日本財団 図書館


川島 恭子(昭2.12.25生)
 東京都東村山市
 廃車車両を利用した電車図書館を開設し、子供のための図書館活動をボランティアで34年間続け、地域コミュニティの場を確立、青少年の健全育成と地域社会の交流促進に貢献した。
(推薦者 東村山市)
 
Kyoko Kawashima
(Born on December 25,1927)
Resident of Higashi-Murayama City, Tokyo Thirty-four years ago, Ms. Kawashima reclaimed a decommissioned train car and opened the Kumegawa Train Library on the compound of her public apartment house. She has been running the library and conducting volunteer activities for the children of her community ever since. The Train library has long been a community landmark, and Ms. Kawashima's services there have promoted communication and the fosterage of healthy, Ievel-headed youth within her community.
Recommended by Higashi-Murayama City.
 
 昭和42(1967)年、当時都市近郊の農業地帯だった東京都東村山市に初めて出来た大型団地に、団地住民の手で子供のための図書館が誕生した。廃車になった西武鉄道の車両を利用した「くめがわ電車図書館」である。当時、東村山市に公立の図書館はなく、手作りの図書館だった。数は少なくても良い本を読ませたいという母親たちの願いに地元の本屋さんが後払いで本を納入してくれ、母親たちは廃品回収をして本代を作った。電車図書館には子供たちがあふれ、大変な人気だった。とても市民の手に負える活動ではない。母親達は行政への働きかけを始める
 一方で、図書館の運営に必要な様々な仕事を分担して、大勢の人が参加できるようにした。貸出係、読みきかせ係、新聞係、読書会係、鍵係等、多いときには100人以上の大人が関わり、皆で電車図書館を支えてきた。
 それから35年、電車図書館の活動には新しい世代も加わり休むことなく続いている。本の貸出、読み聴かせを中心に、工作の会、人形劇、自然観察会等、活動は多彩である。地域の人たちの目や声の届く電車図書館は、本の魅力とともに、子供たちにはとても居心地の良い場所になっている。
 電車図書館からは、数千人の子供が育った。本職の図書館員になった人も、電車図書館の世話役になっている人もいる。お盆には「お父さんが通った図書館は電車なんだぞ」と子供を連れて帰ってくる人もいる。アメリカから図書館員が1年間、市民の図書館活動研究にやってきたこともあった。電車図書館は、子供達が育ちあう場であり、地域のコミュニティの核ともなっている。
 川島さんは、この電車図書館の代表として大勢のボランティアが関わる組織の要として活動してこられた。昭和49(1974)年、市民の運動が実って市立図書館が設置された際も、市民の代表として図書館の基本計画、条例づくりにも参画した。平成4(1992)年からの団地建て替えでは、古くからの住民が転居し電車図書館の存続が危ぶまれたが、プレハブで運営を続けながら粘り強く公団に働きかけ、今年4月新車両での再開を果した。また、電車図書館の活動とは別に自宅の蔵書を開放し、近所の子供たちと読書を楽しむ。
「何度も次の人にバトンタッチしょうと思ったんだけどね。川島さん、逃げ損ねましたねって若い人に言われたのよ、フフフ」と謙虚に語るが、子供の読書に寄せる情熱と組織のリーダーとしての冷静な判断力とを兼ね備えた川島さんの存在により、30年以上にわたるくめがわ電車図書館の活動は続いてきたと言える。
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初代の電車図書館
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現在のもの
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受賞の言葉
 我が子のために楽しい読書環境をと考え、活動に参加したのが入口でした。子供の本の面白さを知り、信頼できる人達と会い、努力の実る幸運にも恵まれました。子供達が、この環境を生かして欲しいと祈る心境です。








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