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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年1月14日12時30分 沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利島北方沖 2 船舶の要目 船種船名
プレジャーボートムツ 全長 6.90メートル 機関の種類 電気点火機関 出力
66キロワット 3 事実の経過 ムツは、一層甲板を有するFRP製プレジャーボートで、A受審人1人が乗り組み、魚釣りの目的で、保管場所から船体を架台に乗せて車で引き、平成11年1月14日10時20分沖縄県国頭郡今帰仁村運天漁港に着き、発航準備を始めた。 ところで、ムツは、船尾部中央にガソリンが入ったポリタンク2個を保管する燃料庫、同右舷側にバッテリ庫、同左舷側に物入庫がそれぞれ設けられ、正船尾外板のキール上方2.0センチメートルのところの燃料庫に長さ2.0センチメートル直径1.5センチメートルのドレンプラグが設けられていた。 燃料庫の左右船尾側隔壁底部にはバッテリ庫及び物入庫に通じるドレンパイプが設けられ、また、バッテリ庫及び物入庫の船首側隔壁底部には甲板下ボイドスペースに通じるドレンパイプが設けられていた。 したがって、ドレンプラグが脱落すると、燃料庫に浸水し、次にバッテリ庫及び物入庫に浸水し、更に甲板下ボイドスペースに浸水する構造であった。 A受審人は、同月3日船体整備を行ってドレンプラグを復旧した際、同プラグを十分に締め付けてなくて緩んでいたが、ムツを架台から降ろす前にそのことに気付かず、同プラグが脱落することはあるまいと思い、同プラグの締付点検を行うことなく、ムツを浮かべて知人2人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.7メートルの喫水をもって、10時30分運天漁港を発し、11時ごろ古宇利礁南方の釣り場に至り、錨泊して魚釣りを行っているうち、船体が沈んだ状態であることに気付いた。 A受審人は、船尾部の燃料庫、バッテリ庫及び物入庫のさぶたを開けて見たところ、ドレンプラグが脱落して各庫に浸水しているのを認め、軍手で塞いで浸水をとめたが、甲板下ボイドスペースにも大量の海水が浸水している状況であった。 12時27分A受審人は、古宇利島灯台から007度(真方位、以下同じ。)3.8海里の地点を発進し、針路を193度に定め、機関を3.0ノットの対地速力にかけ、バケツを使用して燃料庫の海水を排水しながら帰途に就いた。 12時30分少し前ムツは、バッテリが海水に浸かって機関が停止し、12時30分古宇利島灯台から007度3.7海里の地点において、操船不能のまま船首が225度に向いたとき、船尾から海水が打ち込んで大傾斜し、復原力を喪失して転覆した。 当時、天候は晴で風力4の北東風が吹いていた。 転覆の結果、全員海上に投げ出されたが、航行中の船舶に船体とともに救助され、また、船体は損傷なく、船外機を濡損したが、のち修理された。
(原因) 本件転覆は、沖縄県国頭郡今帰仁村運天漁港において、魚釣りの目的で発航する際、船尾外板に設けられたドレンプラグの締付点検が不十分で、錨泊して魚釣り中同プラグが脱落して浸水し、帰航中にバッテリが海水に浸かり機関が停止して操船不能となり、船尾から海水が打ち込んで大傾斜し、復原力を喪失したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、沖縄県国頭郡今帰仁村運天漁港において、魚釣りの目的で発航する場合、船尾外板に設けられたドレンプラグの締付点検を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、ドレンプラグが脱落することはあるまいと思い、同プラグの締付点検を十分に行わなかった職務上の過失により、錨泊して魚釣り中同プラグの脱落により浸水せしめて転覆を招き、機関を濡損させるに至った。 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。 |