(3)C地区(木浜)
C地区のヨシ茎個体総数は856本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で67.2本/m2であった。平均形状は、茎高が156.4cm、草丈が182.7cm、茎径が6.4mmであった。C地区の特徴は、草丈が小さいことであり、全地区総平均に比べ20cmほど小さい。一方、茎径は総平均より0.4mm太い。
1m2あたりの平均湿重量は1522g、乾重量は732gであり概ね総平均程度、ヨシ1本あたりの平均湿重量は21.0g、乾重量は9.3gであり総平均を下回る値であった。
図3.4.17より、各測線とも平均草丈が低いが、茎密度は高いことが分かる。C地区はヨシが生育する地盤高が低いことが特徴である。C−1測線は、消波柵の切れ目にあたり、現地観察によれば植栽群落としては比較的良好な群落を形成しているように見られた。C−2測線は高密度にヨシが生育していたが、消波柵の影響からか水の流れがなく、スズメノヒエが進出していた。C−3測線は半島先端部に位置し、水流もあり沖域まで良好なヨシ群落が形成されていた。
図3.4.17 C地区のヨシの形状特性(茎密度と草丈)
表3.4.6にはC地区における測線別の地形・土質の概況を示した。
表3.4.5 C地区における測線別のヨシ平均形状特性
地区・測線 |
コドラート数 |
ヨシ茎個体数
(本) |
ヨシ平均茎個体数密度
(本/m2) |
ヨシ平均茎高
(cm) |
ヨシ平均草丈
(cm) |
ヨシ平均茎径
(mm) |
ヨシ湿重量 (g) |
ヨシ乾重量 (g) |
設置総数 |
ヨシ存在点数 |
1m2
あたり |
1本
あたり |
1m2
あたり |
1本
あたり |
C地区 |
C-1 |
14 |
3 |
164 |
54.7
(54.7) |
168.9 |
194.8 |
5.2 |
1028 |
15.3 |
554 |
8.0 |
C-2 |
15 |
5 |
334 |
85.4
(95.4) |
157.8 |
187.3 |
7.3 |
2382 |
27.3 |
1256 |
12.8 |
C-3 |
19 |
11 |
358 |
62.3
(71.6) |
149.4 |
172.9 |
6.2 |
1265 |
19.8 |
542 |
8.1 |
C地区全体 |
48 |
19 |
856 |
67.2
(74.4) |
156.4 |
182.7 |
6.4 |
1522 |
21.0 |
732 |
9.3 |
(注)ヨシ平均茎個体数密度の上段の数値は、ヨシ存在コドラートの個体数密度の算術平均値。
下段( )内の数値は、個体総数を測線または地区のヨシ存在コドラート総面積で除して求めた値。
表3.4.6 C地区における測線別の湖底地形及び土質の概況
地 点 |
C-1 |
C-2 |
C-3 |
湖底 地形 |
縦断面形状 |
平坦面 (24m地点)
→崖地形 (24〜26m地点)
→緩斜面 (26m地点〜) |
平坦面
(29.5m地点の柵まで)
|
凸形凹形複合斜面
(36m地点に微高地) |
傾斜変換点 |
遷急点 (24m地点)
遷緩点 (26m地点) |
− |
− |
勾配 (度) |
概ね水平→8.5→1.0 |
概ね水平 |
概ね水平 |
土質 |
表 層 |
礫混じり砂、砂 |
砂質シルト |
砂質シルト、砂 |
下 層 |
砂、砂質シルト |
砂、砂質シルト |
砂、砂質シルト、シルト |
測線C−1 守山市木浜
淡海財団植栽群落(消波なし…消波柵の切れ目)
ヨシの形状特性等
ヨシ茎個体総数は164本であり、平均茎個体数密度はコドラート平均で54.7本/m2であった。平均形状は、茎高が168.9cm、草丈が194.8cm、茎径が5.2mmで、草丈、茎径の小さいヨシが高密度で生育していた。1m2あたりの平均湿重量は1028g、乾重量は554g、ヨシ1本あたりの平均湿重量は15.3g、乾重量は8.0gであり、全地区総平均(湿重量1506g/m2、29.9g/本、乾重量665g/m2、12.7g/本)を大きく下回った。測線の断面変化では、基点付近から距離25mの急深となるあたりまでヨシが生育したが、ヨシのほとんど存在しない空洞区間も認められた。
植生の概況
岸は石畳であり、シロネ・アメリカセンダングサ・アレチウリ等が繁茂していた。岸から沖へ向けて、チクゴスズメノヒエ、ヨシ優占区間と続くが、他のルートに比較してヨシの密度は一定していない状況にあった。また、ヨシ優占区間においてもチクゴスズメノヒエが群落の下層で出現する場所が多く見られた。ヨシ群落内の混生種はチクゴスズメノヒエの他は少なかった。
地形・土質の概況
基点杭から4.4mまでは石畳である。汀線は西を向いており、湖底地形の縦断面形状は、24mまではほぼ平坦面、24m〜26m間に崖地形、それより沖合は緩斜面であった。
遷急点は24m付近にあり、この点を境にして湖底の勾配はほぼ水平→8.5°に変化した。また、遷緩点は26m付近にあり、湖底の勾配は8.5°→1.0°に変化した。
湖底堆積物の土質は、24mまでの平坦面の表層は「砂+礫」、下層は「砂」「砂+シルト」であり、それより沖合は「砂+シルト」であった。
湖底堆積物の硬さは、24mまでの平坦面の「砂+礫」層では「硬い」、「砂」層では「硬い」、「砂+シルト」層では「中位の」であり、それより沖合「砂+シルト」層では「軟らかい〜中位の」であった。平坦面の表層の「砂+礫」層は、層厚がほぼ均等で約0.2mであった。
8.8m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.10〜0.30m、土質「砂+礫」、硬さ「硬い」であり、18.0m地点において確認されたヨシの根域は、深度0.05〜0.20m、土質「砂+礫」、硬さ「硬い」であった。
底質・粒度の概況
ヨシ帯内では陸から沖に向けて、強熱減量と全窒素において若干の減少傾向がみられ、IL/N比がほぼ一定の分布を示した。このことより、本測線では沖側において有機物の供給速度が若干多く、無機化速度が若干速いことが示唆された。全リンは沖に向けてわずかに増加する傾向がみられ、本測線の底質がリン酸の難溶化※)を生じやすい可能性(FeやAlを多量に含み、pHが酸性やアルカリ性に傾きやすいこと)が示唆された。また、酸化還元電位(ORP)からみる底質の状態は、沖に向けて低下する傾向(陸側+83mV、沖側−52mV)であったが、硫化物は沖側が低く、継続的に嫌気的になるような環境ではないと考えられた。また、粒度分布は陸〜沖間の差異は明確では無かった。群落外沖合の地点における化学的性状は、ヨシ帯内より強熱減量、全窒素及び全リンが大きい値を示しており、有機物の堆積が進んでいる状況であった。また、粒度分布では、ヨシ帯内より粒径が小さく、0.25mm未満の粒径により約86%が構成されており、両者に共通する粒径範囲がほとんど見られなかった。このことにより、ヨシ帯内、外の底質が全く異なる由来を持つ(おそらくはヨシ帯内に覆砂された)可能性が考えられた。
本測線の底質は、ヨシ帯内では陸側から沖に向けて有機物が蓄積しやすい環境であり、沖合ではヨシ帯より多くの有機物を含み、ヨシ帯内とは性質が大きく異なる底質であった。
※リン酸の難溶化
土壌に強く吸着される陰イオンとして、リン酸(H2PO4-、HPO42-)、フッ素(F-)、ヒ酸(H2AsO4-)が挙げられる。リン酸イオンはALやFeと強く化学的に結合する性質を持ち、酸性の土壌ではALやFeは活性となり、リン酸イオンと種種の段階の強さで結合するが、最終的には次式(略)の様に反応して、バリサイト(variscite、AL(OH)2H2PO4)とストレンガイト(strengite、Fe(OH)2H2PO4)を生成する方向に向かう。バリサイトとストレンガイトの溶解土石はそれぞれ10-28と10-32.3で非常に難溶性である。(中略)塩基性の土壌では、リン酸は遊離の炭酸石灰と反応して、リン酸三石灰(Ca3(PO4)2)やアパタイト類の様な難溶性の塩を生成する。(土壌学(1997)、松田敬一郎、文永堂出版、ISBN 4−8300−4031−9)
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図3.4.18 C−1測線の植生・地質断面及びヨシの形状特性
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図3.4.19 C−1測線の底質及び粒度
〈備考〉横軸は基点からの距離(m)