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「社会貢献者表彰」の選考を終えて
A report from the screening committee
 既に長い歴史を重ね、高い評価のあるこの顕彰制度が、その仕組みを変えられた平成11年度から、私は選考委員をお引き受けしました。
 社会のどこかで頑張っている人たちを表彰しよう、人々や社会のために力をつくされた方を顕彰しよう。-この考え方に全く賛成した私ですが、さて、どんな方をどのような基準で顕彰すればよいのか当初悩みました。
 このような審査の仕方として、事務方がおおよそ選考され、審査委員はその中から選考するという方法をとられる所もありますが、社会貢献支援財団のやり方は違いました。候補者すべての資料が、選考委員の許に送られて来ると言うものでした。平成13年度は、368件。この中からまず、夫々の選考委員が審査を致しました。 正直の所、どの候補者もさすが、という方ばかりで審査はつらい作業ですが、一方で実は、大きな救いがあるのです。それは、この社会には、こんな所で、こんな事を考え、長年に亘って実行して居られる素晴らしい方がある、と言う実感を感じられる事でした。
 選考委員冥利と言えるかもしれません。しかし、人間の行為についてどちらを優先するかとなると、こればかりは、迷います。
 そこで、選考委員会がとても重要な場となります。曽野委員長のご方針でもありますが、全委員が意見をのべ、異なる立場、意見を全部出す、と言える雰囲気の中で選考をすすめました。これしかないと考えたことでも、他の意見の中から自分の中に新しい視点が生まれることも経験しました。
 時間はかかりますが、最後は、不思議に一本化され審査を終える事が出来ました。
 今年は、緊急時の功績部門が6件、多年にわたる功労部門11件、特定分野の功績部門{海の貢献賞}2件、{国際協力賞}2件、{21世紀若者賞}3件、合計24件を選考いたしました。候補者の活動領域は、実に多岐であり、領域が重なることもありますが、この3年間で3部門6領域は、大体定着した様に思います。なお、今年は特定分野部門中のハッピーファミリー賞については、該当を見送りました。大事な部門だと思いますので、今後、適当な方の推薦をお待ちしたいと思います。
 緊急時功労の方々のうち、危急時に自分を顧みず尽力し命を落とされた行為に対して、選考委員一同一致して推薦させて頂きました。また、若い世代が、とかく自分中心であると言われるなかで、19歳の青年が、線路に転落した同級生を助けた勇気は、人々の心や、社会の未来に明るい灯を掲げてくれました。
 昨年から設けられた国際協力賞、21世紀若者賞にも素晴らしい応募があり、その中から数件選ばせて頂きました。学校のゆとりの時間を利用して高齢者宅を訪問した熊本県の小学生達は、その行為を通して高齢者の支援にとどまらず、高齢社会の新しい社会作りを見せてくれた様に思います。国際協力賞は2件。国際的な社会貢献が少ないと言われる日本ですが、地道で草の根的な国際協力に汗を流す人たちが増えています。この分野の応募が増え、新しい私達の社会の姿がこの顕彰制度から見えるものにできたら、と思いました。
 選考過程で、出された意見から2点述べると、
1.海の貢献賞については、顕著な発明考案や優れた現場技術の開発者、例えばクレーン操車や、積み付け作業などの現場における名人と言われる人なども視野に入れて候補者募集をおこなってはどうかと言うことで、皆で方向を確認しました。
2.一昨年より宗教関係者の貢献を、顕彰の対象にするか?について検討してきました。この方たちは、人から褒められるために、やって居られないことは、解っていますが、その功績が顕著な場合、何らかの顕彰をしてもよいのではないかと言う意見が出されました。今後、さらに議論していく事になると思います。
 社会が、閉塞状態で内外とも暗いイメージの中で、顕彰された方々のお顔が、輝いています。表彰式典に出席すると、人のため社会のために行動することが、単なる行動に止まらず魅力ある生き方に繋がっていると実感させられます。
 この制度がこれからも利用され、社会に明るさ、やさしさをもたらして欲しいと思います。2001.11.27
金平輝子








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