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2000年(平成12年)

平成11年広審第27号
    件名
貨物船第十二戎丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年1月13日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

黒岩貢、杉崎忠志、横須賀勇一
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:第十二戎丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首部船底の凹損、船首から船体中央部に至る船底外板の擦過傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年3月30日02時10分
佐田岬南岸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十二戎丸
総トン数 479トン
登録長 73.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 882キロワット
3 事実の経過
第十二戎丸(以下「戎丸」という。)は、主にばら積み貨物の運搬に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人、B指定海難関係人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首1.6メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成10年3月29日21時50分愛媛県深浦港を発し、山口県宇部港に向かった。
A受審人は、航海当直を自らとB指定海難関係人及び一等航海士の3人による単独4時間交替の3直制とし、毎0−4時をB指定海難関係人に、毎4−8時を一等航海士にそれぞれ担当させ、毎8−0時を自らが行うこととして出港操船に引き続き当直に就き、宿毛湾から豊後水道に出て北上し、翌30日00時05分水ノ子島灯台から042度(真方位、以下同じ。)2.8海里の地点に達したとき、針路を322度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、折りからの1.4ノットの南南東流に抗して9.0ノットの対地速力で進行し、まもなく当直交代のため昇橋したB指定海難関係人と当直を交代した。

その際、A受審人は、当時の船位及び針路に加え、2時間くらいで佐田岬に達すること、レーダー画面上佐田岬南方5ないし6海里に漁船群の映像が映っているので注意すること等を引き継いだものの、同人が航海当直の経験が豊富であったことから大丈夫と思い、眠気を催した際の報告について特に指示を徹底することなく降橋した。
00時17分B指定海難関係人は、水ノ子島灯台から015度3.6海里の地点に至り、レーダーで確認していた佐田岬南方5海里ばかりの漁船群を避けるため針路を328度に転じて続航した。
ところで、B指定海難関係人は、同月28日夕方大阪港出港以来、休息時間中もほとんど睡眠をとらないまま翌朝深浦港に入港し、その後もパチンコ等に耽って短時間の断続的な睡眠しかとらず、出港後30分ほど休息して当直に就いたものの、依然、睡眠不足の状態が続いており、転針から30分経過した00時47分ごろから強い眠気を催したが、立って船橋内を歩きながら当直を続けているのでまさか居眠りすることはあるまいと思い、船長に報告しないでそのまま進行した。

01時45分B指定海難関係人は、佐田岬灯台から148度4.0海里の地点に達し、漁船群が左舷側を替わったところで操舵を手動に切り替え、針路を速吸瀬戸中央に戻そうとしたところ、同瀬戸を南下する大型船2隻を認め、しばらく同針路のまま続航しようと操舵スタンド後方に立ち、左手を同スタンド上部に、右手を舵輪にそれぞれ置いて上半身を同スタンドにもたれかけた姿勢でいたところ、まもなく居眠りに陥り、同時57分同灯台から148度2.1海里の地点に達したが、このころから東向きに変わった潮流の影響で右方に7度ばかり圧流され、9.5ノットの対地速力となって進行中、02時10分戎丸は、佐田岬灯台から086度500メートルの地点において、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、乗揚地点付近には、1.5ノットの東南東流があった。

A受審人は、乗揚の衝撃で昇橋し、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船首部船底の凹損及び船首から船体中央部に至る船底外板の擦過傷を生じたが、自力離礁し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、豊後水道を北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、佐田岬南東岸に向首進行したことによって発生したものである。
運航が適切でなかったのは、船長が無資格の船橋当直者に対し、眠気を催した際、報告するよう指示を徹底しなかったことと、同当直者が眠気を催した際、船長に報告せず、居眠りに陥ったこととによるものである。


(受審人等の所為)
A受審人は、夜間、豊後水道において、無資格者に当直を行わせる場合、眠気を催したら報告するよう指示を徹底すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、経験豊富な乗組員だからそこまで注意することはあるまいと思い、眠気を催したら報告するよう指示を徹底しなかった職務上の過失により、当直者が眠気を催した際、その旨の報告が得られず、居眠り運航の防止措置がとれないまま航行を続け、当直者が居眠りに陥ったことにより乗揚を招き、船首部船底に破口を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人は、夜間、単独の船橋当直に就き、豊後水道を北上中、眠気を催した際、速やかに船長に報告せず、居眠りに陥ったことは本件発生の原因となる。

B指定海難関係人に対しては、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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