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2000年(平成12年)

平成11年広審第8号
    件名
漁船八幡丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年2月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷奬一、織戸孝治、横須賀勇一
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:八幡丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
推進器軸に曲損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月7日02時00分
島根県境港北東方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船八幡丸
総トン数 9.97トン
登録長 13.58メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 100
3 事実の経過
八幡丸は、船首部に操舵室を有するレーダーを装備しないFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、船団を組んで僚船と共に操業に従事する目的で、船首0.1メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、平成9年9月6日17時30分島根県美保関港を発し、美保関灯台の北方約10海里の漁場に向かった。
A受審人は、21時ごろ漁場に至り、その後、僚船と共に操業を行い、翌7日01時30分美保関灯台から358度(真方位、以下同じ。)9.6海里の地点で操業を終えて帰途に就くことになった。
A受審人は、発航後、美保関灯台を船首目標に定め、これを目安にしながら南下し、01時57分同灯台から348度1.1海里の地点に達したとき、左転して針路を同灯台の北東方約370メートルの洋上に孤立して存在する地ノ御前島のわずか東方に向首する158度に定め、機関を20.0ノットの全速力前進にかけて進行した。

ところで、地ノ御前島は、ほぼ東西に近接して孤立する2つの切り立った島から成り立っており、そのうちの西側の島は高さ61メートル、東側の島はこれよりわずかに低い島で、夜間は、美保関灯台の照射灯に照らしだされていて近づくと、これらの存在が顕著であった。
A受審人は、以前、これらの島の周辺で箱めがねを使用してわかめ、さざえ等の操業を行っていたところから、同島周辺の水深については詳しく、東側の島の東側約10メートル以内には浅所があることを知っていた。
A受審人は、01時59分美保関灯台から008度800メートルの地点に達したとき、東側の島を船首わずか右620メートルに認め、同島の東側の浅所に向かう状況となったが、このままの針路でも浅所は無難に替わると思い、左転するなどして浅所を替わす適切な針路を選定することなく続航中、02時00分八幡丸は、突然、船底に衝撃を受け、美保関灯台から058度450メートルの地点において、同一針路、速力まま乗り揚げた。

当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、八幡丸は推進器軸に曲損を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、操業を終えて、美保関港に向けて帰航するにあたり、地ノ御前島東側海域に接近して南下する際、針路の選定が不適切で、同島東側に存在する浅所に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、操業を終えて、美保関港に向けて帰航するにあたり、地ノ御前島東側海域に接近して南下する場合、同島東側に存在する浅所を替わすことのできるよう、適切な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに同人は、浅所を無難に替わるものと思い、適切な針路を選定しなかった職務上の過失により、同浅所に向首進行して乗揚を招き、八幡丸の推進器軸に曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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