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2000年(平成12年)

平成12年那審第8号
    件名
引船平安座琉光乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年9月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
長浜義昭

    受審人
A 職名:平安座琉光船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底に擦過傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年10月7日13時30分
沖縄県渡久地港港外
2 船舶の要目
船種船名 引船平安座琉光
総トン数 195.30トン
全長 32.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット
3 事実の経過
平安座琉光は、船首船橋型の鋼製引船で、A受審人ほか5人が乗り組み、回航の目的で、船首2.6メートル船尾3.8メートルの喫水をもって、平成11年10月7日13時20分沖縄県渡久地港南部の本部港(本港地区)を発し、同県金武中城港に向かった。
A受審人は、瀬底島北方を経て出航することとし、発航操船に引き続き単独で操舵操船に当たり、機関を微速力前進にかけて7.5ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
ところで、A受審人は、1年ばかり前に渡久地港に入航したことがあり、本部港(本港地区)から瀬底島北方を経て出航するには渡久地港第4号灯浮標(以下、灯浮標の名称については「渡久地港」を省略する。)と第5号灯浮標との間を航過して、第1号灯浮標と第2号灯浮標との間に向ければよいことを知っていた。しかし、同人は、備え付けの海図第240号を一瞥(べつ)しただけで、灯浮標の設置状況、針路法などの水路調査を十分に行わなかった。

A受審人は、瀬底大橋に差し掛かったとき、左舷船首方に紅色灯浮標を認め、同灯浮標は第2号灯浮標であったが、第4号灯浮標と誤認し、第4号灯浮標と第5号灯浮標との間に向ける積もりで、13時25分瀬底大橋橋梁灯(C1灯)の真下の地点で、針路を第1号灯浮標と第2号灯浮標との間に向く324度(真方位、以下同じ。)に定めた。
A受審人は、定針時右舷船首方に灯浮標2個を認めており、両灯浮標は第4号灯浮標と第5号灯浮標であったが、自船は第4号灯浮標と第5号灯浮標との間に向いていると思っていたことから、第2号灯浮標を第4号灯浮標と誤認していることに気付かず、第4号灯浮標の南西側に拡延するウリヤと称するさんご礁東端に向かって進行した。
平安座琉光は、同じ針路、速力のまま続航し、13時30分瀬底大橋橋梁灯(C1灯)から324度1,130メートルの地点において、乗り揚げた。

当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首船底に擦過傷を生じたが、自力離礁した。


(原因)
本件乗揚は、沖縄県渡久地港において、本部港(本港地区)から瀬底島北方を経由して出航する際、水路調査が不十分で、灯浮標を誤認し、第4号灯浮標南西側のさんご礁に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県渡久地港において、本部港(本港地区)から瀬底島北方を経て出航する場合、灯浮標の設置状況、針路法などの水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、備え付けの海図を一瞥しただけで、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、灯浮標を誤認していることに気付かず、第4号灯浮標南西側のさんご礁に向首進行して乗揚を招き、船首船底に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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