(2)平均水面高モデルのジオイドモデルとの整合性
基本水準標のGPS測量から、瀬戸内海の平均水面高モデルを作成したが、平均水面は、ほぼジオイドと一致するものであり、ジオイドとの差の分布からモデルの信頼性を検討することができる。
国土地理院は、水準測量によりジオイド面を基準として日本各地の標高を求めている。標高原点は東京の三宅坂にある水準原点で、東京湾の平均水面からの高さが24.41 4メートルと決められた。したがって、標高の基準は東京湾平均水面を重力バランスするように日本列島全体にしきのばした面で、これが日本の標高基準となるジオイド面である。もしこの面と各地の平均水面が同じであるとすると、平均水面は標高ゼロの面、すなわちジオイド面と一致する。
図23は、水準測量の結果から求めた各海域の平均水面の標高基準からの高さである。もちろん、東京湾ではほぼゼロであるが、一般に日本列島ではプラスの値になり特に、日本海側ではプラス20cm程度になっている。これは、黒潮の影響で太平洋側の水面が、ジオイドより下がっている影響と見られる。
瀬戸内海は、やはり標高基準のジオイド面より多少実際の平均水面が高いプラスの傾向で、瀬戸内海の北側、山陽地方で+15cm〜+20cm、四国側で+10cm〜+15cmと見られている。この程度は、ジオイドと平均水面がずれる可能性はある。
本年度に作成した平均水面モデルを図24に示す国土地理院のジオイドモデルJGEIOD96と比較すると、実際に北よりの山陽地方で平均水面がジオイドよりも高く、また南の四国の方が、低いという傾向がある。ところが、今回の計算結果では全体として平均的に60cm程度、平均水面がジオイド面より高くなっており、この原因は、現在、調査中である。
図23. 東京湾平均水面を基準面とする標高基準に対する各地の海面高の分布。HAYASHI(1969)。
図24. 日本のジオイド(Jgeoid96)の楕円体高の分布。黒田ほか(1997)