社会における日本の競争力が低下したり、従来型の中央集権システムが機能不全を起こすなどの問題が顕在化し、日本全体が大きな危機に見舞われている。そしてそのことが東京に先鋭的に現れており、これに対応した都政のあり方が求められるようになっている。
図1 都内経済成長率(実質)の推移   出典:東京都
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 東京の経済成長率は、平成9、10年度は連続してマイナスであったが、平成11、12年度はプラスに転じた。しかし、平成13年度にあって、国は−1%に成長率(見込)を修正し、都にあっても個人消費の低下による影響が大きく再びマイナスになると予測されている。 
 東京の全事業所数は、海外移転の著しい製造業、流通形態の変化の影響を大きく受けている卸・小売業を中心に減少している。昭和61年(1986年)に78万5千所あった事業所は、平成11年(1999年)には71万3千所へと7万2千所(9.2%)減少した(図2)。この減少は、全国合計の7.5%を大幅に上回っている。
図2 都内事業所数の推移   出典:総務省
 (単位千所)
  昭和61年 平成11年 増減 増減率
東京 785 713 72 △9.2
全国 6,709 6,203 506 △7.5

 また平成13年7〜9月の都内完全失業率は5.6%に達し、全国の5.0%をはるかに上回り一段と深刻な雇用危機を示している。 
(3)東京における経済再生の方向
 しかし事業所開設率はバブル期を通じて大幅に落ち込むが、閉鎖率は概ね一定しており必ずしも上昇していない(図3)。このことは、東京の潜在力を生かし、多様化する消費者ニーズに応える中小企業や成長が期待される分野での起業家を支援することができれば、東京の産業は活性化していくことを示している。
図3 都内事業所開設率と閉鎖率(%)   出典:総務省
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 このように、東京の産業が沈滞しているのは、景気の低迷による影響もあるが、より中長期的にみれば、社会状況の変化に事業経営が適応できていないことが大きな原因である。東京の産業を活性化していくうえで、こうした成長産業の育成が重要であり、そのためには道路・鉄道のインフラ整備をはじめ、地区計画の変更など都市づくりと連携しながら、産業の集積を図っていくことが大きな推進力となるのである。








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