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2000年(平成12年)

平成11年神審第108号
    件名
漁船第8喜代丸乗揚事件(簡易)

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年7月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

阿部能正
    理事官
蓮池力

    受審人
A 職名:第8喜代丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首下部外板に破口を伴う凹傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年10月15日02時10分
富山県北東岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船第8喜代丸
総トン数 19.82トン
全長 22.47メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 558キロワット
3 事実の経過
第8喜代丸(以下「喜代丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首1.6メートル船尾2.4メートルの喫水をもって、平成10年10月13日02時30分富山県黒部漁港を発し、能登半島北東端の珠洲岬北方60海里付近の漁場に向かった。
A受審人は、12時00分漁場に到着して休息をとり、日没後操業を開始し、翌14日早朝1,200キログラムの漁獲を得て操業を終え、漂泊したまま仮眠したのち、12時30分北緯38度40分東経136度50分の地点を発進し、帰途についた。
やがてA受審人は、能登半島北東岸に接航し、21時47分長手埼灯台から083度(真方位、以下同じ。)0.4海里の地点において、針路を173度に定め、機関を半速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力で自動操舵により進行し、22時19分能登赤埼灯台から070度5.5海里の地点に達したとき、富山湾が南方に深く入り組んでいることから、富山県北東岸に接近したのち、沿岸に沿って目的地に向かうこととし、針路を167度に転じて続航した。

A受審人は、前路の陸岸までまだかなりの距離があり、また、付近には他船が見当たらなかったうえ、海上が平穏で視界も良い状況の下、転針後まもなく操舵室後部右舷側のいすに座り、背中を無線室の壁に寄り掛からせて見張りに当たっていたところ、22時32分ごろ眠気を感じるようになったが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、操舵室から外へ出て外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとらなかった。
喜代丸は、A受審人がやがて居眠りに陥り、富山県北東岸に向首したまま続航し、翌15日02時10分宮崎鼻灯台から259度4.3海里の海岸にある消波ブロックに、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力4の南南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船首下部外板に破口を伴う凹傷を生じたが、自力離礁して富山県経田漁港に帰航し、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、夜間、石川県長手埼沖合から富山県北東岸に向かって南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同岸に向首する針路のまま進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、夜間、石川県長手埼沖合から富山県北東岸に向かって南下中、眠気を感じた場合、居眠り運航とならないよう、操舵室から外へ出て外気に当たるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、富山県北東岸に向首する針路のまま進行して乗揚を招き、船首下部外板に破口を伴う凹傷を生じさせるに至った。






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