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序章 研究の概要
1 研究の背景と目的
 鹿角市は、昭和47(1972)年に4町村(花輪町、十和田町、尾去沢町、八幡平村)が合併し、誕生した。
 地理的には、北東北3県のほぼ中央となる秋田県の北東部に位置し、南北に十和田八幡平国立公園を抱え、奥羽山脈の峰々と米代川に代表される清流が織りなす四季の風情が豊かな都市である。また、市域は東西に20.1km、南北に52.3kmに達し、総面積707.34km2と県内第1位という広さを有している。
 一方、鹿角市の人口動向をみると、市誕生前の昭和30(1955)年の60,475人をピークに減少を続け、平成12(2000)年には39,144人にまで減少しており、依然としてその傾向が続いている状況にある。また、若年層を中心に雇用機会の絶対的な不足や高等教育機関への進学者の増加などにより、市外への流出が著しくなっている。この若年層の流出は、出生率の低下、高齢社会の到来と相まって、高齢者率の上昇を進める要因となっている。
 さらに産業面では、十和田八幡平国立公園をはじめ自然景勝地、史跡、温泉観光施設など豊富な観光資源に恵まれてはいるものの、観光入り込み客数は落ち込んでいる。また、基幹産業である農林業の低迷、零細な地場企業が多いことから、地域経済の活力低下が懸念されている。
 このような状況の下、鹿角市では、市民・地域経済に刺激を与えるため、地域間交流を促進することを目的に平成10(1998)年末以来、東京事務所を拠点に「ふるさと大使」制度(平成14(2002)年2月末現在21名を委嘱)を運用してきた。しかし、この制度は、理念・概念にとどまり、外部からの発想やアイデアを十分に活かしきれていないという問題点を抱えたまま今日に至っている。
 上記のような背景のもと、鹿角市では今、観光・レクリエーション・農業などの地場産業やスポーツ、芸術・文化・教育、福祉・保健、環境・景観その他地域づくりに関わる様々な分野について、域外人材のネットワークの拠点を地域に構築するとともに、その機能を効果的に活用することにより、総合的かつ均衡ある地域発展を確実に進めうる基盤を築くことが求められている。
 本研究の目的は、鹿角市民が目指す「経済発展と風格ある地域づくり」に向けて、市民及び地域産業の活力増進の方途を探ることにある。そのため、交流対象者や市民の地域づくりへの参加意向を把握するとともに、域内外の人材の知恵や技術を取り入れ、活用するための人材ネットワークの構築と運用に関し、地域実態や先行事例などを踏まえつつ、鹿角市及び市民との連携によって、具体策を提示した。








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