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2000年(平成12年)

平成12年那審第3号
    件名
貨物船第八ヘーブ屋丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年6月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

清重隆彦、金城隆支、花原敏朗
    理事官
長浜義昭

    受審人
A 職名:第八ヘーブ屋丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船首船底に擦過傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月7日05時55分
鹿児島県古仁屋港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八ヘーブ屋丸
総トン数 479トン
登録長 59.65メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第八ヘーブ屋丸(以下「ヘーブ屋丸」という。)は、船尾船橋型の砂利採取運搬船で、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首1.2メートル船尾3.5メートルの喫水をもって、平成9年7月7日02時00分鹿児島県名瀬港を発し、同県大島郡住用村戸玉に向かった。
A受審人は、発航操船後いったん降橋し、05時00分再び昇橋して単独で船橋当直に就き、奄美大島海峡を南下して同県古仁屋港港域内に入り、05時35分奄美瀬戸埼灯台から230度(真方位、以下同じ。)780メートルの地点で針路を125度に定め、引き続き機関を全速力前進にかけ、折からの逆潮に抗し10.0ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。

ところで、A受審人は、定針地点から2.2海里のところで左転し、同海峡に沿って東進する予定であった。
A受審人は、定針後間もなく、ジャイロ・レピータの照明が消えて自動操舵装置の電源が切れていることに気付き、手動操舵に切り替えて点検修理作業を始めたが、転針予定地点に達するまでには同作業を終えることができるものと思い、一等航海士を昇橋させるなどして船位の確認を行わなかったので、転針予定地点に達したことに気付かず、加計呂麻島北東岸に向首したまま、同じ針路及び速力で続航し、05時55分少し前前方に陸影を認め、乗揚の危険を感じて機関を全速力後進とした。
しかし、ヘーブ屋丸は、その効なく、05時55分待網埼灯台から203度450メートルの砂浜に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。

乗揚の結果、船首船底に擦過傷を生じたが、高潮を待って自力離礁した。

(原因)
本件乗揚は、古仁屋港内を航行中、自動操舵装置の点検修理をする際、船位の確認が不十分で、加計呂麻島北東岸に向首進行したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、単独で船橋当直に就き、古仁屋港内を航行中、自動操舵装置の電源が切れていることに気付き、同装置の点検修理作業を行う場合、転針予定地点に達したかどうかが分かるよう、一等航海士を昇橋させるなどして船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、転針予定地点に達するまでには修理を終えることができるものと思い、一等航海士を昇橋させるなどして船位の確認を行わなかった職務上の過失により、転針予定地点に達したことに気付かず、加計呂麻島北東岸に向首進行して乗揚を招き、船首船底に擦過傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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