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3-4. 沿岸域の開発の抑制と自然環境の回復について積極的に取り組むべきである。

沿岸域における埋め立ては最大限抑制するとともに、臨海部埋め立て地帯の工場跡地、利用の目途が立たない造成地、並びに流域圏における機能を喪失した構築物などについては、極力自然環境への復帰を促すべきである。

 

3-5. 沿岸域管理のサイクル的プロセスに、積極的な市民参加を実現すべきである。

当該沿岸域の地域住民、市民組織などは、沿岸域管理政策の立案、実施、評価、再実施に関して、その全プロセスについて「知る」権利を有しているとの考え方にもとづき、関連する諸情報への実質的なアクセスの権利を保障すべきであり、その全プロセスにおいて、可能な限り「参加」の機会を保障すべきである。

 

3-6. わが国にも「海洋保護区」制度を本格的に導入し、合理的な管理をすべきである。

わが国の沿岸域においては、自然公園法にもとづく海中公園地区が多数指定されており、また自然環境保全法による自然環境保全地域が西表島に1ヶ所指定されている。さらに、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」による生物種の保護制度も存在する。しかしながら、多様な生物が存在し、人類の生存基盤である海洋の生態系を保護するためには、これでは極めて不十分である。これらの諸制度をさらに一歩進めて、生息地として重要な海域、絶滅危惧種が生息する海域、貴重なサンゴ礁の存在する海域、湿地帯、干潟など適当な保護と管理を施す必要があると考えられる海域を「海洋保護区」として指定し、必要に応じて保護が必要な区域と利用する区域を区分するゾーニングなどの手法を用いて、合理的な管理を推進すべきである。

 

3-7. ミティゲーションの制度化について努力すべきである。

ミティゲーション(開発、利用の環境影響を回避、最小限化、または代償措置を講ずることを基本とする考え方)については、それが開発の免罪符として用いられることへの危惧や、効果測定の方法が確立していないこと等さまざまな問題点も指摘されている。しかし、ミティゲーションは、環境のこれ以上の悪化に対する歯止めの役割を果たす手法の一つとして、また、環境修復や望ましい環境の創造のためにも有用なものとして評価できるものであり、さらには、海洋開発の社会的コストを明らかにし、事業費の中に内部化する合理的な手法としても評価できると考えられるため、今後その問題点の解消に向けて一層の研究を積み重ねるとともに、その制度化に努力すべきである。

 

 

 

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