日本財団 図書館


2.12 計器及び保護装置
 舶用ディーゼル機関には安全法により装備しなければならない各種の保護警報装置の他に、機関取扱上、又は保守点検などの必要性から設けられるもの、特に遠隔操縦による場合は機関から離れた場所で運転操作が行われるために、機関の運転状況を表示する計器盤や各種の保護警報装置が必要となる。その他客先要求により設置するものなどがある。以下に一般的に用いられている計器や保護装置などに付き説明する。
 
1) 機関保護装置
(1) 燃料噴射制限装置
 機関の最大許容出力以上に過負荷運転が出来ぬように燃料の最大噴射量を制限するものであり、メーカで工場運転時に定められたスペックで封印する。
(2) 無負荷最大及び最低回転速度
 機関の工場運転時に定められたスペックで封印する。
(注) 最大噴射量と最大回転速度の封印は、漁船用機関の場合は、水産庁に届け済みの封印要領に基づき、工場運転時に実施されており、修理時現地で止むを得ず封印を解除した場合は、再封印者が責任を持って現地にて再封印を実施できるような制度が設けられている。
 なお、最低回転速度の封印を実施している機関もあるが水産庁では義務付けていない。
(3) 非常停止装置
 25m以上の船の主機に遠隔操縦装置を設置する場合は、誤って手を触れても作動しない構造の非常停止装置を設けることが義務付けられている。一般には押しボタン式が採用されており、ピン又はキャップをはずしてボタンを押すと、電磁スイッチが作動して燃料を無噴射にして機関を停止させる構造となっている。
(4) 過速度スイッチと危急停止装置
 船舶の主機関には連続最大回転数(定格回転数)の1.2倍を越える速度上昇を防止するため、過速度調速機を備えるよう義務付けられている。
 通常は定格回転の120%を越える回転速度を検知できるマイクロスイッチを設けた過速度スイッチをクランク軸より、ベルト駆動などで廻すようにしており、それ以上に回転数が異常上昇すると、マイクロスイッチが作動して燃料ラックを電磁弁により強制的に作動させ、燃料を無噴射にして機関を停止させる危急停止装置と組み合わせて用いられ、過回転による事故を防止している。
 危急停止用電磁弁は、潤滑油圧力・冷却水温度上昇の各スイッチ等と連動させ、潤滑油圧力が運転に必要な最低限以下になった時や、冷却水切れによる異常な冷却水温度上昇時に作動させ、機関を危急停止して焼き付き事故を防止するようにしたものもある。
 
2) 警報装置
 機関の運転取扱者や船舶の操縦者に、機関の異常状態を警報ランプやブザーをもって知らしめる装置であり、一般に次のようなものが装備されており、これらの警報が作動したときには直ちに適切な処置を行い、機関運転の安全を確保しなければならないので、殆どのものは操縦盤、制御盤、計器盤等にまとめて配置されている。
(1) 過負荷警報
 通常は定格出力の110%以上で警報するようにセットされた過負荷警報を設けるよう義務付けられているが、殆どの場合は、110%過負荷で燃料噴射量を封印しているために、封印でこれに替えているのが普通である。
 過負荷警報は、一般にコントロールラックが作動するリンク機構にマイクロスイッチを設け、リンクがそれ以上に燃料が増加方向に動くとスイッチが作動して警報ブザーを鳴らし過負荷運転を警告する。
(2) 潤滑油圧力警報
 一般にLO警報と云われるものであり、機関や油圧クラッチの潤滑油圧力が最下限以下に低下すると圧力スイッチが作動し、ブザー又はランプを点灯し、焼き付きの危険を警報する装置である。焼き付きを生ずる直前の圧力でセットされる。
 2・226図は機関油圧低下検知用の油圧スイッチでスイッチの内部にスプリングが圧縮されて入っており、エンジンの停止時や機関油圧が規定以下に下がるとスプリングにより接点が閉じ、油圧低下の表示をする。運転を始めて機関油圧が規定値以上になると、油圧によりスプリングが圧縮され、接点が開いて油圧低下の表示は消える。油圧の感知は一般にメインギャラリにて行う。
2・226図 機関油圧スイッチ
(3) 冷却水温度警報
 一般にCW警報と云われ、機関の冷却水不足や水切れなどによる機関のオーバヒートを警報するものであり、一般に冷却水集合管の出口付近に水温計のセンサを設け、オーバヒートする水温以上に温度が異常上昇したときに水温スイッチが作動し、ランプ又はブザーにより警報する。2・227図は冷却水温度スイッチで、スイッチ内部にワックスが封入されており、このワックスは冷却水温度がある温度以上になると膨張する性質を有している。この性質を利用してスイッチの接点を閉じることにより、冷却水温度の異常を知らせるものである。
2・227図 冷却水温度スイッチ
(4) 潤滑油こし器目詰まり警報
 潤滑油こし器エレメントが目詰まりを生じバイパス回路から汚れた潤滑油が供給された時に警報ランプが点灯して、エレメントの交換を知らせる警報である。殆どの場合入口、出口の差圧が設定圧力以上になったとき、又はバイパス弁が解放されたときに作動するようにしている。
 2・228図は潤滑油こし器目詰まりスイッチの一例で、スイッチ内部にスプリングが内蔵されており、差圧が規定値以上になるとスプリングが圧縮されて接点が閉じ、潤滑油フィルタの目詰まりを表示する。
2・228図 潤滑油こし器目詰まりスイッチ
(5) 充電警報
 通常の運転時は、オルタネータ等の発電によりバッテリに充電しているが、何れかの故障により充電がなされていない時に充電警報ランプが点灯し充電系統の故障を警告する。
(6) 操作圧力警報
 リモコンの油圧、空気圧力の低下や、電源喪失の他、始動用空気圧力低下などを警報するものでランプやブザーにより操縦者に警告する。
(7) 冷却水水位低下警報
 清水冷却エンジンで、タンクの水位が低下したときなどに警報を発し、機関の焼き付きを防止するものである。スイッチは2・229図に示すように、リードスイッチ部と磁石を内蔵したフロートから成り、フロートの位置によりリードスイッチの接点を開閉して冷却水の水位を検知する。
 通常は清水タンクに装備されるが、このセンサのフロートをウエイトに変更すれば、海水の流量センサとしても使用できる。
2・229図 冷却水水位低下スイッチの構造図
 








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION