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2000年(平成12年)

平成12年長審第4号
    件名
プレジャーボートそよかぜ沈没事件

    事件区分
沈没事件
    言渡年月日
平成12年9月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

亀井龍雄、森田秀彦、平野浩三
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:そよかぜ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
沈没、全損

    原因
水路調査不十分、高波の危険性に対する配慮不十分

    主文
本件沈没は、水路調査が不十分であったばかりか、高波の危険性に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月26日14時55分
長崎県五島列島久賀島北西沿岸
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートそよかぜ
登録長 7.25メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット
3 事実の経過
そよかぜは、FRP製モーターボートで、釣りの目的で、A受審人が1人で乗り組み、友人1人を乗せ、船首0.2メートル船尾0.8メートルの喫水をもって、平成10年7月26日10時00分長崎県福江島福江港を発し、同島北東部にある半泊浦沖合の釣り場に向かった。
A受審人は、10時30分釣り場に至って錨泊し、一本釣りを行ったところ、釣果が良くなかったので、福江島北東方に位置する久賀島周辺の釣り場に移動することとしたが、同島周辺には急潮が発生する水域が多数あり、このことは海図にも記載されていたのに、海図に当たるなど水路調査を十分に行わないまま、14時40分釣り場を発進した。

14時45分半A受審人は、糸串鼻灯台から076度(真方位、以下同じ。)1,400メートルの地点で針路を009度に定め、機関を半速力前進にかけて17.0ノットの対地速力で、久賀島北西部の、急潮が発生し易く、特に潮と風の向きが逆のときには高波が発生する玄魚鼻沖合に向かって進行した。
14時53分A受審人は、玄魚鼻沖合に至り、久賀島音無瀬灯標(以下、「音無瀬灯標」という。)から236度1,300メートルの地点に達したとき、前方から右舷方にかけて高波が立っているのを認めたが、それほど危険はあるまいと思い、直ちに左転して沖合に向かうなど高波の危険性に対して十分に配慮することなく、針路を040度に転じて進行した。
14時54分半A受審人は、音無瀬灯標から256度560メートルの地点に達したとき、右転して針路を090度に転じたところ、突然船首が高波に突っ込んで右舷側に大傾斜したので、危険を感じて機関を極微速力前進に落とした直後船尾から高波が打ち込み、そよかぜは水船となり、14時55分音無瀬灯標から250度350メートルの地点において、浮力を失って船尾から沈没した。

当時、天候は晴で風力5の西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で2ノットの西流があり、波高は3メートルであった。
沈没の結果、全損となり、A受審人と同乗者は、救命浮環につかまって漂流中、地元の漁船に救助された。


(原因)
本件沈没は、五島列島久賀島沿岸を航行する際、水路調査が不十分であったばかりか、高波の危険性に対する配慮が不十分で、前方に認めた高波が発生している水域に進入し、高波の打込みを受けて浮力を失ったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、五島列島久賀島沿岸を航行中、前方の水域に高波が発生しているのを認めた場合、直ちに沖合に向かうなど高波の危険性に対して十分に配慮すべき注意義務があった。しかるに、同人は、それほど危険はあるまいと思い、高波の危険性に対して十分に配慮しなかった職務上の過失により、高波発生水域に進入して高波の打込みを受け、浮力を失って沈没を招き、全損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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