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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成10年11月27日04時53分 山口県越ケ浜半島南西方沖合 2 船舶の要目 船種船名
漁船晶友丸 総トン数 45.72トン 全長 22.00メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
242キロワット 3 事実の経過 晶友丸は、船体の中央部に操舵室を設け、延縄漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、ふぐ漁の目的で、船首尾0.9メートルの等喫水をもって、平成10年11月27日04時40分山口県萩港北部の越ケ浜半島南岸に位置する萩(越ケ浜)漁港を発し、島根県沖合の漁場に向かった。 A受審人は、越ケ浜半島南西岸から沖合約700メートルまで礁脈が拡延し、その中の同半島寄りの水路に単閃緑光毎4秒に1閃光の灯火を有する2基の灯標が地元漁業協同組合により設置されていることと、同水路の水深が自船の通航には適さないこととを知っていたので、平素から同礁脈の南西端に設置された観音喰合瀬西灯浮標のモールス符号緑光毎8秒にAの灯火を近距離に替わして同礁脈を迂回することとしており、離岸したのち、手動で操舵にあたって機関を半速力前進にかけ、漁港の防波堤出入口を通過後、同灯浮標の南方に向かう予定で右転を開始した。 04時46分半A受審人は、萩港灯台から282度(真方位、以下同じ。)570メートルの地点で、舵を中央に戻し、機関をほぼ全速力前進にかけ、7.5ノットの対地速力に増速して進行するうち、同時47分半同灯台から277度810メートルの地点に至り、船首が265度に向いているとき、右舷船首40度1,120メートルに前示灯標の緑光を視認した。 しかし、A受審人は、一見しただけでこれを観音喰合瀬西灯浮標の灯火と思い、視認した緑光がどの標識の灯火であるか判断できるよう、作動中のレーダーを監視するなどして船位を十分に確認することなく、灯火を間違えていることに気付かず、針路を灯標の緑光を正船首わずか右に見る300度に定め、自動操舵として続航した。 定針後、A受審人は、礁脈内に向首したことに思い至らず、操舵室内の右舷側で無線電話のマイクを持ち、僚船と操業の打合せを始め、依然として船位を確認することなく進行中、04時53分萩港灯台から291度2,040メートルの地点において、晶友丸は、原針路、原速力のまま、浅瀬に乗り揚げた。 当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。 その結果、右舷側船底外板及び船尾部キールに擦過傷を生じたが、僚船の支援を得て離礁し、のち修理された。
(原因) 本件乗揚は、夜間、萩港において、港外に拡延する礁脈の南方に向かう予定で針路を定める際、船位の確認が不十分で、同礁脈内に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、萩港において、港外に拡延する礁脈の南西端を示す灯浮標の南方に向かう予定で進行中、右舷前方に緑光を視認した場合、同灯浮標以外に礁脈内の水路に設置された灯標も緑色の灯火を有することを知っていたのだから、視認した緑光がどの標識の灯火であるか判断できるよう、作動中のレーダーを監視するなどして船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかし、同人は、一見しただけでこれを礁脈の南西端を示す灯浮標の灯火と思い、作動中のレーダーを監視するなどして船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、灯火を間違えていることに気付かず、礁脈内に向首進行して浅瀬への乗揚を招き、船底外板に擦過傷を生じさせるに至った。 |