<協会だより>
1. 要人招へい
標記事業に対し、以下の要人を我が国に招へいした。本邦滞在中、被招へい者は国土交通省をはじめとする関係機関を訪問し、運輸関連プロジェクトを中心に国際協力全般にわたって、意見・情報交換を行うとともに、各専門分野に係わる関連施設の視察を行った。
国名 |
分野 |
氏名 |
所属機関・役職 |
期間(日数) |
トルコ |
鉄道 |
Mr.Vedat Bilgin D.B. |
トルコ国鉄総裁 |
13.5.12〜5.18(7) |
マラウィ |
造船 |
Mr.Aurtin Msowoya |
マラウィ運輸公共事業省海運局局長 |
13.7.19〜8. 2(15) |
インドネシア |
鉄道 |
Mr.Marsono Mulyodiharjo |
インドネシア鉄道会社技術取締役 |
13.7.20〜7.30(11) |
2. 研修事業
標記事業に、以下の参加者が有り、期間中それぞれの専門分野に係わる講義を受けると共に関連施設の見学を行った。
国名 |
分野 |
参加者氏名 |
所属機関・役職 |
期間(日数) |
中国 |
海運 |
Mr.Xu Gui Bin(許 貴斌)
Mr.Zhang Ya Ping(張 雅萍)
Mr.Kang Hong(康 宏) |
中国交通部水運司総合処副処長
中国交通部体改法規司助理調研員
深 保得船務公司副経理 |
13.5.21〜6.15(26) |
インドネシア |
海運 |
Mr.Buyung Ujasi
Mr.Dominggus Kaat |
インドネシア海運総局航海局Dumai基地所属船長
インドネシア海運総局航海局Surabaya基地所属船長 |
13.8.17〜9. 3(19) |
3.都市交通の現状と課題 ―アルバニア―
本報告は平成13年度 JICA受託事業「都市公共交通コロキウム」特別研修コースの参加者レポートからなじみの薄い当国を紹介する。
Ms.Brunilda Gjoka(アルバニア運輸省)
1. 概要
アルバニアは1912年までオスマントルコの一部だった。そのため、アルバニアにはトルコの法制が適用されていた。
1912年の独立に伴い、アルバニアは新法を制定した。これは、1939年のイタリアの侵略によって撤廃されている。1943年にイタリアからドイツ軍へと引き渡された統治権力は、1944年末の共産主義支配への転向まで存続した。この時、他の共産主義国の用いる法制が新しい法規範として採択された。刑法は1952年に制定されている。1992年、司法組織の大幅な改革が実施され、最高裁判所、上訴裁判所、地方裁判所が設置された。1994年、アルバニアの新民法が施行され、これにより、資産に関する法律、相続に関する法律、取引に関する法律に基づく市場経済が、50年ぶりにこの国にもたらされた。新民法はヨーロッパの法規を模範としながら、商法、銀行法、売買法、貸借法、労働法、保険法等に及んだ。1998年11月、アルバニアの共産主義崩壊後の憲法が人民投票によって承認され、国家は議会共和制を敷いた。新憲法により複数政党の選出が認められ、言論の自由、信教の自由、出版の自由、集会、結社の自由が保証された。
アルバニアは行政区に区分され、これらの行政区は管轄区と地方自治地区に区分けされる。自治体の経済・社会・文化の問題の大部分を、人民投票により選出された地方議会が治めている。また、地方議会は地方本部を運営している。それぞれの議会は、議長1名および各地方管轄区の人口の割合に比例する人数の代表者ならびに議会の長官が任命する知事1名を含む。12の行政府の中に、36の行政区とティラナ行政区があり、これらの行政区がさらに310の管轄区と43の地方自治地区に区分けされる。都市計画に関しては、管轄区議会、ティラナ地方自治区議会または最初に都市と定められた地域からの建議に基づき、
議会の体系に沿った地区が設置され、これを所轄官庁の長官が承認する。
国政レベルでは、運輸省(MOT)が省内の交通計画研究所(ITP)を通じて交通計画の所掌、また公共事業省(MPW)が省内の都市計画研究所(Urban Planning Institute)を通じて都市計画を所掌している。1989年まで、交通基盤あるいは交通設備の所有権は認められていなかった。交通基盤の設計・建設は、この制約の中で実施されていた。従って、どの地域の交通基盤も目下十分とは言えない。この体制は、自家用車両の所有急増に伴い衰退し、その結果、交通産業の需要と供給に変化が生じた。交通基盤の設計・建設・運用もしくは維持管理において、品質が要求されることはあまりない。このことが機能性に乏しい交通基盤を生じ、あらゆる段階における経済発展の妨げとなった。
加えて、全国、地域、地方計画の枠組みの検討および既存データベースの検証が実施される。これらの評価、検証によって主要な問題点が今後見出されることになり、またSP2に必要とされる事項およびアルバニアの法定、立法に関する枠組みの修正が確立している。
2. 交通セクター
民間による交通施設の所有は1989年まで法律によって禁止されていた。すべての軽自動車、大型自動車および普通自動車はアルバニア政府に所掌されていた。1989年のこれら車両の合計はおよそ5万台である。また、臨海および内陸水路の船舶とその関連設備・施設、鉄道車両とその関連設備・施設、民間航空の設備および施設、石油パイプライン、精製所、貯蔵庫およびその関連設備・施設のすべてがアルバニア政府の所有だった。交通基盤の設計、建設、運用および維持管理に適用する規準や標準が開発されるのは1930年代の後半に入ってからのことである。1968年、それまで続いたSTIBによるロシアの影響力に代わり、中国の支援を得た交通設備や製造施設が数多く建設された。最近では、例えば1989年の道路および橋に関する規準などには、イタリアの影響が及んでいる。
WB、EIB、EU、EBRD、US TDAその他の国際供与機関は国際標準への適合を求めている。
道路
アルバニアの道路網は全国区(3,221km)、管轄区(4,139km)、地方(1,000km)を合わせおよそ18,300kmに及ぶ。このうち舗装路は3,000kmに満たない。1999年にSweRoadは、「道路網は市街路を含め、概して劣悪な状態である」と記している。道路は道幅が非常に狭く、路面が荒れている。また標識やガードレールの不備も目立つ。防壁は欠損しているか、もしくは激しく損傷している。アスファルト舗装の施された道路は全体の3分の1にも満たず、数多くの道路は修復不可能なほどに劣悪化してる。地方道路の多くは乾季に、四輪駆動車両でのみ通行が可能である。
1989年におよそ5万台であった自動車の台数は、1999年には16万台以上にまで増加した。車両全体のおよそ70%がティラナ地区に登録されている。1990年以前には既存の道路の設計、建設、維持管理は州が保有する車両の要求を満たすために行われ、自家用自動車向けになるものはほとんどなかった。輸送需要は、常に交通インフラの容量を常に越えている傾向にある。道路および橋梁の多くは幅員が狭く路面が荒れ、また標識の不備が多く安全性に欠ける。1990年代中頃に実施されたIFI調査により、これらの問題点が確認された。
IFIは2本の主要幹線道路の設計および建設に出資している。このうち、ギリシャから南へ西ヨーロッパのDurres港、Vlora港、モンテネグロを経て北へ伸びる南北幹線道路は、Coastal Plainの人口が集中する主要地域を利用圏域としている。この南北幹線道路は長さ450kmを超える。また東西幹線道路は、Elbasanに産業センターを持つRrogozhine、マケドニアのQafe Thanc、ギリシャのKapshticeでそれぞれ南北幹線道路と接続している。この東西幹線道路の長さは200kmを超える。ヨーロッパ幹線道路VIIIはアドリア海の海港であるアルバニアのDurres港、Vlora港からマケドニアのSkopje、黒海の海港であるブルガリアのBurgas港、Varna港へと延びる。1994年3月の第2回全ヨーロッパ・クレタ会議で、このヨーロッパ幹線道路VIIIはヨーロッパの最も重要な9本の道路の1つであるとの見解が出された。1998年には米国通商開発局(US TDA)が当該幹線道路における道路と鉄道に関するF/S調査を完成させている。
道路交通
アルバニアの貨物輸送全体の98%を道路輸送が占めており、現在の貨物総計は1億2,500万トン以上に達している。1993年のトラック、トラクター、バスの登録台数は4,951台であった。アルバニア国際道路輸送業者協会(ANALTIR)には、国際貨物輸送の会員600人以上、輸送車両およそ1,000台が登録されている。1999年に外国へ向かった車両は、ギリシャへおよそ50%、イタリア25%、マケドニア10%であった。ただしこの内訳については、NATOおよび国連のコソボ介入により変動がある。
道路の安全欠如は憂慮すべき問題である。死亡事故の比率はヨーロッパで最も高く、自動車事故10,000台当たりの死亡者は、スウェーデンの1.4に対し24.1にまで上る。
都市交通・都市間交通
都市や都市間の道路交通に関しては、1989年まで地方行政とMOTが共同責任を負っていた。現在では、地方自治体および民間セクターがバス、小型バス、マイクロバスによりこれらの交通サービスの運営を担っている。1999年の都市道路における州セクターの輸送取扱量は3,670万人kmであった。MOTはすでに公共交通に責任を伴う立場にはないが、いまだ公共交通への助成金を地方自治体へ交付している。
車両の運転士は地方自治体から免許を取得するが、免許も認可も持たない運転士の割合が高い。しかし、一般の人々は民間セクターの運転士に大きく依存している。アルバニアの新しい道路交通法が、関連する法令の公布とともに今後施行されることになる。居住人口20,000人以上の町はすべて、都市交通と標識の計画を整備することが必要とされる。この道路交通法に従い、ITPと地方行政局が2年ごとに改正される計画を作成する。
鉄道
1947年に創設された国有鉄道(HSH)の路線網は、447kmの単線でアドリア海に並行するHani i HotitからVloraへの南北に走る線とRreshen、ティラナおよび石油産業の中心地であるBallshへの支線である。東西線はRrogpzhineとPogradec/Guri i Kuqを連結している。
輸送量は、1990年に平均乗車距離65km、輸送量1,190万人、貨物輸送量660万トンと最高を記録しているが、1999年には平均乗車距離50km、輸送量230万人、貨物輸送量36万トンに減少している。これは鉄道輸送に依存していた主な産業が生産を中止したためである。
現在の牽引車両はディーゼル機関車であるが、運行可能な機関車は60台から23台に減少している。機関車はチェコ製である。
運行可能な貨車は250台あるが、これらの修理状況は良くない。旅客輸送は、ティラナからDurresとDurresからElbasanへ毎日運行されているが、客車の保守状況は窓ガラスや座席が欠損しているなど、きわめて劣悪である。約447kmの軌道には95万丁の枕木が敷設されているがすでに寿命を越えている。道床バラストは不足しており、橋梁や路盤の保守は全くなされていない。分岐器はポーランド製または中国製で交換が必要である。Shkodraからモンテネグロとの国境のHani i Hotitまでの線路は15kmにわたり近年の社会不安により破壊され、システム全体にわたって架空通信線は荒廃している。地上施設、設備のリハビリおよび取り替えが必要である。
旅客および貨物収入はHSHの運営コストの40%から45%しか満たしていない。1999年のAustrian Railway Engineeringは、Durresとティラナ間の旅客輸送サービスが受け入れられる基準を満たすには、地上設備と車両のリハビリに17百万ドル、運営に対し5百万ドルの投資が必要であるとした。鉄道システムのリハビリおよびモンテネグロとの国境までの接続(2.6km)の再生には少なくとも245百万ドル、すなわち1kmあたり50万ドル必要である。鉄道の接続のためにはマケドニア側においても65kmの鉄道新線の建設が必要である。
航空
Rinas空港の利用客数は1990年の3万人から1999年35万6,000人へと増加した。2000年における国際航空便は約4,000便、またアルバニアの上空通過量が1日平均約80便であった。
昨年、Spiekerkman社は、Siemens社が1993年に作成した内容を再検討し、空港の基本計画に関する提案書を作成した。
アルバニアには他にVlora、Korce、Delvina/Sarande、Gjirokastra、ティラナ、Shkodra、Kukesの7カ所の空港がある。このうち、VloraとKukesは軍用空港として建設中である。ヘリコプターによる国内の旅客輸送については、運行スケジュールが設定されていない。
港湾
アルバニアにおける1990年の港湾取扱海上貨物量は166万トンで、そのうちの3万トンが更に内陸へ水運で運送されていた。また、港湾取扱貨物量は1999年までに215万トンに増加した。アルバニアの主要な海上からの玄関口はDurres港である。港湾施設の不備からVlora港や二番手グループのShengjin港、Saranda港へのアクセスには限界がある。1999年におけるこれら四港の取扱貨物量はそれぞれ順に156万トン、37万トン、12万トン、4万トンである。
Durres港はDurres港管理公社(PDA)によって管理・運営されており、同公社は年間200万トンの貨物と約10,000TEU(20ftコンテナ換算)のコンテナを取り扱っている。Durres港の面積は約10haであるが、Durres市に近接しているため拡張には限界がある。港湾へのアクセス道路が不足しているため、港湾への出入車両で混雑している。殆どの貨物はRORO船で輸送されている。航路と泊地は1994年以降浚渫されておらず、埋没して航路水深は11.5mであったものが7.5mに、泊地の水深も9.5mであったものが8.5mとそれぞれ浅くなっている。
揚陸施設や他の施設も古く、その大部分はハンガリー製及び東ドイツ製である。PDAは共同資本企業であり、24時間体制で港湾を運営している。通信が本来業務であり、荷役及び水先案内が民営化されている。およそ600人がこの港湾で働いている。
埠頭と防波堤のコンクリートには塩化物の浸食に対する抵抗力が小さいとされる耐硫酸セメントが使用されたため、大きく腐食が進んでいる。新たなフェリーターミナルが建設中である。1995年に港湾のマスタープランが策定された。この計画にはコンテナ化に対応した土地利用調査とフィージブル調査が含まれている。
Vlora港はVlora港管理公社(PVA)が管理運営をしている。この港湾にもマスタープランがある。港湾の状況は非常に悪く、セキュリティーも確保できていない。港湾施設としては二つの埠頭があり、いずれも損傷が進んでいる。埋め立て地の造成契約があったがコントラクタによって遺棄された。概して港湾施設と言われるものは存在していない。このことは乗降客と取扱貨物に良く現れている。
内陸水路
過去にはBojana Bunaがアドリア海からShkodra湖までの内陸水運を担当していた。この水路は現在、埋没しているため使用不能となっている。Komaniの北方、Drin川に水力発電用のダムが建設されたことで内陸水運システムが発達し、Komani、Fierza、Kukesの各ターミナルを結ぶ湖上70kmの航路にわたって人と車両を輸送している。
1990年、内陸水運では160万トンの貨物が輸送された。このシステムは現在、運輸省(MOT)機関である陸上水上交通局によって運営されている。多くのフェリーが湖上で運航されている。フェリーやターミナルについてはそれらの状況の調査が必要になっている。
石油
近年までアルバニアの石油製品は国内供給によってまかなわれていた。国営の石油会社が製品の探査、抽出、精製、流通の責を負っていた。石油の貯蔵はFierの東部BallshのPatosに置かれている。現在、生産量のすべてが至近の発電所で使用されている。アルバニアにはBallshにある最大規模の精油所を含め、4つの精油所がある。製品はかつていくつもの貯蔵庫へ搬送されていた。
FierおよびLacに置かれた農業用肥料プラントの運営に関し、LacにあるEVERTADE社といった外資との提携が必要とされてきた。現在、アルバニアには174kmにわたるパイプラインがある。米国石油研究所(API)の標準が、石油産業において世界的標準と容認されている。しかしアルバニアの石油セクターは、このAPIの基準に必ずしも準拠しない中国からの供給を受けている。
環境
環境保護については、国立環境機構(NEA)と環境法規によって成立した1993年環境保護条令7664が及んでいる。この条項の適用される例はまれであり、これが自然環境に影響をもたらしてきた。道路基盤の建設が、河床の砂礫堆積や氷泥土の破壊を招いた。また、排水システムを充分に支援する資金的余裕もない。交通セクターの優先権のもとに実施される無認可の建物の建設が、人間環境に大きな悪影響を与え、また公共安全にとっても好ましくない影響を与えている。
有毒物質の不適切な廃棄もしくは投棄がこれまで行われてきたことは注目に値する。問題となっているのは、250トンの有毒な農業用肥料の処分にかかる事例である。これは、1992年に処分されたことが確認されているが、未だ完了していない。