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講演
「市町村における精神保健福祉活動」
 三重県健康福祉部障害保健福祉課長
 長坂 裕二
1. はじめに…
スティグマとスケープゴート
 古代社会では、奴隷や犯罪人は焼きごてで印し、つまりスティグマを身体に灼きつけられた。スティグマを負わされた人間は、地域共同体では許されることのない異分子であり、なにかのときにはスケープゴートとしていけにえに供された。
 現代のスティグマは、古代のように身体に焼きごてを当てるような目に見える残酷なことはしないが、心に癒しがたい傷を負わせることにおいて見えないところで今もなお存在している。
 
 現代のスティグマ―ハンセン病・精神病・エイズ・難病の艱難―大谷藤郎著、勁草書房より
2. 精神保健福祉行政の沿革
(1) 黎明期、精神病者監護法
(2) 精神障害者に対する治療という視点(呉秀三)
(3) 精神衛生法の制定(昭和25年)
(4) 精神衛生法40年改正(昭和40年)
・精神障害者の全国実態調査(昭和38年)
・ライシャワー事件(昭和39年)
・全国精神障害者家族会連合会創設(昭和40年)
(5) 精神保健法(昭和62年)
・宇都宮病院事件(昭和59年)
・国際人権連盟声明(昭和59年)
(6) 精神保健法の改正(平成5年6月)
(7) 精神保健法から精神保健福祉法へ(平成7年)
・障害者基本法の制定(平成5年12月)
(8) 精神保健福祉法の成立(平成9年)
(9) 「今後の精神保健福祉施策について」(平成11年1月14日)
→公衆衛生審議会から厚生大臣に対し意見具申
(10) 精神保健福祉法の改正(平成11年)
3. 障害者福祉行政の改革(社会福祉基礎構造改革)
(1) 戦後の社会福祉法制誕生と時代背景
・戦後の混乱期における社会事業の衰退と生活困窮者の急増
・新憲法下における緊急の生活困窮者対策の実施と福祉3法の制定
・社会事業の共通的基本事項を総合的に規定する法律の制定(社会福祉事業法)
(2) 社会福祉を取り巻く社会環境の変化と制度疲労
・少子高齢化の急速な進展による福祉需要の増大および多様化、ノーマライゼーションと国民意識の変化
・地方分権、規制緩和、情報開示を推進する時代の潮流
・社会福祉の充実と利用者の信頼の醸成を妨げる構造問題(制度疲労)
(3) 社会福祉基礎構造改革の意義
・社会福祉の新しい理念の確立
→高齢者、障害者、児童が人としての尊厳を保ちながら、身近な地域でその人らしい自立した生活を送れるよう支援すること
 
・中社審の中間まとめ(平成10年6月17日)が示した改革の基本的方向
[1] サービスの利用者と提供者の対等な関係の確立
[2] 個人の多様な需要への地域での総合的な支援
[3] 幅広い需要に応える多様な主体の参入促進
[4] 信頼と納得が得られるサービスの質と効率性の確保
[5] 情報公開等による事業運営の透明性の確保
[6] 増大する費用の公平かつ公正な負担
[7] 住民の積極的な参加による福祉の文化の創造
(引用:中央社会福祉審議会社会福祉構造改革分科会中間まとめの概要)
4. 三重県の精神保健福祉施策の現状と今後
(1) 適正な精神科医療の確保
・病院、診療所
・医療審査会
・精神科救急システム
(2) 社会復帰施設の整備状況
・授産、小規模作業所
・生活支援センター
・生活訓練施設
・福祉ホーム、グループホーム
(3) 精神障害者ニーズ調査(平成12年度)
・全国精神保健福祉大会開催(平成11年月)
(4) 市町村を中心とした精神障害者福祉施策の構築
・市町村障害者計画の策定状況
・市町村で実施される平成14年の福祉相談業務について
・市町村の精神障害に対する理解を深めることが最重要
5. おわりに…
 たび重なる法改正によって、徐々に精神障害者に対する理解も深まってきていますが、精神障害関連の事件が起こるたびに、マスコミ報道等においては、精神障害に対する根強い偏見が見え隠れする印象があります。池田小学校の不幸な事件はその一端であり、また、新聞等の「・・・なお、容疑者は精神科の通院歴があった。・・・」というような思わせぶりな報道は、精神障害者に対する一般人の理解の妨げになっているように思えます。
 
 長い歴史の中で家族会はじめ地道な活動が実を結びつつある現在、さらに大きく発展するためには、市町村の役割は大きいと考えてい.ます。新たな役割が与えられる市町村ともに県行政は、家族会や医療に携わる者やボランティアの方々はじめとした関係者、そして障害者自身と協力しながら三重県における精神障害者の社会参加・自立を進めていきたいと考えています。








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