【宇多】 公園整備で造られた小高い山の上から浜を見下ろすと、あることに気づきます。背後には長く続く松林が見えます。それより前側は砂丘地で、天然の植生と砂浜が広がっています。いま我々の立っている山は松林のラインよりも前側に位置していますから、ここは以前砂丘地だったということがわかると思います。これが何を意味するかというと、次のようなことなのです。
漁港に隣接する地域を人間が利用するために、このように築山をして芝生を植えて公園を造った。確かに芝生なので汚れずにお弁当も食べることができるし、お手洗の心配も無い。これは非常に結構なことです。しかし本来この場所にあった砂丘地というのは、人間から見ると利用価値の無いムダなスペースに見えますが、生態系からして見れば、陸でもないし海でもないファジーな空間という、環境上重要な価値を持った場所になっているはずです。
海岸法という法律では、防護と環境と利用をきちんと考えるように書かれています。本来ならこの周辺地域を開発するというときには、それによって得られるものは何か、失うものは何か、というのをきちんと議論した上で、どうしても仕方ないのであれば開発すればいいわけですが、今までのところはそういうことが無いままに、やり易いところから手をつけてしまって、気がつくと全体が崩れているという面があると思います。
何故この公園が漁港整備事業でできたかというと、栗山川漁港のちょうど入り口のところにコンパスの針を刺し、「ここだと大体1キロ未満かな」とやって、そこを中心に円を画くわけです。その円の中が法律でいう漁港法の適用を受ける漁港区域になるからです。公園やハコモノを造るというのは公共事業としてやりますが、後の利用、例えばお手洗いの水の費用とか、蛍光灯の維持費は地元負担になるので、これは横芝町の会計に載っています。今日草刈り作業をやっていますが、これは公園整備ですから地元負担です。