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2000年(平成12年)

平成12年長審第24号
    件名
貨物船第十二旭豊丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年8月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

森田秀彦
    理事官
尾崎安則

    受審人
A 職名:第十二旭豊丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
推進器翼に曲損及び舵板に損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年2月1日08時35分
福岡県三池港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十二旭豊丸
総トン数 435トン
全長 57.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第十二旭豊丸(以下「旭豊丸」という。)は、航行区域を沿海区域とする船尾船橋型鋼製ケミカルタンカーで、A受審人ほか4人が乗り組み、硝酸800.294トンを積載し、船首3.00メートル船尾4.55メートルの喫水をもって、平成11年1月28日16時00分静岡県田子の浦港を発し、福岡県三池港に向かった。
ところで、三池港には、港奥の内港に向かう航路(以下「内港航路」という。)が北防砂堤と南防砂堤とによってほぼ東北東方向に設けられ、同航路西口付近には北防砂堤西端の三池港北防砂堤灯台(以下「北防砂堤灯台」という。)から175度(真方位、以下同じ。)350メートルのところに三池港第2号灯浮標(以下「第2号灯浮標」という。)が設置されていた。そして同灯浮標と南防砂堤先端部とを結ぶ航路境界線の航路側には幅30メートルから80メートルの浅所が第2号灯浮標から北東方向に同境界線に沿って延出していたが、このことは大縮尺の海図第189号(三池港)を見ればすぐに分かることであった。

A受審人は、これまでにも何度か三池港に入港した経験があり、海図第169号(島原湾)を所持していたが、大縮尺の海図を所持しないまま無難に入出港を繰り返していたことから、同港入港に際してはなんら問題はないものと思い、田子の浦港発航に当たり、大縮尺の海図第189号を入手して三池港の浅所の状況を調査するなど水路調査を十分に行わなかったので、第2号灯浮標北東の航路側に浅所が延出していることを知らないまま発航した。
越えて1月31日20時40分A受審人は、北防砂堤灯台から224度1.5海里の地点において投錨して仮泊し、翌2月1日08時25分内港の専用桟橋に向かって同地点を発進し、南防砂堤先端にほぼ向首する049度に針路を定めたところ、延出する浅所に向首する状況となったが、水路調査を十分に行っていなかったのでこのことに気付かず、機関を半速力前進にかけ、8.4ノットの対地速力として手動操舵によって進行した。

A受審人は、第2号灯浮標を右舷至近に航過したのち、08時34分北防砂堤灯台から178度330メートルの地点で、針路を内港航路西口の中央部に向く034度に転じて、同じ速力で続航中、08時35分旭豊丸は、北防砂堤灯台から164度250メートルの地点において、浅所に原針路、原速力のまま乗り揚げ、乗り切った。
当時、天候は晴で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、推進器翼に曲損及び舵板に損傷を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、三池港に入港する際、水路調査が不十分で、内港航路西口付近に延出する浅所に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、三池港に入港する場合、田子の浦港発航に当たり、大縮尺の海図を入手して三池港の浅所の状況を調査するなど水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、これまでにも何度か三池港に入港した経験があり、大縮尺の海図を所持しないまま無難に入出港を繰り返していたことから、同港入港に際してはなんら問題はないものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、内港航路西口付近に浅所が延出していることを知らないまま、同浅所に向首進行し、これに乗り揚げて乗り切り、推進器翼に曲損及び舵板に損傷をそれぞれ生じさせるに至った。






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