漢詩初学者講座 伊藤竹外
吟詠家に漢詩のすすめ―(四十一)
伊藤竹外
伊藤竹外先生プロフィール
愛媛漢詩連盟会長
(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)
六六庵吟詠会総本部会長(吟歴60年)
財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
財団法人日本吟剣詩舞振興会理事
平成5年 文部大臣地域文化功労賞
平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞
著書 豫州漢詩集(編著)
南海風雅集(編著)(2版)
漢詩入門の手引き(10版)他。
一、ぐんま全国漢詩大会の応募作品について
今年、ぐんま国民文化祭における漢詩大会の応募作品は全国都道府県から海外を含めて一、一〇五篇に上っています。
その審査の依頼を受けてA3版の原稿用紙のコピーがずっしりと送られて今、超多忙の中で、八月十三日は締切り同八月二十一日の審査会を目前に一日生涯の毎日々々を全力投球の真最中であります。
この審査要領は最高と思われるもの五点一名、秀作三点、三名、入選作一点宛十五名の十九点で十二名の審査員の集計の中から入賞を決定するもので総応募作品の僅か一・七%の嚴選は正に至難中のことと思います。
選ぶ方も大変で他の審査員の動向は知るべくもありませんが、私の選考は先ず選外作として一、〇〇〇篇を却下して、以後入賞候補一〇〇篇を残し、再考せんとするものであります。
二、良くない作詩の標準
さて選外へ落すものは次の標準によります。
(一)平仄の合っていないもの(嘘字も)
(二)読み下し文を書き誤っているもの(送り假名の不適なものも)
(三)課題に適していないもの((イ)、故里の四季、(ロ)、「草」に題す右の内、四季が詠まれていないものも)
(四)俗語を並べたもの
(五)常識的、安易な詩語の応用
(六)割り切れる詩語を転結に据えたもの(入門の手引き「選んでならない詩語」)
(七)理窟を述べて詩情に欠けるもの
(八)平凡で取り得がないもの
右の如く作詩として欠点となるものは一瞥して解りますが、これまで折にふれ或は毎月の如く参考として述べて来たものです。
三、課題「詠鳥」
私達の周辺にはいろいろの鳥が何十種類となく飛び廻り、啼き、順れ、親しみ、うるおいを与えてくれます。他の課題詩中でも鳥を詠みこむことによって精彩を与えてくれる存在であります。
四、同類の語を避けること
漢詩を学ぶ者は同字の重出が不可であることはよく知っていますが、字が違っても同意、同類の詩語、内容をさけることの大切さを知ってほしいものです。例えば今月も次の如きものが多くありました。
五、結句は全体を支えるもの
いつも結句の肝要なことを挙げていますが、作者のみのひとり合点でさっぱり理解できない句に出会うと添削の方法も浮びません。
次の句など誰にも解らないでしょう。