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4. 最近の主なSOLAS条約及びMARPOL73/78条約の改正
(1) 第73回海上安全委員会 (MSC73) (2000年11月27〜12月6日開催)
 
●SOLAS条約附属書第V章の全面改正 (2002年7月1日発効予定)
 
[1] 自動船舶識別装置 (AIS:Automatic Identification System)
  適用: 国際航海に従事する総トン数300トン以上のすべての船舶
      国際航海に従事しない総トン数500トン以上の貨物船及び旅客船 (その大きさは問わない)
 
(a) 2002年7月1日以降に建造される船舶
(b) 2002年7月1日より前に建造された国際航海に従事する船舶については,次による。
(b-1) 旅客船は,2003年7月1日までに備える。
(b-2) タンカーは,2003年7月1日以降の最初のSE検査までに備える。
(b-3) 旅客船及びタンカー以外の総トン数50,000トン以上の船舶は,2004年7月1日までに備える。
(b-4) 旅客船及びタンカー以外の総トン数10,000トン以上50,000トン未満の船舶は,2005年7月1日までに備える。
(b-5) 旅客船及びタンカー以外の総トン数3,000トン以上10,000トン未満の船舶は,2006年7月1日までに備える。
(b-6) 旅客船及びタンカー以外の総トン数300トン以上3,000トン未満の船舶は,2007年7月1日までに備える。
(c) 2002年7月1日以前に建造された国際航海に従事しない船舶は,2008年7月1日までに備える。
 
[2] 航海データ記録装置(VDR:Voyage Data Recorder)
  適用: 国際航海に従事する船舶
 
(a) 2002年7月1日以降に建造される旅客船
(b) 2002年7月1日より前に建造されたロールオンロールオフ旅客船(2002年7月1日以降の初回の検査までに備える。)
(c) 2002年7月1日より前に建造されたロールオンロールオフ旅客船以外の旅客船(2004年1月1日までに備える。)
(d) 2002年7月1日以降に建造される総トン数3000トン以上の船舶(旅客船を除く)
 
●SOLAS条約附属書第II−2章の全面改正(2002年7月1日発効予定)
 
●検査強化プログラム(決議A.744(18))の改正(「ナホトカ号」事故の再発防止対策として我が国が提案した縦強度評価の導入) (2002年7月1日発効予定)
  1997年1月に発生した「ナホトカ号」事故が、船体強度の大幅な低下が原因であったことから、我が国はIMOに対し以下の対策を提案し、世界的に実施されることとなった。
 
・ 板厚測定報告書に「板厚衰耗限度」を記載すること
  (1997年11月採択、1999年7月1日発効)
・ 船体構造の健全性に関するPSCの強化
  (1999年11月に総会決議を採択、即実施)
・ 船齢10年を超えるタンカーの縦強度の健全性の確保
  (2000年11月採択、2002年7月1日発効予定)
  縦強度とは、船舶の船首尾方向(縦方向)に対し、積載される貨物や波の力による曲げの力が掛かった場合の強度であり、改正内容は、長さ130m以上で、船齢10年を超えるタンカーの旗国検査時に船舶の縦強度の評価を要求するというものである。
 
(2) 第46回海洋環境保護委員会(MEPC46)(2001年4月23〜4月27日開催)
 
●MARPOL73/78条約附属書I第13G規則の改正(2002年9月1日発効予定)
(「エリカ号」事故を契機とした現存シングルハルタンカーのフェーズアウト(段階的削減:ダブルハル化)促進に関するMARPOL73/78条約附属書I第13G規則の改正)
 
[1] 対象船舶のカテゴリー
 
・ カテゴリー1 (pre-MARPOL船: EN船): 原油、燃料油、重質デイーゼル油又は潤滑油を貨物として運搬する20,000DWT以上の油タンカー、又は、その他の油を運搬する30,000DWT以上の油タンカーであり、MARPOL条約附属書I第1規則(26)が適用されないタンカー
 
・ カテゴリー2 (MARPOL船: NN船): 原油、燃料油、重質ディーゼル油又は潤滑油を貨物として運搬する20,000DWT以上の油タンカー、又は、その他の油を運搬する30,000DWT以上の油タンカーであり、MARPOL条約附属書I第1規則(26)が適用されるタンカー
 
・ カテゴリー3 (EN船、NN船問わず): 5,000DWT以上、カテゴリー1及び2よりも小さい油タンカー
 
[2] フェーズアウトスケジュール
   各カテゴリーにおけるフェーズアウトのスケジュールは、カテゴリー1は2007年まで、カテゴリー2及び3は原則2015年中の各船舶の引き渡し日までにフェーズアウトされる。スケジュールの詳細は、下記の表に示す。
   ただし、原則は下記の表のスケジュールに従うも、カテゴリー2又は3のタンカーにおいては、船側区画のみ、或いは、二重底区画のみを有する場合は船齢25年まで、現行13G規則における船齢25年以上のpre-MARPOLタンカーに課される分離バラストタンクの防護的配置又はハイドロバランスの要件を満たす場合は2017年又は船齢が25年に達する日のいずれか早い日まで主管庁は使用を認めることができる。
   一方、上記の適用を受けるタンカーに対し、締約国は自国の港、沖合施設に入港することを拒否することができる。
   また、カテゴリー1油タンカーは2005年、カテゴリー2油タンカーは2010年を超えて船舶を使用する場合には、CAS(Condition Assessment Scheme)という新たな検査スキームをフェーズアウトまでの毎回の定期検査及び中間検査時(ESP(検査強化プログラム)と同時)に行う。

カテゴリー 船舶の引し渡し年 フェーズアウト年
カテゴリー1 1973年以前 2003
  1974年及び1975年 2004
  1976年及び1977年 2005注)
  1978年、1979年及び1980年 2006注)
  1981年以降 2007注)
カテゴリー2 1973年以前 2003
  1974年及び1975年 2004
  1976年及び1977年 2005
  1978年及び1979年 2006
  1980年及び1981年 2007
  1982年 2008
  1983年 2009
  1984年 2010注)
  1985年 2011注)
  1986年 2012注)
  1987年 2013注)
  1988年 2014注)
  1989年以降 2015注)
カテゴリー3 1973年以前 2003
  1974年及び1975年 2004
  1976年及び1977年 2005
  1978年及び1979年 2006
  1980年及び1981年 2007
  1982年 2008
  1983年 2009
  1984年 2010
  1985年 2011
  1986年 2012
  1987年 2013
  1988年 2014
  1989年以降 2015
注) CAS (Condition Assessment Scheme)を適用することを条件とする。
 
[3] CAS (Condition Assessment Scheme)
  CASは、SOLAS条約附属書第XI章第2規則で強制される決議A.744(18)で規定される検査強化プログラム(ESP)の実施を確実にし、補完することを目的とし、主として、認定団体(RO)による検査手続き面での強化を図る他、検査の範囲・内容をESPより多少強化しており、最終的には主官庁によるROのCAS検査に対する検証、IOPP証書に添付する文書(Statement of Compliance)発給というスキームになっている。
 
●船舶の防汚塗料の使用による有害影響に関する新条約 (2001年10月開催の外交会議で採択予定)
(TBT(トリブチルスズ)等を含む有機スズ系船底防汚塗料(TBT船底塗料)を2003年1月1日以降船舶に新たに塗布することを禁止し、2008年1月1日以降船舶に塗布されていることを禁止(船体への存在の禁止)するための世界的な法的拘束力のある枠組み(条約)の策定)
 
[1] 検査対象船舶:国際航海に従事する400総トン数以上の船舶
 
[2] TBT塗料の船体からの撤去:
 案1:残存するTBT船底塗料をサンドブラスト等により完全に除去を求める
 案2:シーラーコートによって被覆した上にTBTの入っていない塗料を塗ることを認める
 上記案は、本年10月の外交会議において決定されることとなった。
 
5. 最近のIMOを取り巻く動向
● ソフト要件の重視
● 設備・装置に係る技術基準の機能要件化
● 規則改正時における評価手法(Formal Safety Assessment(FSA))の検討
● 条約規定の遵守の徹底=サブ・スタンダード船の排除方策








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