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「地元への観光産業のチャンスや平等な利益分配により持続性のある観光開発を目指すエコ観光協力構想について」
大韓民国、キョンヒー大学
イ ・ テヒ
 
 皆さん、こんにちは。
 本日、このようにまいることができ、非常にうれしく思っております。プレゼンテーションの機会をいただき、ありがとうございます。
 私のプレゼンテーションのトピックに移る前に、最近、いろいろな変化があったので申し上げたいと思います。
 私はキョンヒー大学で観光管理を教えています。、そして大学の中にあります観光学部で仕事をしております。韓国におきましては、大学の学生たちが試験に通って、そしてその時に点数が与えられるのですけれども、平均の点数ですが、観光学部の学生の点数が高くなっております。例えば今年2001年ですけれども、法学部の学生の点数よりも観光学部の学生のほうが点数が高いということがわかりました。
 したがって、韓国における観光の重要性が増しているということでありまして、これは観光業界にとってもよいニュースではないかというふうに思うわけであります。やはり人材というのが大事でありますから。ただ、悪いニュースでありますが、この学生たちが最終的に仕事を見つけようと、就職活動をするのですけれども、なかなかそれが難しいのです。満足ができるような仕事を観光業界で見つけることができないという悲しい状況があります。ですから、状況はあまりよくないということで、観光業界全体としてはあまり状況はよくないかもしれないのですけれども、しかしながら、観光開発の状態というのが実はエコツーリズムにとってもあまりよくない状況であるということであります。
 したがいまして、エコツーリズムで持続可能な開発を達成しようとしている住民に対してどのようなことができるかということを話してみたいと思います。
 皆さんがお持ちの資料の中にもあるかと思うのですけれども、基本的な地元住民に対してのベネフィットをどうやってエコツーリズムで与えるかということが書かれているかと思います。そして今日の私の流れなんですけれども、基本的には中央政府、あるいは地方自治体がやっている活動についてお話ししたいと思いますが、私のプレゼンテーションの中では特に地元の住民がどのように意欲を持ってエコツーリズムを代替案として受け入れるかということについても話していきたいと思っているわけであります。
 エコツーリズムをどのような形で地元住民が受け入れるか、これはエコツーリズムの成功を握っている鍵であります。マスツーリズムとエコツーリズムには幾つかの違いがあるのではないでしょうか。このようなマスツーリズムと、それからエコツーリズムの違いを見ることによりまして、これを一つの代替案として考える論理を得たいと思うわけです。
 マスツーリズムの場合ですけれども、地元住民というのは観光業界の資源として搾取されます。すなわち生産手段となるわけであります。例えばこのような観光開発のプロセスの中でベネフィットを受けることはなかなかないわけです。地元住民には歓迎されない。それからまた観光ビジネスから経済的な効果が流出してしまうということであります。
 したがって、観光業界からあらわれたベネフィットというのは、このコミュニティーの外にいる企業家に流出してしまいます。済州島にはチョングンリゾートというのがありまして、大変有名なスポットなんですけれども、バルマ先生も数日前、WTOの会議に参加するために済州島に行かれたかと思いますが、そこにはチョングンリゾートというのがあります。この都市は西帰浦市ということなんですけれども、税収が60%をリゾートから得ることができます。しかしながら、西帰浦の市民というのは自分たちの生活を楽にしてくれるようなリゾートではないと考えております。すなわちほとんどの収入というのは島の外に流出してしまうからということで、地元の住民にとってはあまりありがたくないものであります。
 このようなマスツーリズムでありますが、なかなか地元住民の間で賃金が均等に分配されません。したがって、残されたのはごみと汚染だけである。そしてまた文化、アイデンティティを失ってしまうということで、地元の人たちは自分たちに残されたのはごみだけじゃないか、あるいは公害だけじゃないかというふうに不満を持っているわけです。
 しかしながら、エコツーリズムというのはそこに強みもありますし、潜在可能性もあるわけでありまして、いい点はたくさんあります。そのうちの一つは、これによってニッチ市場、あるいは新しい市場に向けての製品をつくっていくことができるということ、これがエコツーリズムの一つの利点であります。エコツーリズムの市場というのは、韓国におきましては大変急速に拡大をしております。そしてまた新しい体験、新しい製品が生まれております。そして観光業界の産業におきましても新しい製品であるとか、新しい体験がエコツーリズムによって生まれております。
 そして、観光にとって3つ、重要な点があると言われています。これは3つのEですけれども、エンターテインメント、エキサイトメント、それからエデュケーションで、3つのEであります。
 エコツーリズムとは、特にこのような教育的なアート感を出すということでエコツーリズムには重要な教育効果があると考えております。それからまた環境に関しての関心もこの中に含まれているということであります。
 エコツーリズムというのは多くの強みと潜在可能性を秘めておりますけれども、しかしながら、現実というのは教科書に書かれた理論どおりにはいかないということでありまして、例えば地元住民がエコツーリズムに反対している人もいます。すなわち価値であるとか、あるいは潜在可能性がわからないということ、それからまたエコツーリズムのコンセプトでありまずけれども、確かに地元社会に対してビジターが来てもらうのは重要だけれども、それは十分に理解できないということです。エコツーリズムというのは地域社会に対して大きな利潤をもたらさないと考えております。それからまた、環境保全というのは障害物であるということであります。経済的なベネフィットを最大限にするためには、保全というのは地元住民にとっては規制以外の何者でもないということで、経済効果を図るためには環境保全はかえって阻害だというふうに考える人もいます。
 しかし、エコツーリズムというのは韓国全体でどんどん始まってきております。幾つか韓国におきますエコツーリズムの例をご紹介してみたいと思います。
 まず、1つ目でありますが、これは泥であります。韓国において泥の体験、この泥体験というのは韓国でも大変人気の高いエコツーリズムでありまして、東、南、西というのは韓国は海に面しております。特に西海岸のほうですけれども、泥体験を簡単に行うことができます。特に泥の重要性を体験することで、すなわち環境の浄化ということについての学習をすることができるという効果があります。ただ、地元の人によって、この泥というのは海洋生産の場所であります。例えばタコとかアサリとか、そういったものを捕まえたり、魚を採ったりする重要な漁場であるわけです。そしてNGOで環境ミッションをやっているところでありますが、このような泥の重要性について、若い世代の人たちに伝えようと、その解釈をし、積極的に関わっております。
 エコツーリズム、例えばオーストラリアでは盛んでありますが、非常に高い質の専門的なレンジャーであるとか、エキスパートなどのプログラムがあります。そして韓国におきましても、このような解釈をすることによって、より満足のいくような体験をすることができるのではないかというふうに思います。
 したがって、専門家が解釈してくれるようなプログラムが必要であるということです。そのうちの一つがホエールウォッチングなんですけれども、クジラの観察というのは、韓国ではまだ盛んにはなっておりません。幾つかの港湾市、浦項(ポハン)、束草(ソクチョ)、麟蹄(インチョ)、木浦(モクポ)、こういった港湾都市があるのですけれども、ホエールウォッチングのところで大変有名になってくるのではないかと思います。このような状況ですが、この都市の地元の人たちでありますが、やはり伝統的な漁業であるとか、シープランテーションのほうがホエール・ウオッチングよりも大事だというふうに考えております。すなわちこの2つは両立しないということであります。すなわち観光と工業は両立しないと考えております。
 また、このツーリズムですが、今、エコツーリズムを成功裏に進めようとしています。その中でのホエールウォッチングです。ホエールウォッチングですが、3Eということにつながると思います。先ほどの3つのEです。エクサイトメント、エンターテインメント、エデュケーションということです。それらにつながるでしょう。
 バードウォッチングももう一つのエコツーリズムのタイプということで位置づけられます。これも今、人気が高まっています。チョウワン市ですが、この市が非常に有名です。非常に魅力あるところで、冬鳥がここに集います。韓国政府は、チョウワンを強調しようということ、すなわち広い地域が自然保護地域になるということです。ただ、反対の声があります。地域住民からの反対なんです。地域の人たちは自分たちの土地使用権、あるいは自分たちの財産権が阻害されるのではないかと、この意味でこの保護地域という構想に対して反対しています。
 そうした中で、恐竜の足跡が化石となった地域もあります。これは多くの場所にあるわけで、特に南の海岸地域で多く見られます。この場所もやはり観光地として盛んになってきました。活動、サービス、あるいはいろいろな説明、ガイドといったものが充実しておりません。またこのような資源をどういうふうに使うのか、エコツーリズムの魅力として位置づけるところではまだ充実していないということが地域の人たちの認識としてあります。
 韓国においては、非常に多様性のある文化的な遺産があります。例えばその人たちが住んでいる自然の、あるいは純然たる韓国の文化といったものです。それを今、パッケージとか、あるいはコーディネーションという形で提示しています。このような資源もやはりパッケージの中に組み込んでエコツーリズムの資源として提供することが可能でしょう。
 この男性を見てください。タカの訓練をしております。鷹匠です。タカを使ってハンティングを行うということですが、ジンナンと呼ばれていますが、これはマオ山のチャンムクプロビエンスの中にあります。この州においては多くの資源があるわけで、それが観光業に利用可能だと思います。例えば水田の非常に美しい地域です。ダレンギーの地域、また泉があります。ダミと呼ばれていますが、この泉がサンテン川の水源になっているわけです。また、多くの住民の人たち、ルンムイビンというふうな文化的な遺産を継いでいる人たちが存在しています。
 機織りをしているところを見ていただきました。多くの住民の人たちがそこに参加するということなんですが、経験がないということ、知識もないということが一つの障害になっています。ビジネスの経験がないのです。それらを観光という形で生かそうとするならば、マーケティングをどういうふうにするのかという戦略も重要になりましょう。また、製品としてどういうふうに流通させ、プロモーションし、価格をつけるのか、そういったアプローチが必要です。
 先ほどモーガンズさんがお話になりましたように、韓国においてもやはり産業に対しての地域社会の参加が必要であります。その意味では管理、あるいはオペレーション、運営ということでエコツーリズムをどうするのかという知識を高めなくてはなりません。
 また、消費者に対していろいろな訴えかけができます。デリバリーセールという形で地域の物を届けることができる。それによって新しい訪問者も来ると思うのです。そしてまた観光客全体のボリュームも高まると思います。
 また、地域社会の人たち、そしてまたエコツーリズムでありますが、B&Bのようなビジネスをもう既に運営しているところがあります。エコツーリズム、あるいは文化ベースのこうしたツーリズムでありますが、ローカルな文化というものが経験できるような施設の需要があります。モーテル、コンドミニアム、ホテルに泊まるのではなく、伝統的な家、あるいは農家に泊まりたいということです。そうした宿泊ということで、ローカルのその地域の人たちには追加的な収入源となって働きます。
 ここでは伝統的な藁葺き屋根の家が示されています。これはいわば過去においては貧困の象徴であったわけです。しかしながら、これが今や非常に魅力的な宿泊施設となりました。韓国の国内の人たちにとってもそうでありますし、また"フリー・インディペンデント・フォーリン・トラベラー"と呼ばれる個人で来る外国人客にとってもそうだと思います。ただ、いろいろと問題もあります。なかなか難しいのです。例えば真の本当に純然たるこのような藁葺き屋根がなかなか見つかりにくいということがあります。例えば70年代の初めに、パク・チョンヒ大統領がこのような家を除去しようという施策を打ち出した時期がありました。つまりその運動を"ニュー・ビリーブ・ムーブメンド"、新しい経済運動として高めたわけです。そこで藁葺き屋根が除去されてしまいました。廃止されたんです。70年代のことでした。
 また、材料にしましても、この写真にあるようなものですが、これは黒い粘土ということで、昔から使われています。これは人の健康にも資するということで、例えばがん治療にも役立つということが知られています。
 ただ、この地域の人たちが伝統的なこうした宿泊施設、家を持っているわけですが、どうして管理をすればいいのか、その運営の仕方も知らなくてはいけない。そしてまたお客さんとしての観光客の受け入れ方も学んで、プロモーションができるようにと、そして課題を克服しなければいけません。
 もう一つの例ですが、地域社会の人たちが自ら伝統的な茶道、あるいはハーブメディスンのトレーニングセンターを運営しています。観光客はそこでこのようなものを実際に味わうことができるのです。これは文化的、また健康志向のツーリスト、観光客にも非常に興味のあるものとして受け入れてもらっています。
 エコツーリズムですが、その資源を保全するということが重要ですが、それだけではありません。その地域社会の経済を強化する、そしてまたそのためには協同組合のコンセプトが採用されてきました。この制度のもとでは、環境、そしてまた森林といった資源がすべての人々の役に立つようにということ、福利が高まるようにということ、また人々の意識づけということもあります。どういうふうな文化遺産、習慣、慣習、そしてまた資源を持っているのかということの認識です。
 エコツーリズムは一つの新しいコンセプトとして韓国では今、根づきつつあります。持続可能な観光業の開発ということにもつながるということです。今までの観光業のやり方とは違っています。その考え方といいますのは、やはり一つの事業でありますので、個々のビジネスの振興、そしてまたその利点を図る、あるいは場合によっては独占ということを目指す動きがあったと思います。それとは一線を画するということでありましょう。
 また、いろいろなチャンスを平均して平等に地域社会の人たちが便益を受けるように分配しようということもあります。
 どうもありがとうございました。








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