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2 コ口ラド大学が提供している衛星高度計による海面高度分布画像
 コロラド大学の宇宙力学研究コロラドセンター(CCAR)では,T/PおよびERS-2によるふたつの衛星高度計の資料から,海面高度分布(および,それから計算された表層海流分布)・有義波高分布等を求めて, 3日毎にウェブサイトを通して公開している。しかし,海域を限ると実際の衛星の飛来・観測頻度が不規則な場合がある。例えば熊野灘・遠州灘沖に注目した場合,衛星の軌道のずれ,あるいは,観測の失敗等により情報画像の更新ができなかったことが原因で同一の画像が3回くらい連続して提供される場合がある2)。
 ガルフストリーム水域やメキシコ湾域については,正確なジオイド面の推定がされており,そこからの海面高度が与えられている。従って,海面高度データから求められた海流分布図は,Fig.1,Fig.2にそれぞれ示すように,ガルフストリームの流路等をよく表している。しかし,これらの図の海流では海岸近くの部分は空白になっている。世界の海を対象とした海面高度・海流分布図から,ガルフストリーム水域の部分を抜き出したものがFig.3であるが,この場合にはFig.1と違い陸岸近くまで海面高度分布が示されている。しかし,基準のジオイド面の精度に限界があるためか,得られている海面高度分布は必ずしも現実的なものとは言えない。特に東流するガルフストリームの南にそれに平行する形で強い西流が現れている。ここでの流れは通常東を向いているはずである。
 世界を対象とした画像には,一時「平均値からの偏差」(2000年12月時点)と表記されていたが,平均値の求め方は示されていなかった。最近では(2001年3月時点),この表記自体が除かれて世界を対象として求められた粗い精度のジオイド面からの海面高度分布として示されるようになっている。黒潮水域を含む日本近海については,この世界を対象とした解析結果を用いることになるが,Fig.4,Fig.5に示すように,房総半島沖から紀伊半島東岸に向かう西向きの流れの存在が示唆されており,黒潮流路の再現にも成功しているとは言い難い。しかし,和歌山県農林水産総合技術センターでこれらの画像を動画の形で編集して見た場合には,紀州沖を通過していく海洋渦の情報が得られており(竹内淳一,私信),海洋の短周期変動については有効な情報が得られる可能性が大きい。
TOPEX/ERS-2 Analysis Nov 2 2000
z1059_01.jpg
Fig. 3 Distribution of SSDH of Gulf Stream area on November 2,2000, from the world ocean SSDH, (from CCAR's WWW)
Contour intervals with solid line are + 5 cm while those with dotted line are -5 cm.
TOPEX/ERS-2 Analysis Nov 2 2000
z1059_02.jpg
Fig. 4 Distribution of SSDH of Japanese waters on November 2,2000.
Symbols are same as in Fig. 3
TOPEX/ERS-2 Analysis Nov 2 2000
z1059_03.jpg
Fig. 5 Water movement patterns of Japanese waters estimated based on SSDH (Fig. 4) derived from the T/P and ERS-2 altimeter data on November 2,2000.(from CCAR's WWW)








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