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はじめに
 南インドはケララ、タミール、アンドラプラデッシュ、カルナータカの四州を称している。
 インド中央部を縦断するデカン高原の南端から二股の尾のように山脈が延びくだっている。東西ダーツ山脈である。亜大陸が南端に向かって狭まった海岸線とこの山脈に挟まれた地勢が南インドである。東にアラビア海、西にベンガル湾という海洋性と山岳地域をもつ地勢が多様な文化を養っている。
 調査の主たる対象地であるカルナータカ州は、港湾、漁業、農耕、遊牧、山間農業、林業、鉱業と多様な生産背景を擁している。それが、
1. アラビア海沿岸の自然港を中心とした港湾・商業都市の成立
2. 沿岸漁業の発展
3. 山間農業・ココナツ椰子・檳榔樹などインド一の生産力
インド唯一のコーヒー生産、ならびに紅茶、オレンジ、ゴム、香辛料などの栽培
4. 山岳地からの水利による米作農業の向上・砂糖黍、麦、赤米、陸稲、水稲の生産農耕生産を背景とした遊牧(牛・羊)
5. インド香木・白檀、黒檀などの木材とその製品
御影石、大理石などの資源開発
6. 鉄、銀などの地下資源
となって現れている。
 こうした多様な生産様式が、同時に多彩な職能共同体の成立を促し、多義的な社会を形成している。民俗と混交したヒンドゥの思想性を基本としながらイスラム教、キリスト教、ジャイナ教などの共同体を社会の成因として溶解させている。
 海からやってきたキリスト教、あるいは内陸と海の双方からやってきたイスラム共同体、そして北部内陸から降ってきたヒンドゥとの相克と受容などを、文化と思想に辿りつく歴史を介在させつつ考察してみたい。








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