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2000年(平成12年)

平成11年那審第30号
    件名
漁船福壽丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年3月9日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:福壽丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船体は大破、のち廃船

    原因
守錨当直を配置せず

    主文
本件乗揚は、守錨当直を配置しなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年1月24日02時40分
鹿児島県横当島北岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船福壽丸
総トン数 19.75トン
登録長 14.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190
3 事実の経過
福壽丸は、FRP製漁船で、A受審人ほか3人が乗り組み、深海はえ縄漁の目的で、船首1.0メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成11年1月18日08時00分鹿児島県名瀬港を発し、13時ごろ同県横当島付近の漁場に至って操業を開始し、18時ごろ横当島南岸沖で錨泊した。
A受審人は、翌19日から3日間荒天のため錨泊を続け、22日は天候が回復したので操業して16時00分漁場で錨泊した。翌23日は05時30分操業を再開し、16時00分操業をやめ、南風が強かったことから横当島北岸沖で錨泊することとし、漁場を発進した。
18時00分A受審人は、横当島494.8メートル頂から265度(真方位、以下同じ。)1,150メートルの地点において、重量約90キログラムの五爪錨に直径12ミリメートル長さ7メートルのワイヤロープを取り付け、これにシャックルを介して直径18ミリメートルのナイロンロープを連結して投錨し、同ロープを100メートル延出して錨泊した。錨泊地点付近は、水深45メートル底質が岩で海底の地形が激しく起伏し、同地点から船首方の横当島北岸まで150メートルであった。

A受審人は、20時ごろラジオ放送により、南西の風が強く吹き、のち風向が南寄りから北寄りに変わるとの気象情報を聞き、折から南風が強いので様子を見ていたところ、23時00分風が弱まったので操舵室で休息した。
A受審人は、錨泊地点付近の底質や海底の地形の状態を熟知しており、船体の振れ回りによって錨索が切断するおそれのあることも知っていたが、翌24日00時30分目覚めて周囲の状況を点検したところ、南風が弱く、風向が北寄りに変わるのは昼ごろだろうと思い、守錨当直を配置することなく、再び操舵室で休息した。
福壽丸は、北寄りに変わった強風によって船体が振れ回り、いつしかナイロンロープがワイヤロープとの連結部から約18メートルのところで切断し、船尾方の陸岸に向けて圧流され、02時40分横当島494.8メートル頂から255度1,100メートルの地点において、045度に向いて乗り揚げた。

当時、天候は曇で風力5の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船体は大破し、のち廃船となった。


(原因)
本件乗揚は、夜間、鹿児島県横当島北岸沖において、底質が岩で海底の地形が激しく起伏している錨地に荒天を避けて錨泊中、気象情報によって風向が南寄りから北寄りに変わることを知った際、守錨当直を配置せず、風向が変わって船体が振れ回ったことにより、錨索が切断し、風下の陸岸に圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、鹿児島県横当島北岸沖において、底質が岩で海底の地形が激しく起伏している錨地に荒天を避けて錨泊中、気象情報によって風向が南寄りから北寄りに変わることを知った場合、船体の振れ回りによって錨索が切断するおそれのあることを知っていたのであるから、守錨当直を配置すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、南風が弱く、風向が北寄りに変わるのは昼ごろだろうと思い、守錨当直を配置しなかった職務上の過失により、風向の変化と船体の振れ回りによって錨索が切断したことに気付かず、風下の陸岸への乗揚を招き、船体を大破させ、のち廃船に至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。


よって主文のとおり裁決する。






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