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2000年(平成12年)

平成11年門審第109号
    件名
貨物船第十五明隆丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年2月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

西山烝一
    理事官
新川政明

    受審人
A 職名:第十五明隆丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板に凹損

    原因
走錨防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、走錨防止の措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年6月14日04時58分
山口県小野田港港外
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十五明隆丸
総トン数 199.16トン
登録長 52.24メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第十五明隆丸(以下「明隆丸」という。)は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、鉄くず約510トンを積載し、船首2.3メートル船尾3.7メートルの喫水をもって、平成10年6月12日16時20分鹿児島県鹿児島港第3区を発し、山口県小野田港に向かった。
A受審人は、豊後水道を経て、翌13日20時50分小野田港の南方港外に到着し、16日朝まで着岸待ちのため、小野田港防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から197度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点において、水深約7メートルで底質が泥及び貝殻のところに、重量735キログラムの左舷ストックレス錨を投入し、1節の長さ25メートルで7節備えていた錨鎖のうち、いつもどおり2節半を水際まで延出して単錨泊した。

A受審人は、錨泊したあと、テレビの気象情報や気圧の降下状況によって、東シナ海北部にあった低気圧が東進し、九州北岸に向け接近中であることを知ったが、VHF無線電話やナブテックスなどで風警報が発表されていなかったことから、走錨するほど風力が増勢することはないと思い、錨鎖を十分に延出するなどして走錨防止の措置をとることなく、降橋して自室で休息し、23時ごろ就寝した。
その後、明隆丸は、低気圧の接近に伴って増勢した西寄りの強風と波浪によって走錨し、陸岸に向け圧流されたものの、A受審人は、これに気付かないまま自室で睡眠中、14日04時58分防波堤灯台から182.5度1.9海里の地点において、明隆丸は、船首を293度に向けて浅所に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力5の西風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、下関地方気象台から波浪注意報が発表されていた。

A受審人は、衝撃を感じて乗り揚げたことを知り、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船底外板に凹損を生じたが、自力で離礁し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、山口県小野田港港外に錨泊中、低気圧の接近に対する走錨防止の措置が不十分で、強風と波浪によって走錨し、浅所に向かって圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、山口県小野田港港外に錨泊中、低気圧が接近中であることを知った場合、錨鎖を十分に延出するなどして走錨防止の措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、走錨するほど風力が増勢することはないと思い、錨鎖を十分に延出するなどして走錨防止の措置をとらなかった職務上の過失により、明隆丸を走錨させて浅所への乗り揚げを招き、同船の船底外板に凹損を生じさせるに至った。






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