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2000年(平成12年)

平成11年那審第40号
    件名
漁船幸栄丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年2月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:幸栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船体は大破、のち廃船

    原因
守錨当直を配置せず

    主文
本件乗揚は、守錨当直を配置しなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年4月2日22時00分
鹿児島県横当島南岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船幸栄丸
総トン数 4.68トン
登録長 9.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 50
3 事実の経過
幸栄丸は、FRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、深海一本釣り及び底延縄漁を行う目的で、船首0.7メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成11年3月31日04時30分鹿児島県名瀬港を発し、10時ごろ同県横当島付近の漁場に至り、当日と翌4月1日とも昼間操業し、夜間は同島の島陰で錨泊して休息した。
A受審人は、翌々4月2日08時ごろ操業を再開し、15時ごろ北寄りの風が強まったことから、操業を打ち切って漁場を発進し、15時30分横当島494.8メートル頂から235度(真方位、以下同じ。)900メートルの地点において、重量約65キログラムの五爪錨を投入し、直径16ミリメートルのナイロン製ロープを45メートル延出し、船首を北に向けて錨泊した。

錨泊地点は、水深が10メートル、底質が砂混じりの砂利で、右舷方の横当島南岸まで100メートルであった。
A受審人は、錨地付近の底質が砂混じりの砂利であることを知っており、これまで何度も走錨したことがあったものの、北風が弱まっていたことから走錨することはあるまいと思い、守錨当直を配置することなく、20時00分操舵室で休息した。
幸栄丸は、西寄りに変わった強風により、いつしか走錨しはじめ、船尾方の陸岸に向けて圧流され、22時00分横当島494.8メートル頂から228度800メートルの地点において、270度に向いて乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力6の西北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船体は大破し、のち廃船となった。


(原因)
本件乗揚は、夜間、鹿児島県横当島南岸沖において、底質が砂混じりの砂利の錨地に荒天を避けて錨泊する際、守錨当直を配置せず、走錨して風下の陸岸に圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、鹿児島県横当島南岸沖において、底質が砂混じりの砂利の錨地に荒天を避けて錨泊する場合、これまで何度も走錨したことがあったのであるから、守錨当直を配置すべき注意義務があった。ところが、同人は、風が弱まっていたので走錨することはあるまいと思い、守錨当直を配置しなかった職務上の過失により、走錨せしめて風下の陸岸への乗揚を招き、船体を大破させ、のち廃船に至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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