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2000年(平成12年)

平成11年那審第32号
    件名
旅客船第七十八あんえい号乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年2月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:第七十八あんえい号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
プロペラ羽根に曲損

    原因
減速措置不十分

    主文
本件乗揚は、減速措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年12月31日09時25分
沖縄県黒島北方沖合
2 船舶の要目
船種船名 旅客船第七十八あんえい号
総トン数 19トン
登録長 18.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 935キロワット
3 事実の経過
第七十八あんえい号は、軽合金製旅客船で、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客7人を乗せ、船首0.8メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成10年12月31日09時00分沖縄県石垣港を発し、同県黒島の黒島港に向かった。
ところで、黒島港は、黒島北岸の西寄りに位置し、防波堤(北)と防波堤(西)によって囲われ、同島北側海域のさんご礁帯に、黒島水路第4号灯標(以下、灯標の名称については「黒島水路」を省略する。)の南南東方から港内に至る水路(以下「水路」という。)が掘られていた。
水路は、第4号灯標から防波堤入口の中央を結ぶ155度(真方位、以下同じ。)方向で、幅が30メートルと狭いうえ、同灯標から水路入口までは250メートルしかなく、水路の両側には浅礁が多数散在していた。浅礁は、通常、海面の色によって識別できるが、太陽光線が海面に反射して識別できないことがあった。

したがって、第4号灯標から水路入口に向け転針する際、水路を逸脱しないよう航行するには、同灯標の手前で大幅に減速して同灯標南南東方近くに至り、同灯標を正船尾方に見て防波堤入口中央に向首し、防波堤入口中央と旅客船岸壁とを見通して進行する必要があった。
A受審人は、発航時から自ら操舵操船に当たり、機関を全速力前進にかけて28.0ノットの速力で進行し、09時23分半少し前第1号灯標から315度10メートルの地点で、針路を第4号灯標に向首する208度に定めて続航した。
09時24分半少し前A受審人は、第4号灯標から028度170メートルの地点に達したとき、太陽光線が海面に反射して水路両側の浅礁を識別できない状況であったが、大幅に減速することなく、いつものとおり接近すれば浅礁を識別できて無難に航行できるものと思い、水路入口に向け左転を開始し、間もなく158度の針路に転じて進行した。

第七十八あんえい号は、同じ針路及び速力で続航し、09時25分第4号灯標から157度370メートルの地点において、浅礁に乗り揚げ擦過した。
当時、天候は晴で風はなく、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、プロペラ羽根に曲損を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、太陽光線が海面に反射して浅礁を識別できない状況下、石垣港から黒島港に向け航行中、第4号灯標から水路入口に向けて転針する際、減速措置が不十分で、浅礁に向け進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、太陽光線が海面に反射して浅礁を識別できない状況下、石垣港から黒島港に向け航行中、第4号灯標から水路入口に向けて転針する場合、大幅に減速すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、いつものとおり接近すれば浅礁を識別できて無難に航行できるものと思い、大幅に減速しなかった職務上の過失により、浅礁への乗揚を招き、第七十八あんえい号のプロペラ羽根に曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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