第4章 各評価項目について
1 環境保全のための仕組み・体制の整備
(1)取組のポイント
環境保全への取組を進めるためには、まず、企業として何のために、何を目的に取組を進めるかなどを、会社の方針(環境方針)として示したうえで、取組の責任者や組織、権限等を決めておく必要があります。また、実際に環境保全の取組を行うのは従業員のみなさんですので従業員に対する環境教育も欠かせません。このため、ここでは環境方針の策定、推進体制の整備、従業員教育などを取組項目としました。これらの項目は、企業の規模に応じて、できる範囲内で取り組むことが望まれます。
(2)チェックリスト
【環境方針】
□ 会社、事業所等の環境保全への取組を示す環境方針を策定しており、環境方針には法規制の遵守など基本的な取組が示されている〔レベル1〕。
□ 環境方針には法規制の遵守に加えて自主的・積極的な取組を定めている〔レベル2〕。
□ 環境方針は、環境保全への取組状況をもとに、定期的な見直し、改善を行っている〔レベル3〕。
【推進体制】
□ 環境保全に関する管理責任者及び必要に応じて環境保全を推進するための組織を定めている〔レベル1〕。
□ 管理責任者や組織を従業員に周知し、役割、責任、権限を明確にしている〔レベル2〕。
□ 取組の結果を見ながら、組織や役割、責任、権限の見直しを行っている〔レベル3〕。
【従業員に対する環境教育】
□ 環境に関わる法規制や行政指導の内容等を従業員に伝達している〔レベル1〕。
□ 環境意識の向上を図るため、環境方針の徹底や環境に関する一般的な情報の伝達等を定期的に行っている〔レベル2〕。 |
(3)チェック項目の解説と関連情報
【環境方針】
環境方針は、環境保全への取組を進めるに当たっての基本方針を、経営方針の一つとして文書で示したものです。
環境方針は、自社の環境保全に対する取組の方針が明示されていればそのレベルはどのようなものでも構いませんが、まず、環境に関わる法規制を守ることを明確にしたうえで、自社の体制に合った自主的な取組を盛り込む場合が一般的です。
企業の環境方針に採り入れられている目標としては、次のような事項があります。
・環境負荷の低減に貢献できる事業活動の推進
・環境に優しい上手な運転の実施
また、具体的な取組方針としては、次のような事項があります。
・運輸業務におけるエコドライブ運動の展開
・環境にやさしい上手な運転
・燃料の節約
・エコドライブの徹底
以下に環境方針の例を示します。
○事例1
環境基本方針
ホンダ運送株式会社における「環境方針」は、当社のサイトにある各部門・各営業所を含めて策定され、全社展開として適用する。
基本理念
当社の環境方針は、永年商品の輸送・保管業務に携わり、燃費の節約や電力・消耗品の節約に努力してきたことを誇りとし、物流企業としての責任意識の下、かけがえのない地球環境保護の重要性を認識し、省エネルギー化・省資源化に取り組むことにより地球環境を守り、人類の健康・動植物保護の一端を担う企業を目指します。
スローガン
省エネ運転とムダの排除で環境改善を目指す企業にします。
環境方針
1.当社は、輸送における「リッター当たり走行キロの向上」を図ると共に「ムダの排除による省資源化」を推進することにより、環境保全の向上に努める。
2.当社は、環境管理体制を整備し「継続的な改善と汚染の予防」に努める。
3.当社は、関連する「環境の法規制及びその他の要求事項を遵守」する。
4.当社の活動に当たっては「環境目的・目標を設定して進める」が「定期的に見直し」を実施する。
5.当社は関係部所に、本方針を掲示等により全社員に周知徹底しその推進と維持に努める。
6.本方針は、公開可能な状態で維持する。
2001年2月16日
最高経営層 代表取締役社長 岡本 善一郎
(副)経営層 常務取締役 伊藤 功
(副)経営層 常務取締役 樋口 好徳
環境管理責任者 山本 厚司 |
経営方針とは別に環境方針が策定され、具体的な取組項目が盛り込まれている例
環境保護活動方針
地球環境委員会は、当社の事業活動において発生する環境問題に積極的に対応するため、2000年度(2000年4月1日〜2001年3月31日)における具体的な環境保護活動を以下のとおり定め、活動しています。
環境保護活動は、企業の社会的な責務であり、また、当社が地域の一員として信頼される事業活動を行う上で益々重要性が高まってきている。
本社・支社・事業本部・主管支店の各委員会は、環境活動の要としてそれぞれの立場で社員の環境活動への参加意識を高め、企業理念や強化されつつある環境関連法令を踏まえ以下の重点事項を柱に積極的な取り組みを行うこととする。特に今期は、ディーゼル車排ガス規制の対応として、低公害車の前倒しによる導入や、廃棄物のより一層の分別徹底によるゴミの再資源化は、取り組みの重要な柱として位置づける。また、環境保護活動に要した費用や効果・結果は、可能な限り数値・数量で把握し、進捗の指針として相互に情報開示を進めながら活動を展開し、環境報告書の作成や環境会計の導入の準備を進める。
重点事項
1 大気汚染防止対策を推進する。
(1)東京都公害防止条例の改正(東京ルール)に対応したディーゼル車排出ガス削減に向けた具体的な取り組みを着実に推進する。
(2)低公害車は、支社・事業本部の計画台数を着実に導入する。
(3)アイドリング・ストップ運動を徹底して推進する。
(4)低公害車の円滑な導入に向けた燃料供給インフラの情報収集と当社独自のインフラ導入の可否について調査研究する。
2 グリーン調達を推進する。
(1)当社「環境マーク」の認定基準により、既存物品を含めた購入物品の判定と改良を行う。
(2)前記(1)の認定基準をクリアした省資源・リサイクル製品の購入、活用を推進する。
3 廃棄物の分別によりゴミの排出量を削減(ゼロ・エミッション)する。
(1)分別の種類と精度を高め、廃棄物を資源化し、ゴミの排出量を削減する。
(2)前記(1)を推進するため、分別方法に見合った回収容器を配備する。
(3)利用可能な事務用品、作業機材の再利用(再使用)を徹底する。
4 法令を遵守した廃棄物の適正処理を行う。
(1)改正廃棄物処理法、家電リサイクル法等、リサイクル関連法令による廃棄物の処理を徹底する。
(2)廃棄物処理の許可を受けた適正業者の確認を各廃棄物ごとに改めて行う。 |
(出典)ヤマト運輸株式会社 環境報告書2000 (2000年9月)
【推進体制】
環境保全への取組を全社的に展開するには、責任者や環境保全のための組織を整え、責任や権限の所在を明らかにすることが必要です。企業の規模によっては責任者を補佐し、従業員の取組をリードする組織が必要な場合もあります。環境保全への取組をうまく進めるためには、誰がどのような役割を担い、どのような責任や権限を持っているかを従業員に明確に示していくことが必要です。
推進体制に関する事例としては、次のようなものがあります。委員会などの組織の呼称は企業独自に様々なものがありますが、企業の規模や取組のレベルに応じた体制作りが行われています。
○事例1
・環境保全活動全般を対象とした例
環境管理推進委員会:環境整備を目指した調査・提言、物流活動に関わる重要事項の決定を担う。
各地区事業所別の分科会:各事業所でエコドライブ環境保全対策の推進管理など具体的な活動を進める。
○事例2
・環境保全活動の一部を対象とした例
省エネ運転運動推進委員会
正副委員長:役員
支店推進委員
各課・営業所推進担当者:委員会とドライバーとのパイプ役として、各種事項の伝達、実績データの集計管理、報告を行う。
○事例3
・責任者のみで組織を設けていない場合の例
責任者(杜長):総体的計画・指導を行う
担当者:運行管理責任者等が個人別指導、実態把握、営業会議での指導、従業員の意識向上に取り組む。
【従業員に対する環境教育】
環境への取組を行っていくには、一人ひとりの従業員が環境に関する知識を持ち、環境意識の向上を図ることが重要です。したがって、取組を展開していくためには、環境保全の重要性や、法規制の内容等を、ドライバーも含めた従業員のみなさんへ周知しておくことが必要です。環境に関わる法規制や行政指導の内容、自社の環境方針、車の運転による環境への影響、エコドライブの必要性などを、日頃から周知し、取組の意欲を向上させる努力も必要です。