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2. プロペラ
 舶用プロペラの場合、プロペラと言えば一般にスクリュプロペラを指す。舶用推進器には、スクリュプロペラ、ウォータジェット推進装置、フォイトシュナイダプロペラ、外輪車などがある。
 プロペラは構造が簡単でしかも比較的効率が高いことからほとんどの船の推進に使用されている。
 プロペラには固定ピッチプロペラと可変ピッチプロペラとがあるが、ここでは固定ピッチプロペラについて述べる。
2.1 プロペラの名称および用語
 
 プロペラの各部の名称を3・35図に示す。本図は船尾側から船首側へ見て船の前進時右回転するプロペラを示し、プロペラボスとプロペラ軸とのはめあい部にキーを用いて取付けるキー付きプロペラである。
 プロペラとプロペラ軸とのはめあい部にキーを用いずにプロペラを押込み、コーンパート部の摩擦力によって結合する構造のキーレスプロペラもある。
 
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3・35図 プロペラ各部の名称
1) プロペラ直径
 プロペラ直径とは、プロペラが1回転した時、羽根の先端が描く円の直径である。
 実際のプロペラ直径を計測するには1つの羽根の軸中心から羽根最先端の長さRを計測し、2R=Dをもって直径とする。3・36図に示す。
 
3・36図 プロペラ直径
3・37図 ボルトナットピッチ
2) プロペラピッチ
 3・37図に示すようにボルトとナットの場合は、ボルトを固定しナットを1回転させたとき、ナットの進んだ距離がピッチである。プロペラは水中で回転するものであるから、このようにはっきりとはわからない。しかし、もしプロペラが流体中で回転する代りに、固体中で回転したとすれば、1回転する毎に進むと考えられる距離をやはりピッチと名付ける。3・38図に示すようにプロペラピッチはプロペラ羽根のねじれ角度によってプロペラの1回転で進む理論上のピッチである。普通のボルトのねじ山は1重ねじであるがプロペラの場合3枚羽根は3重ねじ、4枚羽根は4重ねじに相当する。
 3・39図に示すようにプロペラのピッチの半径方向の分布には、一定ピッチ分布、逓減ピッチ分布、逓増ピッチ分布の3種類がある。一定ピッチ分布は、羽根根元から羽根先端までのピッチが一定である。逓減ピッチ分布は羽根根元から羽根先端にいくにつれて、ピッチが小さくなっているもので、逓増ピッチ分布は逆に羽根根元から羽根先端にいくにつれてピッチが大きくなっているものである。逓減ピッチ分布および逓増ピッチ分布のプロペラの場合のピッチは代表半径位置の0.7R(R=プロペラ半径)部分のピッチで一般に表示する。
 
3・38図 プロペラピッチ
3・39図 プロペラピッチ
3) 羽根前進面および羽根後進面
 プロペラを船に装備した場合、その船尾側の羽根の面を前進面(フェース)といい、プロペラ羽根の前進時に推力(スラスト)を受ける面である。羽根の後進面とはプロペラ羽根の後進時に推力を受ける面である。この呼び方は反対に考えがちであるからよく注意する必要がある。
 
4) プロペラの面積
 プロペラの面積の術語にはつぎの4種類がある。
(1) 全円面積
 プロペラ羽根の先端が回転して描く円の面積でプロペラ直径をDとすればつぎの通りである。
(2) 投影面積
 投影面積とは3・40図に示すように[2]の方向から見て軸心に垂直な面に投影したプロペラ羽根の面積である。
(3)伸張面積
 伸張面積とは3・40図に示すように[1]の方向から見た羽根の輪郭を1枚の紙の上に平らにおしひろげたときの形状を羽根の伸張形状といい、これがかこむ面積を伸張面積と言う。
(4) 展開面積
 伸縮図で円弧上にある各羽根面を一直線に延ばした状態でのプロペラ羽根の面積を言う。プロペラ形状を表現するのに、通常この展開面積が用いられる。なお、伸張面積と展開面積とはほぼ等しい面積である。
3・40図 伸張図と投影図の関係








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