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2000年(平成12年)

平成11年那審第48号
    件名
漁船第一長清丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:第一長清丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底に擦過傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年5月20日11時30分
沖縄県石垣島南岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船第一長清丸
総トン数 9.7トン
全長 15.49メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 330キロワット
3 事実の経過
第一長清丸(以下「長清丸」という。)は、まぐろはえ縄漁に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、操業の目的で、船首尾とも1.15メートルの等喫水をもって、平成11年5月15日18時00分沖縄県新川漁港を発し、同県石垣島南東方の漁場に向かい、翌16日00時ごろ目的地に着き漂泊して夜明けを待ち、06時ごろから操業を開始した。
A受審人は、夜間は漂泊して休息をとりながら漁を続けていたものの、同月19日の操業では自船のはえ縄と台湾漁船のはえ縄とが交差していたので揚縄に時間が掛かり、夜間の休息がとれないまま、翌20日07時30分ごろ漁を終え、まぐろ約2トンを獲って帰港することとした。

そして、A受審人は、07時45分北緯24度00分東経124度25分の地点を発し、針路を324度に定め、6.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行し、08時30分他の乗組員を休息させて単独で船橋当直に就いた。
その後、A受審人は、長時間の操業の疲れと睡眠不足から、09時ごろ眠気を催すようになったが、昼間でありあと少しで石垣島に近づくので、まさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、休息中の乗組員を呼び2人当直とするなど居眠り運航防止の措置をとることなく、操舵室右舷側のベッドに腰を掛けて見張りを続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
長清丸は、A受審人が居眠りに陥り、折からの北東風により2度左方に圧流され、石垣島南岸に拡延するさんご礁帯に向首したまま続航し、11時30分石垣港登野城第2防波堤灯台から181度2.1海里のさんご礁に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。

当時、天候は曇で風力3の北東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船底に擦過傷を生じ、引船により引き降ろされ、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、石垣島南東方沖合から帰港中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同島南岸のさんご礁帯に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、単独の船橋当直に就き、石垣島南東方沖合から帰港中、長時間の操業の疲れと睡眠不足から眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、休息中の乗組員を呼び2人当直とするなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、昼間でありもうすぐ島も見えてくるのでまさか居眠りに陥ることはあるまいと思い、休息中の乗組員を呼び2人当直とするなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠り運航となってさんご礁に乗り揚げ、船底に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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