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2000年(平成12年)

平成11年横審第125号
    件名
漁船第二十三長久丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年3月22日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

長浜義昭
    理事官
河野守

    受審人
A 職名:第二十三長久丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(履歴限定)
    指定海難関係人

    損害
球状船首に破口、船底外板に亀裂、推進器翼に欠損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年5月18日01時10分
熊野灘
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十三長久丸
総トン数 39トン
全長 26.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 661キロワット
3 事実の経過
第二十三長久丸は、網船として中型まき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、船首1.5メートル船尾2.3メートルの喫水をもって、平成11年5月17日16時00分三重県奈屋浦漁港を僚船とともに発し、17時ごろ熊野灘の漁場に至って魚群探索を開始した。
A受審人は、19時ごろ魚群を発見できなかったので漂泊して休息をとったのち、23時ごろ魚群探索を再開し、単独で船橋当直につきソナーを監視していたところ、翌18日00時51分半長島大島灯台から130度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点において、魚群を発見してその追尾を始め、針路を308度に定めて自動操舵とし、6.5ノットの対地速力で進行した。

A受審人は、ソナーで魚群の映像をプロットして佐波留島の方向に移動していることを知り、同島付近では投網できないことから、操業できる海域に魚群が移動するのをねらっていたところ、01時08分長島大島灯台から134度1.2海里の地点に達したとき、ソナーの左舷側にある4分の3海里レンジとしたレーダーにより佐波留島の映像を正船首400メートルに認め、同島の沖合200メートル付近までには魚群の動きが止まるであろうから、そのとき直ちに反転することとして、魚群に400メートル先行する態勢でなおも同島に向けて接近したが、その後、ソナーで魚群を監視することに気を取られ、レーダーで同島との距離を測定するなど船位の確認を行うことなく、続航した。
A受審人は、依然、ソナーで魚群を監視することに熱中していて、01時09分佐波留島まで200メートルに接近したことにも、その後同島に著しく接近していることにも気付かず、魚群に先行する態勢で進行中、01時10分長島大島灯台から135度1.0海里の地点において、佐波留島南岸に原針路、原速力のまま乗り揚げた。

当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
乗揚の結果、球状船首に破口を、船底外板に亀裂を、推進器翼に欠損を、それぞれ生じ、魚倉に浸水したが、自力で離礁して奈屋浦漁港に帰港し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、熊野灘において、魚群探索中、魚群を追って佐波留島に接近する際、船位の確認が不十分で、佐波留島南岸に向かって進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、熊野灘において、魚群探索中、魚群を追って佐波留島に接近する場合、レーダーで同島までの距離を測定するなど船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、ソナーで魚群を監視することに気を取られ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、同島に著しく接近していることに気付くことなく進行して、同島南岸に乗り揚げ、球状船首に破口を、船底外板に亀裂を、推進器翼に欠損を、それぞれ生じさせるに至った。






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