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3.3.8 タンク底板の孔食発生メカニズム
 鋼材の孔食発生にはいくつかの条件を満たす必要がある。1つは腐食を局在化させるための腐食環境の不均一化であり、もう1つは孔食の成長を維持するための酸化剤の存在である。不均一は、水の局在化、局所的なpHの低下、不完全皮膜の存在等であり、実船調査でも確認されている。不完全皮膜としては、ミルスケール、オイルコートの不均一性や欠陥などが挙げられる。また、孔食成長の駆動力は、イナートガス中のO2,CO2の存在、錆の酸化力、固体S、FeSの偏在、pHの低下が考えられる。これらの孔食発生および成長について推定される因子を図23に示す。
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図23 タンク底板の孔食発生の要因図
また、想定されるCOT底板の孔食発生、成長のメカニズムを図24に模式図的に表わした。
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図24 タンク底板の孔食発生の模式図
 [1] S/HとD/Hタンカーの船型の差
 S/Hではタンク底板上面に骨材が存在し、これが底板部オイルコートの保護性確保に有利となる。一方、D/Hタンカーでは骨材が存在しないため、COWによってタンク底板部が直接洗浄され、オイルコートが薄膜化する。その結果、D/HではS/Hタンカーに比較して、就航直後から孔食発生頻度が高くなるものと結論づけられる。
 また、S/HとD/HタンカーのCOT内部の温度計測結果および数値解析により、原油満載時には、D/H底板は約5〜10℃程度S/Hよりも高温に保持されることが分かった、しかし、その温度差が腐食速度に与える定量的な差異についての結論には至っていない。
 [2] 鋼材種類(TMCP鋼とMS)の差
 D/Hタンカーでの2ヵ年にわたる暴露試験評価では、MSとTMCP鋼の間で大きな差異は認められなかった。また、カソード反応を増大させる固体Sの影響確認の実験室試験、あるいは局部腐食を生起しうる原油上の水の局在化試験においても、MSとTMCP鋼に差異は見られなかった。これらの結果から、タンク底板の孔食に対して、MSとTMCP鋼の耐食性に差がないと結論づけた。








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