<トピックス>
平成12年度 海外コンサルティング業務等受注実績調査
1. 調査の概要
(1) 目的
本調査は、主にインフラストラクチャー建設関係に従事するコンサルティング企業等の海外における受注実績を国別、内容別等に調査することにより、これらコンサルティング企業の海外活動の現況を把握し、今後の海外活動ならびに国際協力の推進に資するための基礎資料を得ることを目的とする。
(2) 受注期間
平成12年4月1日〜13年3月31日
(3) 調査実施体制
本調査は、当協会、(社)海外農業開発コンサルタンツ協会、ならびに(社)海外コンサルティング企業協会の協力を得て、(社)国際建設技術協会が中心にとりまとめたものである。
(4) 調査対象企業
本調査は、建設コンサルタント91社を対象に行った。うち、受注企業数は65、非受注企業数は26社である。
2. 調査結果概要
海外コンサルティング業務等の平成12年度受注実績調査によると、全受注額は722.3億円、全受注件数は792件である。
平成11年度と比較すると、受注額で71.2億円増(10.9%増)、案件で42件増(5.6%増)であるが、これは受注額、件数ともに過去最高であり、これまでの最高額665.8億円(平成8年度)を抜き、初めて700億円台を達成した。
受注の内容は、依然、我が国ODA関連に依存するところが大きいものの、我が国ODAが伸び悩んでいるなか、受注増加の要因として、国際競争力を要する国際機関からの受注とODA以外の民間からの受注が増えていることなどをあげることができる。
以下、平成12年度受注実績の特徴について、前年度との対比等により概観する。
(1) 資金出所別受注について
[1] ODA関連
ODA関連(JICA、無償資金、JBIC、国際機関等)の受注額は681.3億円であり、全受注額に占める割合では94.3%であった。
前年度に比べ、受注額では62.9億円増(10.2%増)、件数では33件増(5.0%増)である。
・JICA案件の受注額は235.6億円で対前年度ほぼ同額であり、全受注額の32.6%(前年度36.2%)、件数では、前年度の354件から今年度376件と6.2%増となっている。
・無償資金協力案件の受注額は57.9億円(対前年度6.2億円、12.0%増)で、全受注額の8.0%(前年度7.9%)である。
・JBIC案件の受注額は333.0億円(対前年度31.2億円、10.3%増)と増加し、全受注額の46.1%(前年度46.4%)を占めている。
・JBIC融資案件およびSAF案件における全コンサルタント契約額の推移、および本調査での調査対象企業の受注額の推移および受注比率は次頁の図のとおりである。
(拡大画面: 37 KB)
(億円)
コンサルタント契約総額 |
280 |
278 |
312 |
375 |
324 |
328 |
521 |
568 |
378 |
411 |
447 |
調査対象企業受注額 |
221 |
223 |
236 |
202 |
233 |
197 |
263 |
254 |
239 |
302 |
317 |
・JBIC案件のコンサルタント契約総額に調査対象企業受注額の占める割合は、同図に見るとおり、74%と近年の最高となった。これは、コンサルタント調達における日本タイドや2国間タイドの施策によるものと考えられる。平成12年度のJBIC案件のコンサルタント契約総額の内訳は、融資案件が425億円、JBICが直接発注するSAF(有償資金協力促進調査)が21.76億円である(JBIC提供資料)。
・JBIC案件の受注増には、特別借款案件の受注額46.75億円、件数5件(フィリピン3件、ベトナム、マレーシア各1件)が大きく寄与している。
・JBIC案件の受注実態をみると、外国企業を下請けとして使うケース(融資案件98件中22件、22.4%)があり、日本コンサルタントの実質受け取り額はその分少なくなるものと推定される。JBIC案件については、外国企業とJVを組んで受注するケースが、平成12年度は融資案件98件中46件(46.9%)となっている。(参考資料「(3)資金出所と契約形態の関係」)
・国際機関案件の受注額は44.3億円(対前年度29.3億円、195.3%増)、件数で34件(対前年度12件、80.0%増)と大幅に伸び、企業の努力を伺わせるものがあるが、全受注額に占める割合は6.1%(前年度2.3%)に過ぎない。
・その他我が国政府機関の受注額は10.5億円(対前年度3.7億円増)である。
[2] ODA以外
ODA以外(外国政府、民間等)の受注額は41.0億円(対前年度8.3億円、25.4%増)となり、全受注額に占める割合は5.7%である.
・外国政府機関案件の受注額は14.2億円(対前年度-7.0億円、33%減)となり、全受注額に占める割合は2.0%である。
・民間からの受注額は23.9億円(対前年度13.9億円、139%増)となり、全受注額に占める割合は3.3%である。その内訳は、非日系企業からの受注額が6.3億円、日系企業からの受注額が17.6億円である。
(2) 技術サービス別受注について
[1] 設計施工(詳細設計+施工監理)の受注額が244.9億円で最も大きく(1件当たり2.3億円)、次いで計画調査(M/P、F/S)の177.1億円、以下、施工監理、基本設計、詳細設計の順となっている。
[2] 近年、従前の技術サービスの種類に加え、より包括的・広範なコンサルティング・サービスであるプロジェクト・マネージメント(PM)の受注がある。平成12年度の15.2億円(6件−1件当たり2.5億円)の受注は、今後の動向を見る上でも注目される。
[3] 技術サービスの「その他」は、件数では220件で最も多い。これにはプロジェクト形成調査、事前調査、フォローアップ調査等JICAの役務提供契約、JBICのSAF等が含まれ、比較的小口(1件当たり0.175億円)のものが多い。その内、両機関等からの評価調査の受注は29件で近年増加の傾向にある。
(3) 業務分野別受注について
[1] 運輸・交通分野が最も多く全体の33.7%(243.3億円:対前年度11.1億円、4.8%増)を占め、次いで水資源開発分野(113.3億円、全体の15.7%:対前年度21.4億円、15.4%減)、産業開発分野(106.8億円、全体の14.8%:対前年度14.5億円、15,7%増)の順となっている。
[2] 建築・住宅、農林・水産、産業開発、環境、その他の分野はおしなべて増加している。
[3] 運輸・交通分野のなかでは道路・橋梁が151.6億円で最も大きい。その内訳は、道路86.44億円(87件)、橋梁65.16億円(34件)である。
[4] 産業開発分野では、電力が48.4億円(35件)で最も大きく、環境分野では、下水道が40.2億円(17件)で最も大きい。
[5] その他の分野は50.2億円(対前年度16.2億円、47.6%増)であり、教育の14.4億円(23件)、保健医療の6.2億円(10件)が比較的大きい。
(4) 地域別・国別受注について
[1] 地域別受注額については、例年どおり、アジア地域がトップで459.0億円あり、全受注額の63.5%を占めている。次いで、アフリカ地域92.0億円、中南米地域89.4億円と続いている。
[2] 国別受注額上位10カ国は、9位のブラジル、10位のホンジュラスを除いて、フィリピン、インドネシア、ヴィエトナム、マレーシア、中国、バングラデシュ、カンボディア、スリランカの順で上位8カ国をアジア地域が占め、この8カ国で全受注額の54.6%を占めている。
前年度2位のフィリピンが118億円(対前年度73.0%増)で1位の座を占めた。前年度1位のインドネシアは対前年度6.2億円増の87.7億円ながら2位に後退した。ヴィエトナムとマレーシアは前年度と同順位の3位、4位で、それぞれ堅調であった。フィリピンよりの受注額の内、101.3億円(85.8%)はJBIC案件であり、スービック港開発整備計画(特借、業務期間5.5年)の12.3億円、幹線空港施設建設事業(業務期間5年)の8.4億円、中等教育改善事業(PM、業務期間6年)の8.3億円等の大口受注を含む。
インドネシアよりの受注額の内、65.9億円(75.1%)はJBIC案件であり、タラハン石炭火力建設プロジェクトES-2の12.3億円(業務期間7年)、ワイスカポン灌漑(追加)の5.6億円等の大口受注が含まれる。
ヴィエトナムも同様に、50.2億円(93.8%)とJBIC案件が大きな比重を占め、タイン・チー橋建設計画(業務期間6年間)の23.0億円、ダイニン水力発電(業務期間5年)の9.8億円等が含まれる。 マレーシアについては、TJPSポートディクソン再開発フェーズII(業務期間6年間)の16.5億円が大きい。
(5) 今後の見通しと課題についての考察
[1] 近年の国内建設需要の低迷から、コンサルティング企業は海外業務受注に一層努力するものと思われるが、海外受注額の90%以上をODA関連に依存している日本のコンサルタントにとって、我が国ODA予算が縮減傾向にあるところから、今後のODA資金によるコンサルタント業務の受注増を期待することは困難であろう。
[2] 我が国をはじめとする先進諸国の経済の停滞により、開発途上国への援助予算の削減と開発途上国の経済インフラ整備への投資意欲の減少は、日本のコンサルタント業界の海外受注にもマイナスの影響が出てくるものと危惧される。
[3] JBICの一般案件は、近年、環境問題の解決や透明性確保の観点から実施に慎重を期すため、発注まで期間が長いという傾向にあり、特別借款案件を除けば、実施までに時間がかかる。
[4] コンサルタントの海外業務は対象国の経済・社会状況に左右されることは言うまでもないが、日本のコンサルタントが活躍している東南アジア地域では、経済危機からほぼ回復しつつあるとはいえ、最大の顧客であったインドネシアの経済回復は時間を要するものとみられ、コンサルタント業務の需要があるプロジェクトへの円借款供与は多くを望めない。
[5] 平成12年度の受注額が増加した要因の一つとして、平成10年のアジア経済危機に対応した我が国ODAによる緊急対策、特に特別円借款案件にかかわるプロジェクトが実施段階に入ったことがあげられる。平成13年度においても、特別円借款枠の残りの大型案件の成約が受注増につながる可能性があり、この点はプラス要因として考えられる。
[6] アジア開発銀行、世界銀行等の国際金融機関案件は、日本のコンサルタントの対応次第によっては直ぐにも可能性のあるマーケットである。また、将来、開発途上国の経済発展が進めば、ODA案件以外にも、相手国政府あるいは民間からの受注も期待できるものと考えられる。
[7] 一般には厳しい市場環境のもと、建設コンサルタントは、先に国建協が行った別途調査によると、有力企業を中心に下記のような市場拡大への努力等の戦略を掲げ、1999年度(受注高618億円)比年率約7%増(平均値)の海外受注を目指している。
建設コンサルタントの海外戦略
・市場の拡大への営業努力と情報収集活動等の強化
−優良案件の発掘・形成
−国際金融機関および外国民間企業の発注するプロジェクトへの受注努カ
−環境保全等、新たなニーズに対応する体制の強化
−PFIプロジェクトへの参加
・受注競争力の強化
・海外コンサルタントを含めたコンサルタント業界における業務提携の推進
・有能な海外要員の増強・有効活用
・技術の高度化、ソフト化
・ソフト型案件に対応するため、シンクタンク、学会との連携