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随想
「ボランティアと私」
相談員:M.T
 
 昨今のいじめの問題、児童虐待、ホームレスヘの暴力、絶える事のない活字を追いながら、物の豊かさとは反比例する心の貧しさを、痛感する毎日です。個々の可能性のある限り、精一杯生きる喜びを、本当に味わってもらいたいと、願わずにはいられません。この所、ボランティアの仕事を、少しずつ経験し、その役割の重さに心しなければと、考えているこの頃です。気持ちを伝えたいという時に、よく、「キャッチボール」という言葉を、耳にします。私が投げて、あなたが受け取る、あなたが投げて、私が受け取る、そして私が投げて…と、どんなに取りにくいボールでも、自分から手を差し出して取ろうとすれば、いっかは上手く取れるようになるのでは。それと同じ会話の中でも、よく耳を傾けて、話を聴く事ができれば、信頼関係もでき、話す相手も少しずつ語りかけてくれるのでは…。そういう全体像は、少しずつ分かってはきたものの、実際に話している中には、相手の性格、人脈地図、価値観等々、そういう事の分からないままの不安が出てきます。又聴かなければいけない、聴かなければいけないという考えの中に、はまりこんで、感情を受け入れる事ができなかったり、リピートの、「間」を逸したり、自分の無力さを恥じる事もよくあります。逆に相手から、会話を通して、知らなかったことの気づきを、教えられることもあり、つづけていてよかったと感じる事もあります。自分の落ちこんでいる時には周りの方々に支えられてきました。これからも「気」をもらいながら、やっていきたいと思っています。会話の相手には、いろいろな声があり、沈んだ相手には静かに問いかけ、その場にふさわしい反応を、うまく自分の言葉として、語りかけられる、そういう日が、いつかくる事を…努力しながら…。
 
「私とボランティア」
相談員:S.M
 
 自分は今迄、仕事と家庭という二本の道を、ただ夢中で走ってきました。考えてみると、このような人生にも、そろそろ終止符を打ってもいいのではないかと思っていた頃から、自分の振り返りが始まったような気がします。仕事においては、中学生を相手に、自分のやり方を押しつけ、強要してきたばかりではなかっただろうか。家庭においては、夫との生活、姑の介護、子供との関わり等々。すべて自分の都合ばかりを優先しながら、何の疑問も感じることなく、ただ突っ走ってきたばかりの人生ではなかったのだろうか。と、次から次へと反省材料が思い出されてきました。自分も一人の人間であると考えた時、見落としてきたものを、少しずつ、少しずつ拾っていこうと思っていたところでした。そんな矢先、「愛媛いのちの電話」の養成講座が目に入りました。迷うことなく受講させて頂き、実際に、電話相談員として関わっている中で、以前は、発信のみで生きてきた自分が、今、受信の側にいる存在が不思議に思えてきます。この少しの経験を基にして「被害者こころの支援センターえひめ」の方へも、兼務させて頂いたことを非常に有難く思っております。今、いつも感じることは、毎日毎日、悩み苦しんでおられる方に、大変失礼なことかも知れませんが、現代のように人々が、何をすればよいのかということに、血眼になっている時に、何もせずにいるということが、どれ程大切なことかを、わからせて頂けるお話は、なかなか貴重なものではないかと思います。自分自身がそのような体験を持たず、電話を取らせて頂くというのは、非常に失礼なことではないかと思います。しかし、今後もそうさせてもらえることによって自分を知り、磨きをかける努力を重ねていくことから、始まるような気がします。








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