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2000年(平成12年)

平成11年神審第90号
    件名
漁船八幡丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年3月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

工藤民雄
    理事官
野村昌志

    受審人
A 職名:八幡丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口及び凹損、魚群探知機及びプロペラなどを損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月30日00時10分
兵庫県香住港沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船八幡丸
総トン数 88.23トン
全長 33.58メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 294キロワット
3 事実の経過
八幡丸は、船体中央部に操舵室を設けた鋼製漁船で、A受審人ほか11人が乗り組み、かにかご漁の目的で、船首尾とも2.0メートルの喫水をもって、平成9年9月26日16時30分兵庫県香住港を発し、島根県隠岐諸島北方沖合の漁場に至って操業を繰り返したのち、かに9トンを漁獲して操業を打ち切り、同月29日13時30分漁場を発進し、基地である香住港に向けて帰途についた。
発進後、A受審人は、船橋当直を乗組員8人による単独2時間交替として行い、23時10分余部埼灯台から353度(真方位、以下同じ。)7.8海里の地点で、前直の甲板員から引き継いで単独の船橋当直に就き、引き続き針路を香住港に向く150度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、9.8ノットの対地速力で、レーダーを6海里レンジとして作動させて進行した。

その後、A受審人は、操舵スタンドの後方左舷側に立ち見張りに当たっていたところ、前路に集魚灯を点灯して散在する多数のいか釣り漁船を認め、やがてこれらに近づいたので避けることとし、23時48分香住港城山灯台(以下「城山灯台」という。)から328度4.1海里の地点に達したとき、自動操舵のまま転舵しては元の針路に戻すことを繰り返しながら南下するうち、予定針路線から外れて右偏するようになった。
翌30日00時00分A受審人は、城山灯台から315度2.4海里の地点で、いか釣り漁船をかわし終え、針路を150度に戻したところ、香住港西岸沖の浅礁域に向かうようになったが、慣れた海域でいか釣り漁船をかわし終えて安心し、香住港まで距離があり、もう少し近づいてから船位を確かめればよいと思い、作動中のレーダーを活用するなどして、船位の確認を行うことなく、その後操舵スタンドの左舷側でたばこを吸いながらぼんやりと周りを眺めていて、このことに気付かなかった。

A受審人は、00時05分香住港港界まで1海里ほどに接近したが、依然船位の確認を行わず、香住港の防波堤入口に向けるための転針が行われないまま、同じ針路、速力で続航中、同時10分少し前たばこを吸い終え、前方を見張ったとき、正船首少し右に黒い島影をうっすらと認め、陸岸が近いように感じ、急いで自動操舵のまま左舵をとったが及ばず、00時10分城山灯台から287度1,760メートルの地点において、八幡丸は、145度を向首し、ほぼ原速力のまま岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
乗揚の結果、船底外板に破口及び凹損を生じたほか、魚群探知機及びプロペラなどを損傷したが、僚船により引き降ろされ、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、漁場から香住港に向けて帰航中、同港北西方沖合に至り、前路に散在する漁船群の避航を繰り返したのち針路を復して進行した際、船位の確認が不十分で、同港西岸沖の浅礁域に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、隠岐諸島北方沖合の漁場から香住港に向けて帰航中、同港北西方沖合に至り、前路に散在する多数のいか釣り漁船の避航を繰り返したのち、針路を復して進行する場合、予定針路線から外れて偏位しているおそれがあったから、作動中のレーダーを活用するなどして、船位の確認を行うべき注意義務があった。ところが、同人は、慣れた海域でいか釣り漁船をかわし終えて安心し、香住港まで距離があり、もう少し近づいてから船位を確かめればよいと思い、作動中のレーダーを活用するなどして、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、同港西岸沖の浅礁域に向首していることに気付かないまま進行して乗り揚げ、船底外板に破口及び凹損を生じたほか、魚群探知機及びプロペラなどを損傷するに至った。






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