1 インターネット・ショッピングモール
インターネット・ショッピングモールの本質は、ダイレクト流通―つまり生産者に直接発注でき、生産者から直送される点にある。「顔」の見える取引が可能であり、モノを介した交流によって「ふるさと市民」を確保するには最適な事業のひとつといえよう。
(1) どの様なモールをつくるか
現在、すでに数多くのインターネット・ショッピングモールがある。特に「楽天」は、契約企業数8,300、総商品数179万点(平成14年2月当初)と一人勝ちの状況にある。発注はインターネットを利用できるが、物の移動は必要であり、この物流コストがネックになって、失敗する例が多い。
モールを訪れる主な理由と成功事例をみると、図表4−1のとおりである。
図表4−1 インターネット・ショッピングモールヘのアクセスの理由
  |
理由 |
回答率 |
1 |
面白そうなものが売っていないか見にいく |
49.0% |
2 |
プレゼント、特別バーゲンなど得になりそうな情報をさがすため |
42.4% |
3 |
特定の商品について情報を得るため |
37.4% |
暇つぶし・気分転換をするため |
37.4% |
資料:gooによるアンケート調査(平成11年5月)
図表4−2 インターネット・ショッピングモールの成功事例
物流コストとの関係 |
成功事例の取扱品 |
考えられるもの |
払ってでも手に入れたいもの |
特産品 |
趣味の品物 |
払うことが前提のもの |
ギフト用品
(贈り物) |
家具や家電 |
ほかのコスト削減効果で削減できるもの |
パソコン
(倉庫費削減) |
ブランド製品 |
資料:図表4−1と同様。
ナショナルブランドは、マスメディアで宣伝(放送)し、知名度を獲得している。インターネットはこの「1:N」という放送機能をもっており、常時放送し続けることができる。うまく使えば、知名度獲得―消費拡大につなげられるのである。特産品はナショナルブランドではなく、消費者はどこに何があるかさえ知らない場合が多い。そして、物流コストを払っても手に入れてよいと考えているもののひとつである。特産品のこうした性格を考えるならば、きりたんぽや、りんご、地酒、しそ巻き大根、しそ巻きあんずなど鹿角の特産品を販売するモールが、「ふるさと市民」に最適な鹿角のインターネット・ショッピングモールだといえよう。
(2) どのようにモールをつくるか―モールづくりの基本戦略
ア 特産品の開発
例えば鹿角市の漬物が得意な人の漬物でさえ、特産品インターネット・モールでは個人ブランドとなりえる。しかし、<○○さんの△△漬け>や<幻の□□>と呼ばれるくらい、他地域と差別化することが必要である。チャレンジショップや工房などでの開発・販売も含め、売れる特産品開発がまずもって必要である。場合によっては、このモールでしか販売しないことを付加価値とすることも検討すべきである。
イ 集積を図る―多店舗化
特産品はナショナルブランドではないだけに、単独の産品では情報発信力は小さい。また消費者は特産品を知らないのであり、鹿角のモールにいけば、手に入れたい特産品がみつかるということが決定的に重要になる。つまり、特産品モールは店舗集積が必要であり、多店舗の出店が望まれる。
しかしながら、現状では初めから市内で多数の店舗の出店を期待するのは難しい。したがって、鹿角でより多くの店舗を確保する(この点からも鹿角での特産品開発が必要)ということだけにとどまらず、全国の特産品店舗の出店を取り込んでいくことが必要であるといえよう。
ウ 信用あるモール
全国から店舗を集めるには、いうまでもなく売れるということが必要である。一方、消費者からみれば、売っている商品そのものに価値があるかどうかわからないなかで、あえてリスクを犯して買うということになる。総合的なサイトの信用力が、出店・購買を決めるといって過言ではない。「厳選商品」「ニーズにあった商品」、モールの中立性・公益性(誇大な広告をしないなど)の確保などが必要である。
エ 新鮮なモール
何度もモールを訪れてもらうには、常に新しい情報に更新し、訪れる度に感激・驚き・興味をもってもらうことが重要である。これには、出店者自らがインターネット・ショップの情報を更新する仕組みにすることが必要になる。
オ 誰もが参加できる交流モール
多店舗化には、比較的簡単にモールに参加できることが必要である。特に、「ふるさと」との絆づくりにとって、一般の市民や農家がその人、家なりのこだわりの特産品を販売することが大切であろう。出身者には、なつかしい思い出につながり、鹿角を知らない人に対しては、モノからヒトヘの交流につながる。
こうした交流モールとするためには、参加への障壁を低くすること―具体的には参加費用やホームページの作成・更新技術の習得など―が必要である。
なお、モールの信用力維持には、会費制はとらない代わりに出店基準を厳しくするという選択もあろう(会費をとるからにはどのような店も出店させざるを得ない)。
(3) モールの活用法
ア ふるさと市民確保の場
モール上に「ふるさと市民」向けの特産品を販売する店舗を設け、インターネットで産品送付などの注文、つまり「ふるさと市民」加入の手続きの場として活用する。
上記の「ふるさと産品」以外の特産品を購入した人、とくに鹿角の特産品を購入した人も、「ふるさと市民」に取り込む場としていく。情報提供、「ふるさと産品」の購入といった受動的な「ふるさと市民」から、まちづくりに参画する能動的な「ふるさと市民」へと、継続した働きかけを行うきっかけの場として活用する。
イ 特産品開発のヒントを獲得する場
特産品開発・改良には消費者の意見も参考になる。購入者の意見、提案などを受ける窓口を各店舗でもつことで、特産品開発・改良に役立たせる。
ウ 配送つき市民の日常品購入の場
モール上に別途、市民向け目常生活品のインターネット・ショップを設ける。チラシ広告がわりの特売情報などの載ったネット広告を流し、これに基づいてネットで注文すると配送まで行うシステムを構築し、運用する。高齢者になると買い物が重労働となる。インターネットを自由自在に扱える多くの高齢者が登場すると思われる将来を見通せば、この形態のショップの成立可能性は高いと考えられる。
宇都宮市のA社の例―空き店舗活用型
A社は、商店街の負担で空き店舗を提供してもらい、配送センターとして活用する。配送センターには社員が常駐し、近隣住民から電話・ファクシミリなどで注文を受ける。商店から注文のあった商品をセンターに届けてもらい、毎日1回提携する物流業者に商品を引き渡し、顧客に届ける仕組み。
料金は1回の利用につき、商店、買い物客双方から100円徴収する。当面サービスの対象地域は商店街から半径2kmの地域に限る。なお、A社は空き店舗でA社が取り扱う商品を販売するほか、パソコン教室を開催して収益を確保する。
―日本経済新聞「北関東版」2001.3.7―
図表4−3 鹿角におけるインターネット・ショッピングモールのイメージ