4) 疲労
「軸受の疲労は、繰り返し荷重の摺動摩擦による」が定説となっている。寿命がつきる場合の軸受の損傷は、この疲労か、「摩耗による機能の漸減」となろう。母材によるひずみの拘束効果は被膜厚さが減少する程、また被膜の弾性率が母材の弾性率に比べて小さい程大きいとされる。
これはホワイトメタルの薄合金化の効果、三層メタルの表面メッキの効果を説明し、さらに通常の疲労キレツの進展が表層部らか内部に至る機構をも示唆する。
疲労は通常、摺動方向直交のキレツが入り、接着面近くで強い側の拘束を受けて平行に移り、となり合うキレツがつながるとモザイク状に脱落するに至る。このキレツの方向は組織の弱い部分を走るのが通常である。
疲労は、応力勾配を少なくしたり、衝撃エネルギを吸収すれば軽減できると思われ、表面メッキによるなじみ効果や、アルミメタルの大きい伸びはこれらに相当するであろう。疲労を起した場合、必らずキレツを伴なうのが外観、組織上の特徴となる。
補・25図 疲労の例
5) ハクリ
軸受の破壊の終局的な段階はハクリである。ハクリは合金が裏金から分離することであるから、疲労も焼付も最終的にはハクリの状況になる。従って、ハクリ状況になっている軸受を観察して、原因が何であるかを調査するとき、三つの場合に当面する。
(1) 疲労が原因でハクリした場合(一部の焼付を含む)。
(2) 焼付が原因でハクリした場合(一部の疲労を含む)。
(3) 軸受の裏金と合金との接着力が弱いためにハクリした場合。
(1)、(2)の場合は、それぞれ疲労、焼付と解釈し、ハクリとしない方が、分類上便利である。
(3)の場合だけがハクリと解釈すると、ハクリは常に軸受事態の品質にだけ要因がある。
補・26図 ハクリの例