5.5 コプラナPCBsの分布特性
 本調査結果によると、コプラナPCBsについては、毒性等量で全体のダイオキシン類のうち5%から10%の構成比にあった(
図−4.7参照)。
 ダイオキシン類の中に含まれるコプラナPCBsは、PCBの中にある一定の割合で含まれていることが知られている。また、播磨灘の北東部の東播磨港や南西部の高松港において過去にPCBや水銀(Hg)を含む高濃度の底質が見つかり、対策を施している。
 一方、図−5.12に示すとおり昭和44年から46年にかけて都道府県別PCB出荷量の調査が行われており、播磨灘の流域内である兵庫県ではPCB出荷量が高くなっている。
 そこで、今回のダイオキシン類(Co−PCBs)の調査結果と、既往のデータによるPCBの比較を行い、PCB製品によるコプラナPCBsの分布特性について考察した。
 1992年の真鍋の調査結果によればPCBの水平分布は、「5.2播磨灘における他の指標(PCB等)の分布傾向」の図−5.3に示したとおりである。播磨灘において0.1mg/Kg以上のPCBsの高含量は姫路市および高砂市沿岸と灘中央部に見られる。高砂市にはPCB製造工場(鐘淵化学)および使用工場(ノーカーボン複写紙メーカー三菱製紙)があったため、それらの排水口付近では数千mg/kg以上の高含量が示されていた。しかしその分布は極端に狭く、流れの関係で直接的に沖合には及んでいなかった。
 これは「5.3 分布の要因(流れ)」で記述した、工場等の負荷源に近いこと、播磨灘の流れの特徴によるところが大きい。
 表−5.5に今回播磨灘で実施した、調査地点毎のコプラナPCBsの値と、同地点から読みとったPCBの値を示し、比較を行った。それによると、PCBの中に存在するコプラナPCBsの割合は、約1/7万〜1/20万となっている。
 また、本調査結果のコプラナPCBsの異性体の値とPCB製品KC300、KC400、KC500、KC600とその混合物KCMIXの異性体の値の実測値の組成については、
資料編付図−4.
5に示す。それによると播磨灘では、KC300、KC400又はその混合の組成であると推察された。
図−5.11 都道府県別PCB出荷量(昭和44年〜46年合計トン数)
出典:「水産学シリーズ(18) 海洋生物のPCB汚染」昭和52年、(社)日本水産学会
表−5.5 本調査のCo−PCBsとPCB(既往資料)の比較
| 調査地点 | ダイオキシン類 | PCDDs+PCDFs | Co-PCBs(a) | PCBs(b)※3 | (a)÷(b) | 
| pg-TEQ/g | pg-TEQ/g | pg-TEQ/g | pg/g | 
| St.1 | 8.8 | 7.9 | 0.89 | 50,000 | 1.78×10-5 | 
| St.2 | 3.4 | 3.1 | 0.29 | 30,000 | 0.96×10-5 | 
| St.3 | 8.0 | 7.5 | 0.47 | 30,000 | 1.56×10-5 | 
| St.4 | 6.1 | 5.8 | 0.33 | 30,000 | 1.10×10-5 | 
| St.5 | 5.8 | 5.5 | 0.32 | 30,000 | 1.06×10-5 | 
| St.6 | 9.0 | 8.0 | 0.92 | 100,000 | 0.92×10-5 | 
| St.7 | 2.8 | 2.6 | 0.22 | 30,000 | 0.73×10-5 | 
| St.8 | 8.8 | 8.0 | 0.73 | 100,000 | 0.73×10-5 | 
| St.9 | 3.3 | 3.1 | 0.22 | 30,000 | 0.73×10-5 | 
| St.10 | 7.2 | 6.7 | 0.51 | 30,000 | 1.70×10-5 | 
 
注:
 1.毒性等量は検出下限未満のものについては、試料における検出下限の1/2の値を用いて算出した。
 2.毒性等価係数はWHO−TEF(1998)を適用した。
 3.1992年真鍋による調査結果のPCBの水平分布(
図−5.3参照)から読み取った値を適用した。
 4.(a)÷(b)の比率は、オーダーとしての参考値。