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2000年(平成12年)

平成12年那審第4号
    件名
旅客船あさひ1号乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年8月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
長浜義昭

    受審人
A 職名:あさひ1号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
推進器翼及び舵板に曲損

    原因
見張り不十分

    主文
本件乗揚は、見張りが不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年10月11日10時50分
沖縄県那覇港西方慶伊瀬島
2 船舶の要目
船種船名 旅客船あさひ1号
総トン数 19トン
全長 22.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,029キロワット
3 事実の経過
あさひ1号は、船首船橋型の軽合金製旅客船で、A受審人と一等航海士の2人が乗り組み、旅客8人を乗せ、さんご礁遊覧の目的で、船首0.5メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成11年10月11日10時15分那覇港を発し、同港西方の慶伊瀬島に向かった。
10時36分半A受審人は、神山島灯台から217度(真方位、以下同じ。)1.1海里の地点に達し、針路を330度に定め、機関を15.0ノットの半速力前進に掛け、一等航海士を操縦室で見張りに当たらせ、手動操舵により進行した。
ところで、A受審人は、船首から前方約20メートルの海面が死角となって見えないことと、付近の海域は海水の透明度が良く水面下のさんご礁を容易に識別できることとから、さんご礁域に近づいたとき一等航海士を船首に配置して見張りを行わせることにしていた。

A受審人は、10時40分神山島灯台から260度1.1海里の地点で、針路を284度に転じ、機関を微速力前進と停止を繰り返しながら5.0ノットの速力で続航し、水色の変化や波立ちなどから、さんご礁域に近づいたことを知ったが、もう少し近寄ってからでも大丈夫と思い、一等航海士を船首に配置して見張りを行わせなかったので、一部隆起したさんご礁に向かって進行していることに気付かなかった。
あさひ1号は、同じ針路で続航し、10時50分神山島灯台から268度1.7海里の地点において、さんご礁に乗り揚げ、これを擦過した。
当時、天候は小雨で風力3の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、推進器翼及び舵板に曲損を生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、那覇港西方の慶伊瀬島において、さんご礁遊覧を行う際、見張り不十分で、一部隆起したさんご礁に向かって進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、那覇港西方の慶伊瀬島において、さんご礁遊覧を行う場合、一等航海士を船首に配置し、見張りを十分に行わせるべき注意義務があった。しかるに、同人は、もう少し近寄ってからでも大丈夫と思い、見張りを十分に行わせなかった職務上の過失により、一部隆起したさんご礁に向かっていることに気付かず進行して乗揚を招き、推進器翼及び舵板に曲損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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