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2000年(平成12年)

平成11年門審第65号
    件名
漁船長浜丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年3月7日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

阿部能正
    理事官
新川政明

    受審人
A 職名:長浜丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
ソナー及びシューピースを損壊、船首船底に凹傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年8月25日23時30分
山口県櫃島北西岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船長浜丸
総トン数 11.24トン
全長 19.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 404キロワット
3 事実の経過
長浜丸は、刺網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾2.4メートルの喫水をもって、平成10年8月25日19時30分山口県大島漁港を発し、同県相島北方1.5海里付近の漁場に向かった。
A受審人は、20時00分萩相島灯台から005度(真方位、以下同じ。)1.5海里の地点に至って操業したのち、21時30分同漁場を発し、同時40分同灯台から052度2.8海里の地点に移動して操業を行い、23時00分再び同地点を発し、同時15分同県櫃島の北方0.7海里ばかりの地点に移動して、魚群探知器やソナーを駆使して魚群の探索を行った。

A受審人は、魚群が見当たらず、漁場を櫃島の西方0.7海里ばかりの地点に移動することとしたものの、前日以来4時間程の睡眠を取っただけで、連続した操業と漁場移動の繰り返しによる疲れから、眠気を感じたが、移動時間も僅かだからなんとか我慢できるものと思い、休息している甲板員を昇橋させて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとることなく、23時23分櫃島三角点(90メートル)(以下「櫃島三角点」という。)から358度1.2海里の地点で、針路を214度に定め、機関を半速力前進にかけ、8.5ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、眠気を堪えながら操舵室中央部で操舵輪により操舵に当たっていたが、やがて居眠りに陥り、針路が保たれなくなったことから、船首が徐々に左偏し、櫃島北西岸に向かう態勢となったけれども、これに気付くことができないまま続航中、長浜丸は、23時30分櫃島三角点から324度800メートルの地点において、船首を160度に向けて、原速力のまま乗り揚げた。

当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果、ソナー及びシューピースを損壊し、船首船底に凹傷を生じたが、来援した僚船に引き下ろされ、自力で発航地に帰航し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、山口県櫃島北方沖合を漁場移動のため南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、針路が保持されないまま船首が徐々に偏向して櫃島北西岸に向け進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、山口県櫃島北方沖合の漁場において、魚群の探索中、眠気を感じた場合、そのまま単独で船橋当直を続けて漁場を移動すれば居眠りに陥り、居眠り運航となるおそれがあったから、休息している甲板員を昇橋させて2人当直とするなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、移動時間も僅かだからなんとか我慢できるものと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、漁場を発進して櫃島北方沖合を移動中に居眠りに陥り、針路が保持されないまま船首が徐々に偏向して櫃島北西岸に向け進行して乗揚を招き、ソナー及びシューピースを損壊し、船首船底に凹傷を生じさせるに至った。






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