3.国際観光支出
2000年の国際観光支出において、10億米ドル以上を記録したのは46ヵ国にのぼるが、明らかに首位に立っているのは巨大工業国である。アメリカ、ドイツ、イギリス、日本は、年間310億米ドルから650億米ドルの範囲内で、支出の上位を占めている。これら4ヵ国で、総国際観光支出の3分の1以上を占める。次に、フランス、イタリア、カナダ、オランダと続く。これらの各国は、120億米ドルから170億米ドルの範囲内で支出しており、合わせると総国際観光支出の12%となる。
〈国際観光支出世界上位15ヵ国〉
順位
Rank |
国際観光支出(単位:10億米ドル)
International Tourism Expenditure(US$ billion) |
伸び率(%)
Change(%) |
マーケットシェア(%)
Market share(%) |
1999年 |
2000年 |
2000/1999年 |
2000年 |
1.アメリカ |
United States |
59.4 |
65.0 |
9.6 |
13.7 |
2.ドイツ |
Germany |
48.5 |
47.6 |
-1.8 |
10.0 |
3.イギリス |
United kingdom |
35.6 |
36.6 |
2.6 |
7.7 |
4.日本 |
Japan |
32.8 |
31.5 |
-4.0 |
6.6 |
5.フランス |
France |
18.6 |
17.2 |
-7.9 |
3.6 |
6.イタリア |
Italy |
16.9 |
15.5 |
-8.6 |
3.2 |
7.カナダ |
Canada |
11.3 |
12.4 |
9.4 |
2.6 |
8.オランダ |
Netherlands |
11.4 |
11.8 |
4.0 |
2.5 |
9.中国 |
China |
10.9 |
- |
|
|
10.ベルギー/ルクセンブルグ |
Belgium/Luxembourg |
10.1 |
- |
|
|
11.オーストリア |
Austria |
9.8 |
9.3 |
-5.6 |
1.9 |
12.スウェーデン |
Sweden |
7.6 |
- |
|
|
13.ロシア連邦 |
Russian Federation |
7.4 |
- |
|
|
14.大韓民国 |
Republic of Korea |
4.0 |
6.4 |
60.4 |
1.3 |
15.スイス |
Switzerland |
6.8 |
6.3 |
-7.8 |
1.3 |
出典:世界観光機構(WTO) (2001年8月までに入手したデータ)
4.短期見通し(2001年8月時点)
ツーリズム産業部門は、イベントが目白押しであった2000年と同じように翌年も成功するとは思われていない。また2000年は、国内総生産(GDP)の尺度で計った世界経済生産高がほぼ5%という驚くべき率で伸び、世界経済は非常に力強かった。
結果として可処分所得が増え、ツーリズムに使う自由裁量支出を押し上げた。しかしながら、ツーリズムと経済生産高の両方において2000年に達した伸び率は、長期的に見ると持続可能なものではなく、例外として捉えるべきである。
〈世界規模での実質伸び率と予測伸び率〉
出典:国際通貨基金(IMF)、世界観光機構(WTO)
ツーリズム産業部門においては、2000年の成長を確実なものにし、次の年でより緩やかな率で増加することができれば、良い結果をもたらすであろう。初めに、2001年の伸び率は、世界観光機構の「ツーリズム・ビジョン2020」の中で長期予測されている2020年までの期間の年間平均伸び率4.1%程度か、それ以下であると予測されている。
5.ツーリズム・ビジョン2020
「ツーリズム・ビジョン2020」は、世界観光機構がツーリズムの発展に関して、新たな千年期の最初の20年間までを、長期予測し評価したものである。「ツーリズム・ビジョン2020」による重要な所産は、1995年を基準年として2000年、2010年、2020年を予想した、25年間に及ぶ数量的予測である。
〈国際観光客到着数 1950年-2020年〉
WTOの「ツーリズム・ビジョン2020」では、2020年までに国際観光客到着数は15億6,000万人以上に達すると予測している。2020年の国際観光客到着数のうち、11億8,000万人は地域内旅行客となり、3億7,700万人は長距離旅行客となるだろう。
地域ごとの総観光客到着数を見ると、受入れ上位3地域は2020年までに、ヨーロッパ(7億1,700万人の観光客)、東アジアおよび太平洋地域(3億9,700万人)、南・北・中央アメリカ(2億8,200万人)になるだろう。そして、続いてアフリカ、中東、南アジアの順になるであろう。
東アジアおよび太平洋地域、南アジア、中東、アフリカは、世界平均の4.1%と比べて、年間5%以上の伸び率を記録するだろうと予測されている。より成熟した地域であるヨーロッパや南・北・中央アメリカは、平均伸び率より低くなることが予測される。
ヨーロッパは、国際観光客到着数において最も高いシェアを維持するだろうが、1995年の60%から2020年には46%に減少するだろう。2位の南・北・中央アメリカは2010年までに、その地位を東アジアおよび太平洋地域に奪われるだろう。東アジアおよび太平洋地域は、2020年に世界総数の25%にあたる観光客を迎え入れる一方で、南・北・中央アメリカは、1995年の19%から2020年の18%に減るだろう。
〈地域別国際観光客到着数(単位:100万人)〉
|
基準年
Base Year |
予測
Forecasts |
年間平均伸び率(%)
Average Annual Growth Rate(%) |
マーケットシェア(%)
Market share(%) |
1995年 |
2010年 |
2020年 |
1995-2020年 |
1995年 |
2020年 |
総数 |
Total |
565.4 |
1,006.4 |
1,561.1 |
4.1 |
100 |
100 |
アフリカ |
Africa |
20.2 |
47 |
77.3 |
5.5 |
3.6 |
5 |
米州 |
Americas |
108.9 |
190.4 |
282.3 |
3.9 |
19.3 |
18.1 |
東アジア・太平洋 |
East Asia/Pacific |
81.4 |
195.2 |
397.2 |
6.5 |
14.4 |
25.4 |
欧州 |
Europe |
338.4 |
527.3 |
717 |
3 |
59.8 |
45.9 |
中東 |
Middle East |
12.4 |
35.9 |
68.5 |
7.1 |
2.2 |
4.4 |
南アジア |
South Asia |
4.2 |
10.6 |
18.8 |
6.2 |
0.7 |
1.2 |
地域内 (a) |
Intraregional (a) |
464.1 |
790.9 |
1,183.3 |
3.8 |
82.1 |
75.8 |
長距離 (b) |
Long-Haul (b) |
101.3 |
215.5 |
377.9 |
5.4 |
17.9 |
24.2 |
出典:世界観光機構(WTO)
注釈: (a)地域内は、出発国が明記されていない場合の到着数を含む。
(b)長距離は、地域内旅行以外の全てのものであると定義する。
世界の長距離旅行は、1995年から2020年の期間に、地域内旅行の伸び率年間3.8%と比べ、5.4%という高い率で急速に伸びるだろう。結果的に、地域内旅行と長距離旅行の割合は、1995年には約82対18だったが、2020年にはほぼ76対24に変わるだろう。