2.スライドの内容
現地調査,既存資料等から得られた情報を元に、マニラ首都圏における都市公共交通について整理する。なお、これ以降はスライドの内容にあわせて章立てを行うものとし、利用手引書の代わりとする。
2-1.都市交通の概況
1)位置及び範囲
フィリピンは、日本の南方約3,000km余り、国土面積約30万km2、人口5,700万人の共和国で大小7,100余の島々からなる多島国家である。この中で一番大きな島ルソン島にあるマニラ首都圏があらゆる点でフィリピンの中心となっている。
マニラ首都圏は8市9自治体から構成され、面積636km2の広さを有する、マニラ市中心部から半径20〜25kmの範囲になる。
2)人口動向
(1)マニラ首都圏の人口動向
マニラ首都圏の人口は約890万人(1996年)で、1970年を100とした場合、20年間で約2倍に増加し、1990年以降も同じ程度の割合で増加が続いている。また、1990年には人口密度1万人/km2を超えている。今後も地方部からの人口流入が続くものと見込まれており、2010年までに1,000万人を超えることが予測されている。
表 マニラ首都圏の人口動向
  |
1970年 |
1980年 |
1990年 |
1996年 |
2000年* |
2010年* |
人口(千人) |
3,967 |
5,926 |
7,929 |
8,899 |
9,771 |
11,329 |
増加率(70年=100) |
100 |
149 |
200 |
224 |
- |
- |
人口密度(人/km2) |
6,237 |
9,317 |
12,466 |
13,991 |
- |
- |
出所:バンコクにおける軌道系都市公共交通幾関整備の現状と課題(海外経済協力基金1998.3)96年のみMMUTIS(JICA)
(2)人口分布の動向
マニラ首都圏内の中心地であるマニラ市は、人口規模152万人と2番目に大きいがすでに飽和し、近年人口流出が進んでいる。
一方、北東部のケソン市(187万人),カロオカン市は(97万人)90年から96年の間に約20万人、マカティ市より南部に位置するラス・ピニャス,マンティンルパ,タグイグ,バレンスエラ等で各10万人前後が増加する等、人口の郊外化が進行している。
表 マニラ首都圏の人口分布(1990年)の推移
  |
面積
(平方km) |
人ロ(万人) |
人ロ増加量
(万人)
90→96 |
1990 |
1996 |
カロオカン(Caloocan)市 |
55.8 |
76.1 |
97.3 |
21.2 |
マニラ(Manila)市 |
38.3 |
159.9 |
151.9 |
-8 |
パサイ(Pasay)市 |
13.9 |
36.7 |
38.4 |
1.7 |
ケソン(Quezon)市 |
166.2 |
166.7 |
187.4 |
20.7 |
ラス・ピニャス(Las Pinas) |
41.5 |
29.7 |
40.2 |
10.5 |
マカティ(Makati) |
29.9 |
45.3 |
44.8 |
-0.5 |
マラボン(Malabon) |
23.4 |
27.8 |
32.7 |
4.9 |
マンダルーヨン(Mandaluyong) |
26.0 |
24.5 |
26.9 |
2.4 |
マリキーナ(Marikina) |
38.9 |
31.0 |
33.6 |
2.6 |
マンティンルパ(Muntinlupa) |
46.7 |
27.7 |
39.1 |
11.4 |
ナボタス(Navotas) |
2.6 |
18.7 |
21.3 |
2.6 |
パラニャーケ(Paranaque) |
38.3 |
30.8 |
37.5 |
6.7 |
パッシグ(Pasig) |
13.0 |
39.7 |
44.2 |
4.5 |
パテーロス(Pateros) |
10.4 |
5.1 |
5.0 |
-0.1 |
サンファン(San Juan) |
10.4 |
12.7 |
11.5 |
-1.2 |
タグイグ(Taguig) |
33.7 |
26.6 |
36.4 |
9.8 |
バレンスエラ(Valenzuela) |
47.0 |
34.0 |
41.4 |
7.4 |
マニラ首都圏合計 |
636 |
793 |
890 |
  |
出所:1990年:運輸経済協力調査(運輸省/1993)
1996年:MMUTIS(JICA)
3)経済動向
フィリピン経済は、他のアセアン諸国の高度成長と比較し、これまで低調であり、GDPの年平均成長率は、1980-1990年には約1%、1990-1995年には約2.3%であった。1991-1993年の期間には、1人当たりGDPはマイナス成長を記録したが1994年以降、復調している。1995年の時点で、フィリピンの一人当たりGDPは27,131ペソ、メトロマニラ(マニラ首都圏)の一人当たりGRDPは、67,894ペソ(US$2,650)である。国民総生産の約32%を生み出すメトロマニラは、フィリピンの生産活動に主要な役割を果たしている。
表 全国とメトロマニラの経済成長(実質)
  |
1990年 |
1991年 |
1992年 |
1993年 |
1994年 |
1995年 |
全国GDP成長率(%) |
3.0 |
-0.6 |
0.3 |
2.1 |
4.4 |
4.8 |
全国一人当たりGDP成長率(%) |
7.1 |
-2.8 |
-1.8 |
-2.0 |
1.9 |
2.4 |
メトロマニラー人当たりGRDP成長率(%) |
6.4 |
-2.8 |
-4.8 |
-3.6 |
2.8 |
3.3 |
(出典:1996Philippine Statisical Yearbook)
出所:バンコクにおける軌道系都市公共交通機関整備の現状と課題(海外経済協力基金1998.3)