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2000年(平成12年)

平成11年那審第46号
    件名
交通船ミス・プテロイス乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成12年6月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

金城隆支、清重隆彦、花原敏朗
    理事官
道前洋志

    受審人
A 職名:ミス・プテロイス船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
プロペラ翼先端に欠損及び曲損、プロペラ軸に曲損

    原因
守錨当直を行わなかった

    主文
本件乗揚は、守錨当直を行わなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年7月27日11時30分
沖縄県石垣島大埼北西方
2 船舶の要目
船種船名 交通船ミス・プテロイス
総トン数 17トン
登録長 14.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 500キロワット
3 事実の経過
ミス・プテロイスは、FRP製交通船で、A受審人が1人で乗り組み、インストラクター4人及び客6人を乗せ、客にダイビングを行わせる目的で、船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成11年7月27日09時15分沖縄県石垣港を発し、同時45分石垣島大埼北西方に至ってダイビングを行い、11時00分移動するため発進した。
11時05分A受審人は、石垣御神埼灯台から184度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点に至り、重量約10キログラムの3爪錨2個にそれぞれ直径18ミリメートルのクレモナロープを取り付けて投入し、同ロープを10メートル延出して双錨泊した。錨泊地点付近は、水深5メートル底質が砂で、同地点から北東方のさんご礁の浅所まで260メートルであった。

ところで、A受審人は、錨索を左右両舷のクロスビットからまっすぐに、それぞれ左右両舷のフェアリーダに通すと、錨索がクロスビットとフェアリーダ間に設けられたハンドレールの支柱に接触することから、右舷錨索は左舷クロスビットから右舷フェアリーダに通し、左舷錨索は右舷クロスビットから左舷フェアリーダに通していた。このため双錨泊する際、両舷錨索は、クロスビットとフェアリーダ間で交差して接触し、摩擦によって切断するおそれがあった。
A受審人は、南西の風が強く船体の動揺も大きかったものの、錨索が切断することはないと思い、守錨当直を行うことなく、ダイビングを行っているうち、いつしか両舷錨索が接触した部分で切断したが、このことに気付かないままダイビングを続けた。
ミス・プテロイスは、風下の浅所に向けて圧流され、A受審人がこのことに気付いて乗船したが及ばず、11時30分石垣御神埼灯台から183度1.8海里の地点において、船首を045度に向けて乗り揚げた。

当時、天候は曇で風力5の南西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、プロペラ翼先端に欠損及び曲損を、プロペラ軸に曲損をそれぞれ生じたが、のち修理された。


(原因)
本件乗揚は、石垣島大埼北西方において、客にダイビングを行わせるため錨泊する際、守錨当直を行わず、錨索が切断して風下の浅所に圧流されたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、石垣島大埼北西方において、客にダイビングを行わせるため錨泊する場合、守錨当直を行うべき注意義務があった。しかし、同受審人は、錨索が切断することはないと思い、守錨当直を行わなかった職務上の過失により、錨索が切断したことに気付かないままダイビングを続け、風下の浅所に圧流せしめて乗揚を招き、プロペラ翼先端に欠損及び曲損を、プロペラ軸に曲損をそれぞれ生じさせた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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