(2)データ処理
a)大気圧補正
海底に設置したWLR7型水位計は、設置位置における絶対圧力を測定するため、実際の水位を求めるためには、潮汐観測地点での大気圧を減じて補正しなければならない。しかし験潮器設置地点の海面上の気圧は測定器類を海面上に設置していないため連続同時観測をすることができない。そこで、潮汐観測地点周辺の気圧測定地点のデータをもとに設置点における海面気圧を推定し、この値をもとに気圧補正を行い海面上の高さを算出した。
推定した海面気圧は、気象庁の各気象台、及び測候所により観測された現地気圧データから標高0mの気圧を算出した海面気圧データを用いた。
設置位置の海面気圧は、気圧測定地点から設置位置までの距離を求め、距離に比例した気圧勾配を推定し算出した。各気象台、測候所における海面気圧は、1時間毎のデータであるため、内挿により10分毎の験潮器設置位置における海面気圧データを作成した。内挿方法は、直線補間法である。
現地気圧データを収集し、気圧補正に使用した広島湾柱島付近の気象台、及び測候所を表11に記す。
表11. 広島湾柱島付近の気象台及び測候所位置
気象台及び測候所 |
緯度 |
経度 |
広島地方気象台 |
北緯34度23.7分 |
東経132度27.9分 |
松山気象台 |
北緯33度50.4分 |
東経132度46.8分 |
山口測候所 |
北緯34度09.4分 |
東経131度27.5分 |
宇和島測候所 |
北緯33度13.4分 |
東経132度33.3分 |
験潮器設置地点の海面気圧を算出するのに用いた広島、松山、山口、宇和島の海面気圧データを時系列で表現したものを図26に示す。これらのデータから推定した験潮器設置地点における海面気圧を図27に示す。
これらの結果をもとに作成した気圧補正後の柱島南方の潮汐観測結果を表12に示す。
b)調和解析
大気圧補正を施した柱島の潮汐観測データについて、調和解析を実施した。計算手法は、1ヶ月T.I.法である。
柱島の「潮汐1ヶ月調和分解成果」を表13に示す。
調和解析結果の定数を用いて観測期間の推算を行い再現性の検証を実施した。
潮汐データの経時変化及び推定残差を図28に示す。
潮汐データは、機器設置深度が15mであるので、潮位基準面を水位計0位+13mとして表現した。
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図26. 広島湾柱島近傍の気象庁各観測所における毎正時の海面気圧
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図27. 広島湾柱島南方の験潮器設置位置における10分間隔の推定海面気圧
表12. 広島湾柱島南方海域における海底設置型験潮器の潮汐解析結果
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図28. 潮汐データの経時変化及び推定残差
表13. 柱島の「潮汐1ヶ月調和分解成果」
|
海域: |
広島湾 柱島南方 |
|
|
緯度: |
33°53’32"N |
|
|
経度: |
132°24’16"E |
|
|
観測機器: |
海底設置型験潮器 |
|
|
観測期間: |
平成13年10月9日〜11月9日 |
|
|
基準時: |
-9.0時 |
|
|
基準面: |
水位計0位 |
|
|
計算手法: |
1ヶ月 T.I. 法 |
|
分潮 |
振幅(cm) |
遅角(°) |
Mm |
7.6 |
28.5 |
MSf |
4.5 |
258.0 |
Q1 |
4.4 |
177.6 |
O1 |
21.5 |
191.7 |
M1 |
0.8 |
223.6 |
K1 |
31.4 |
217.0 |
J1 |
2.9 |
261.6 |
OO1 |
1.0 |
356.5 |
P1 |
10.4 |
217.0 |
μ2 |
0.9 |
109.2 |
N2 |
17.0 |
261.3 |
ν2 |
3.3 |
261.3 |
M2 |
91.3 |
276.6 |
L2 |
4.3 |
341.5 |
S2 |
37.4 |
304.0 |
K2 |
10.2 |
304.0 |
2SM2 |
0.8 |
205.8 |
MO3 |
0.1 |
137.6 |
M3 |
0.3 |
357.7 |
MK3 |
0.1 |
182.3 |
MN4 |
0.3 |
3.6 |
M4 |
0.9 |
57.7 |
SM4 |
0.2 |
39.1 |
MS4 |
0.8 |
76.3 |
2MN6 |
0.4 |
116.2 |
M6 |
1.2 |
149.1 |
MSN6 |
0.5 |
186.1 |
2MS6 |
1.7 |
151.0 |
2SM6 |
0.3 |
170.1 |
A0 |
204.8 |
  |
表14. 海底設置型験潮器と広島湾柱島南方の験潮所との潮汐調和定数の比較
  |
柱島南方 (験潮器 データ) |
土居 |
情島 |
宇和間 |
大浦 |
緯度 経度 |
33° 53.32’N 132°24.16’E |
33°55’N 132°18’E |
33°57’N 132°28’E |
33°58’N 132°35’E |
33°59’N 132°38’E |
  |
振幅(cm) |
遅角(°) |
振幅(cm) |
遅角(°) |
振幅(cm) |
遅角(°) |
振幅(cm) |
遅角(°) |
振幅(cm) |
遅角(°) |
M2 |
91.3 |
276.6 |
92.0 |
277.0 |
98.0 |
265.0 |
85.0 |
271.0 |
97.0 |
272.0 |
S2 |
37.4 |
304.0 |
39.0 |
307.0 |
37.0 |
292.0 |
38.0 |
294.0 |
38.0 |
300.0 |
K1 |
31.4 |
217.0 |
29.0 |
219.0 |
34.0 |
216.0 |
31.0 |
212.0 |
31.0 |
211.0 |
O1 |
21.5 |
191.7 |
20.0 |
198.0 |
23.0 |
187.0 |
22.0 |
196.0 |
24.0 |
192.0 |
Hm+Hs(cm) |
128.7 |
131 |
135 |
123 |
135 |
H'+Ho(cm) |
52.9 |
49 |
57 |
53 |
55 |
Hm+Hs+H'+Ho(cm) |
181.6 |
180 |
192 |
176 |
190 |
H'+Ho/Hm+Hs |
0.41 |
0.37 |
0.42 |
0.43 |
0.41 |
Ks-Km(°) |
27.4 |
30 |
27 |
23 |
28 |
K'-Ko(°) |
25.3 |
21 |
29 |
16 |
19 |
(3)基本水準面の算出
基本水準面は、第六管区海上保安本部水路部所管の広島験潮所を基準験潮所とし、平均水面及びZ0等のデータの比較により決定した。基準験潮所の最近5ヵ年の平均水面を、表15に示す。
表15. 広島基準験潮所の最近5カ年の平均水面(単位:cm)
観測年 |
1996 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
5ヵ年の平均値 |
年平均値 |
316.7 |
322.1 |
325.5 |
327.4 |
320.4 |
322.4 |
験潮器が測定した一ヶ月間の平均水面及び、その期間の基準験潮所による平均水面を表16に示す。
表16. 基準験潮所を基準とした短期平均水面
海域 |
広島湾柱島南方 |
験潮所 |
広島基準験潮所 |
験潮器 |
期間 |
自:平成13年10月9日
至:平成13年11月9日 |
取得日数 |
32日間 |
短期平均水面 |
334.1cm |
205.4cm |
広島湾柱島南方海域における基本水準面を、下記の式により算出した。
A'0=A'1+(A0-A1)
=205.4+(322.4-334.1)=193.6
DL=A'0-Z0
=193.6-190.0=3.6cm (Z0:書誌第741号による)
従って、験潮器設置位置の基本水準面はDL=3.6cmとなった。
なお柱島の精密Z0の値は表14より181.6cmである。
これによるDLはDL=12.0cmである。