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はじめに
 
 私たちは21世紀を迎えました。
 
 科学と戦争の世紀と言われた20世紀が幕を閉じ、新たな世紀が幕をあけました。しかし、そこには必ずしも輝かしい展望が広がってはいません。人口爆発、環境破壊、資源枯渇、食料問題、差別、紛争、難民、テロリズム…。様々な不安を抱え、我々は新たな世紀を迎えたのです。
 
 今回、このフェローシップに参加することができた我々は、そんな現実をわずかながら垣間見ることができました。誰がこの不安の世紀を担っていくのでしょうか?紛れもない我々の世代です。我々がこの不安に向かい、そして切り拓いていかなければなりません。我々に何ができるのでしょうか?これらの諸問題を目の前にし、果たしてどこから手をつけてゆけばいいのでしょうか?また一体どれほどの時間が残されているのでしょうか。もしかすると既に手遅れなのかもしれません。そんな絶望すら胸をよぎります。そして、否応なく時間は過ぎていきます。
 
 我々は今回のフェローシップを通して、まず現実と向き合う勇気を学びました。今、目の前にある問題からはじめることの大切さを学んだのです。そして、我々はこのフェローシップを通して、日本、フィリピン、そして世界の現実、諸問題、人々の営み、さらに自分自身を再認識することができました。
 
 この報告書は、我々が目にし肌で感じた現実、そして、そこからはじめた我々なりの考えが記されています。この報告書に目を通される方々のなかには、その文章に見られる未熟な思考や拙い解釈に落胆される方々もいるかもしれません。しかし、我々はこのフェローシップでの原体験について、素直に語ることからはじめることにしました。そして、各々はこの貴重な体験をもとに各々の道を進んでいくことを誓い、別れました。
 
 一人一人の力は悲しいほど小さいかもしれません。ましてや確固たる社会的な足場を持たない我々学生にとっては尚更です。しかし、全世界で既に活動されている諸先輩方や我々の世代、また、これから歩みはじめられる方々一人一人の挑戦が新たな時代を切り拓いていくことを堅く信じています。
 
第8回国際保健協力フィールドワークフェローシップ
チームリーダー 琉球大学医学部 豊川 貴生








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