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2. 小さな漁港が抱える悩み

 

栗山川漁港

 

現在、日本には約3,000もの漁港がありますが、日本の海岸線延長34,000kmとして、これは単純に勘定すると海岸線約10kmに1つの漁港がある計算になります。 こうした漁港は戦後、主に漁労活の効率化のために建設されましたが、漁獲高が伸びず漁業不振が続く現在となっては、地元自治体の苦しい財政事情もあり、漁港本来の機能を発揮できない現実があります。 ここでは、地方の小さな漁港が抱える多くの問題について見ていきます。

 

【宇多】 栗山川漁港は栗山川という川の河口を掘り込んで造った漁港で、第1種漁港ですから地元漁業のために造られた漁港です。漁船は河口の脇にある船溜まりから出港して、川を100m 程通ってから海に出ていくわけです。こうした砂浜海岸でよく見られるタイプの漁港では、河口の航路に砂が溜まるという特有の問題があります。むしろ砂が溜まるのは自然なことなのですが、漁船が河口を突っ切るときに非常に水深が浅く船の底を擦ってしまうので、水産庁でも非常に困っています。

 

もともとこの漁港がある場所というのは、砂浜の背後に広がる湿地でした。つまりここはラグーン(潟湖)で、誰も使わない入江状の湿地だったんです。そこは満潮になると潮が入ってきて、干潮になると出て行くという具合に、あまり使い道のない場所だったのです。

 

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栗山川漁港全景

保安林の背後にはラグーン(潟湖)が広がっているのがわかる。(2001年9月24日撮影)

 

 

 

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